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第10話 2つの理由 シャルル視点(1)
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「シャルル。お前の父はわたし、サンリュエル家現当主であるマランなのだよ」
今から8年前、僕が10歳になった頃――。自分の生家だと思っていたデレアス男爵家邸を公爵様が訪れ、僕は真の両親と自分の正体を知った。
「傍に居ることができず、すまなかった。あの頃は、危険な状況だったのだよ」
父の兄弟は狡猾な者が多く、産まれてくる僕を殺そうとする――自分達の息子を次期公爵とし、自らの発言力を高めようとする者が多数居た。そのため父マランと母エーヴは安全な環境が整うまで、僕を死んだことにして、今日まで父だと思っていた人――信頼できる友・デレアス男爵夫妻に託していた。
「僕には、父が2人いたのですね。僕は今日から、マランお父様と一緒に暮らすのですか?」「いや……。愚兄は片付いたものの、愚弟と愚妹はなかなか尻尾を出さんのだ。義兄の処理でこちらの戦力も随分と削られてしまい、情けない話だがな、サンリュエル家と妻を守るだけで精一杯なのだよ……」
内側には次期当主の座などを狙う『者』がまだ2人もいて、外側には筆頭公爵家の衰退を狙う『家』が多数存在する。そのため父は日々苦労をされていて、思うように動けない状態となっていた。
「そこでな……。シャルル。お前に頼みがあるのだよ」
「頼み、ですか? なんなのですか、お父様?」
「お前にはこれから、次期当主となる準備を行ってもらいたい。上級貴族としての知識を蓄えつつ、信頼できる人材を――籍を戻した際にお前の周囲を固める存在・側近たちを、見つけ集めてもらいたいのだよ」
父は有能で、時間さえかければ家内外の問題は解決できる。しかしそういったことを行う余力はなく、けれど――。問題解決直後に――悪しき弟と姉を排除した直後に僕の籍を戻し次期当主に任命しなければ、別の争いが発生してしまう可能性がある。
そして当主に任命されるには、自身が優秀であること、優秀な人材を擁していることが条件。そのため父は忸怩たる思いで、こう仰られていた。
「貴族でも平民でも、身分は一切問わない。正しき心と実力があれば、構わない。シャルル自身の目で見極め、引き入れてもらいたい」
「…………分かりました。その全てに、励みます」
「ありがとう、シャルル。……無様な親で、すまんな……」
「毎月贈り物を贈ってくれていた、父と母の友人。それはお父様とお母様だったのですよね? 僕はいつも想われていて、マランお父様も自慢の父と思っていますよ」
そうして僕は公爵家当主になるべく勉強を始め、父は『何もできない』と仰っていたけれど、無理をしてエインを――自身の側近の息子を派遣してくださった。
そんなエインは非常に優秀な人間であり、真っすぐな人間。そのためすぐに主従であり友人となって、色々な面で支えてもらった。
そしてこれは、不幸中の幸いというべきなのだと思う。
今のシャルルは、男爵家の長男。
そのため下級貴族と見下す者が多く、良い人を見極めやすかった。その結果学院在学中に6人の『仲間』と出会うことができて、僕の計画は順調に進んでいた。
けれど――。
その計画が原因となって……。僕は、大きな後悔をすることとなるのだった。
今から8年前、僕が10歳になった頃――。自分の生家だと思っていたデレアス男爵家邸を公爵様が訪れ、僕は真の両親と自分の正体を知った。
「傍に居ることができず、すまなかった。あの頃は、危険な状況だったのだよ」
父の兄弟は狡猾な者が多く、産まれてくる僕を殺そうとする――自分達の息子を次期公爵とし、自らの発言力を高めようとする者が多数居た。そのため父マランと母エーヴは安全な環境が整うまで、僕を死んだことにして、今日まで父だと思っていた人――信頼できる友・デレアス男爵夫妻に託していた。
「僕には、父が2人いたのですね。僕は今日から、マランお父様と一緒に暮らすのですか?」「いや……。愚兄は片付いたものの、愚弟と愚妹はなかなか尻尾を出さんのだ。義兄の処理でこちらの戦力も随分と削られてしまい、情けない話だがな、サンリュエル家と妻を守るだけで精一杯なのだよ……」
内側には次期当主の座などを狙う『者』がまだ2人もいて、外側には筆頭公爵家の衰退を狙う『家』が多数存在する。そのため父は日々苦労をされていて、思うように動けない状態となっていた。
「そこでな……。シャルル。お前に頼みがあるのだよ」
「頼み、ですか? なんなのですか、お父様?」
「お前にはこれから、次期当主となる準備を行ってもらいたい。上級貴族としての知識を蓄えつつ、信頼できる人材を――籍を戻した際にお前の周囲を固める存在・側近たちを、見つけ集めてもらいたいのだよ」
父は有能で、時間さえかければ家内外の問題は解決できる。しかしそういったことを行う余力はなく、けれど――。問題解決直後に――悪しき弟と姉を排除した直後に僕の籍を戻し次期当主に任命しなければ、別の争いが発生してしまう可能性がある。
そして当主に任命されるには、自身が優秀であること、優秀な人材を擁していることが条件。そのため父は忸怩たる思いで、こう仰られていた。
「貴族でも平民でも、身分は一切問わない。正しき心と実力があれば、構わない。シャルル自身の目で見極め、引き入れてもらいたい」
「…………分かりました。その全てに、励みます」
「ありがとう、シャルル。……無様な親で、すまんな……」
「毎月贈り物を贈ってくれていた、父と母の友人。それはお父様とお母様だったのですよね? 僕はいつも想われていて、マランお父様も自慢の父と思っていますよ」
そうして僕は公爵家当主になるべく勉強を始め、父は『何もできない』と仰っていたけれど、無理をしてエインを――自身の側近の息子を派遣してくださった。
そんなエインは非常に優秀な人間であり、真っすぐな人間。そのためすぐに主従であり友人となって、色々な面で支えてもらった。
そしてこれは、不幸中の幸いというべきなのだと思う。
今のシャルルは、男爵家の長男。
そのため下級貴族と見下す者が多く、良い人を見極めやすかった。その結果学院在学中に6人の『仲間』と出会うことができて、僕の計画は順調に進んでいた。
けれど――。
その計画が原因となって……。僕は、大きな後悔をすることとなるのだった。
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