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第9話 粛清の始まり ヒューゴ視点(2)

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 ――低級貴族が用意した護衛――。
 ――上級貴族が用意した男達――。
 それらがぶつかれば、どうなるのか?
 今夜の俺は、非常に気分が良い。だから特別に、教えてやるとしようじゃないか!

「「「「「とまれ!! とまれっ!!」」」」」
「「「「「ひっ!? ひぃぃっ!?」」」」」

 奴らは常習犯なだけあって、この手の行為は慣れたもの。進路をふさいで馬車を停めると、素早く取り囲んで一気に自分達のペースへと持ち込む。
 そのため主導権をガッシリと握られてしまった護衛達は何もできず、5人の男が勢いよく馬車から飛び出してきたものの、もろ手を挙げてあっという間に降伏。手にしていた剣は全て地面へと落ち、こうしてヤツを守護する存在はなくなった。

「よしよし、全員無力化できたな。じゃあ今夜の主役に、降りてきてもらいましょうかねぇ……!」
「…………。………………分かりました」

 そのためヤツは観念し、両手を後頭部につけた状態で馬車から降りてきた。そして周りを敵に囲まれた状態で、俺と向かい合うことになった。

 ――これが、ぶつかりあった結果――。

 侯爵家と男爵家では、地位も財も圧倒的に違う。だから雇った者の実力も、圧倒的に違っているんだよなぁ。
 まるで子どもと大人。なす術もなく、デレアス家の防御壁は崩壊した。

「やあ、シャルル・デレアス。今の気分はどうだ?」
「……最悪ですね。ノズエルズ様、これは犯罪行為です。治安局が黙ってはいませ――」
「ご心配なく。その治安局は、俺の味方だ。この件は黙認されるんだよ」
「っっ。それが貴族の行いですか!? 貴方には、貴族としての誇りがないの――」
「何を言っているんだ? 力でねじ伏せる。これこそが、貴族の行いなんだよ」

 手にある力を使わない? それは愚かな選択だ。
 あるものは、使わないと勿体ない。ソレは選ばれし者の権利であり、選ばれし者にのみ許された特権なんだよなぁ。

「俺は今も、これから先も、『家』の力を使い続ける。だから――。これからお前は、哀れかつ無様に死ぬことになるんだよ」

 ニンと口角を吊り上げ、顎をしゃくる。そうすれば5人の男がポキポキと指を鳴らし、シャルルを取り囲んだ。
 生意気を言ったこの男は、すぐには殺さない。まずはたっぷりと嬲って、心と体に恐怖を刻み込んでやる。

「アニエスとの恋の邪魔をされて、俺はとにかく腹が立っているんだよ。シャルル・デレアス、容赦はしないぞ?」
「………………そうですか。実は、僕もそうなのですよ」
「ぁ? なんだって?」
「アニエス様を傷付け、あまつさえ関係の修復を強要する。ですので僕もとにかく、腹が立っていましてね。ヒューゴ・ノズエルズ、容赦しないぞ?」

 ぷっ。睨みつけられても、なにも怖くないんだよ!
 この状況でこれは、負け犬の遠吠えと同じ。俺は盛大に噴き出し――

「「「「「ぎゃああ!?」」」」」

 ――は……?
 シャルルを取り囲んでいた男達が、悲鳴を上げて崩れ落ちた……?

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