復縁して欲しい? 嫌です

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
12 / 33

第8話 アニエスの質問と、シャルルの返事。そして アニエス視点(1)

しおりを挟む
「シャルル様。あの日から一度も、ノズエルズ様がいらっしゃられていないんです。あまりにも不自然で…………もしかして、そちらに何かを行ってきてはいませんか?」

 復縁を叶えに押しかけて来た日から、3日後。私は再びシャルル様のお部屋を訪れていて、真っ先にこの疑問を打ち明けた。
 諦めはしない! そう口にしていて、あの人の性格なら、拒絶してもしつこく近づいてくる。なのに音沙汰が一切ないのは、明らかにおかしい。

「私達の関係はまだ公表されていませんし、外ではリングもつけていません。なので感付かれることはないとは思いますが…………どこかで、ミスをしてしまったのかもしれません。あの方が、貴方様にご迷惑をおかけしてはいませんか?」
「いえ、そういったことはありませんよ。アニエス様を振り向かせるべく、新たな作戦でも練っているのではないでしょうか」

 シャルル様はすぐに首を左右に振り、呆れまじりの微苦笑を浮かべられた。

「恐らくはきっぱりと断られたことで、相当な変化球を使わなければ結果を変えられないと感じたのでしょう。今頃ノズエルズ家のお屋敷で、必死になって頭を捻っていると思いますよ」
「…………。そう、なのでしょうか……?」
「アニエス様が仰られたように、あちらに気付かれる要素はどこにもありません。それに毎回、移動の際は僕の関係者が目を光らせています。待ち伏せをして尾行、そちらも有り得ませんしね。その状況下で真実を突き止められたのならば、あの方は人間ではありませんよ」

 くすりと微笑まれて、それにつられて私も同様の表情をこぼします。
 シャルル様は私に何かがあってはいけないからと、移動時には万全の注意を払ってくださっている。なので確かに、あの人が知る方法はありません。

「仰る通りですね。おかしなことを伺ってしまい、申し訳ございません」
「そちらは僕を想ってくださってのお言葉ですので、嬉しいものですよ。この身を案じてくださり、ありがとうございます」

 下げた頭を上げると目の前でも頭が下がって上がり、そうした私達はまた微笑み合う。そうしてこの話題はお仕舞いとなり、楽しい時間の始まりとなりました。

「アニエス様、今日はご報告がありまして。例の予定が確定となり、来週の週末よりやっと、貴方と共に他の景色を楽しむことができるようになります」
「っ。ではシャルル様っ」
「ええ。公表・・は1週間後と決定しておりまして、その際には予定通り、アニエス様にも参加をお願いすることになります。……長らくお待たせしてしまいましたね。あと少しだけ、お待ちください」

 そこでは『とても大事なこと』を知ったり、お茶と焼き菓子を食べながら楽しくお喋りを行ったり。いつもの通りといつもとは違うひと時を過ごし、今回もまた、シャルル様と幸せな時間を過ごしたのでした。

しおりを挟む
感想 140

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

呪われた指輪を王太子殿下から贈られましたけど、妹が盗んでくれたので私は無事でした。

田太 優
恋愛
王太子殿下との望まない婚約はお互いに不幸の始まりだった。 後に関係改善を望んだ王太子から指輪が贈られたけど嫌な気持ちしか抱けなかった。 でもそれは私の勘違いで、嫌な気持ちの正体はまったくの別物だった。 ――指輪は呪われていた。 妹が指輪を盗んでくれたので私は無事だったけど。

結婚式間近に発覚した隠し子の存在。裏切っただけでも問題なのに、何が悪いのか理解できないような人とは結婚できません!

田太 優
恋愛
結婚して幸せになれるはずだったのに婚約者には隠し子がいた。 しかもそのことを何ら悪いとは思っていない様子。 そんな人とは結婚できるはずもなく、婚約破棄するのも当然のこと。

エデルガルトの幸せ

よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。 学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。 彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。 全5話。

男爵令嬢の私の証言で公爵令嬢は全てを失うことになりました。嫌がらせなんてしなければ良かったのに。

田太 優
恋愛
公爵令嬢から嫌がらせのターゲットにされた私。 ただ耐えるだけの日々は、王子から秘密の依頼を受けたことで終わりを迎えた。 私に求められたのは公爵令嬢の嫌がらせを証言すること。 王子から公爵令嬢に告げる婚約破棄に協力することになったのだ。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...