復縁して欲しい? 嫌です

柚木ゆず

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第3話 なぜだ⁉ アニエス視点(1)

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「なぜだ!? あの女――ドロテ・ハーマインとの縁を完全に切り、こうして誠意を見せているのにっ! なっ、何がいけないんだ!?」
「……貴方様は、本気で仰られているのですね……。分かりました。説明をさせていただきます」

 この様子なら、理解するまで引き下がらない。
 私にはこのあと、とても大切なお約束がある。この人に多くの時間を奪われて、そちらに支障をきたしたくはありません。ですので面倒ではありますが、今度は詳説を行いましょう。

「貴方は婚約中に、他の女性と関係を持ちました。あまつさえその事実を責任転嫁し、ノズエルズ家当主ご夫妻と共に『お前が2番になったせい』『お互いに非がある問題』と仰られました。こんなことを平然と口にされる方との復縁など、あり得ないのですよ」

 あの時までは、確かなご縁があった。けれどあの時完全に切れてしまい、実在する糸と同じ。切れたものは絶対に戻りはしない。

「ノズエルズ様、どんなにお金や貴金属を用意しても変わりませんよ。何があろうと、貴方への感情が蘇ることはありません」
「…………そんな……。バカな……!」
「そちらは、当たり前のことですよ。貴方様との時間は、とうに終わっているのです」
「違う! 終わっていない!! あの頃のヒューゴ・ノズエルズと今のヒューゴ・ノズエルズは、違うんだ!! しっかりと覚醒したっ、別人と言っても過言ではない状態なんだ!! そんな俺に触れてくれればっ、きっとそれを理解できる!! 復縁していいとっ、再び婚約していいとっ!! 必ず思うようになるんだよっ!!」

 彼は首から上が飛びそうな程にかぶりを振り、絶叫。そうしながら門に格子に顔をめり込ませ、目を大きく見開いた。

「だからっ、アニエス!! 真なる愛しの人よ!! 1時間っ、30分でもいいんだ!! 俺との時間を作ってくれ!!」
「嫌です。貴方との時間を作るつもりは、微塵もありません」
「頼む!! この通りだっっ!! 騙されたと思って!! だったら10分でもいいから!! 新生したヒューゴ・ノズエルズを見てくれ!!」
「嫌です。……こうしていることさえも、苦痛ですので。今すぐにお引き取りください」

 どんなに叫ばれても、返事の内容は変わりません。私は改めて淡々と、お辞儀を行ったのでした。

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