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エピローグその1 お別れの時

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「……残念です。ゆっくりお喋りする時間はなさそうですね」

 落ち着いてお話したくて、大騒ぎになっている会場から廊下へと出た直後。わたしは、目の前にいるステファニーさんに苦笑いをした。
 たぶん、召喚された原因が解決したからだと思う。足もとに、控え室で見た魔法陣が浮かび上がった。

「……そう、みたいですね……。落ち着いて感謝をお伝えしたかったのですが、叶いそうにありません」
「です、ね。でも、ちょっとだけなら時間があるかもしれません」

 だから、今のうちにお伝えしておきます。

「ステファニーさん。わたしは貴方に救われました。わたしがまた大好きな演技をできるようになったのは、ステファニーさんのおかげです。本当に……本当に、ありがとうございました」
「わたくしも、貴女に救われました。何度もループして、けれど解決する術がなく……。絶望していた時もありました。わたくしを絶望から救ってくださり、本当に……本当にありがとうございました」

 わたし達は順番にお辞儀をして、同時に相手を抱き締めた。
 こういうところも、ステファニーさんとわたしはそっくりで。おもわず笑ってしまった。

「姿や声、過去だけではなく。考えることも同じなんですね」
「そう、ですね。……こんなにも似ているのは、偶然じゃないのかもしれません。わたし達って、特別な縁、繋がりがあるのかもしれませんね」
「ええ、わたくしもそう思っておりました。ですから」

 だから。

「「きっと、いつかまた会えると思います」」
「「なので、続きはその時に」」

 わたし達に、涙はない。
 魔法陣が激しく光って『お別れが来た』と知らせてきても、悲しまない。

「ステファニーさん。また」
「エリスさん。また」

 わたし達にあるのは、笑顔だけ。
 どちらも手を振って――。


 しばらくのお別れをしたのでした。

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