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第1話 気が付くとそこは(1)

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「ここは……。どこ……?」

 気が付くとわたしは、知らない部屋に立っていた。
 自分の部屋の、3~4倍の広さ――20畳はある、品のある照明や家具が並ぶ高級そうな部屋。まるでお話に出てくる貴族が暮らすような部屋の真ん中に、わたしはいた。

「この灯り、電気を使ってない……。それにコンセントがどこにもないから、日本じゃない……?」

 じゃあわたしは、日本じゃないところに移動しちゃった?
 そんなバカな――って思いたいけど、足もとで不思議な魔法陣を見た。おかしなものの影響でこうなっているんだから、そのくらいのことがあってもおかしくはない。

「だったら、やっぱりたぶん、日本じゃない。ここはどこなの……?」
「突然喚(よ)んでしまってごめんなさい。ここは貴方から見て異世界となる『ラークス』にある、レファイル伯爵邸内にある私室。わたくし、長女ステファニーの部屋です」

 周りを見回していたらノックがして、ゆっくり扉が開いて……。

「………………。わたしが、いる……?」

 金色の髪を肩まで伸ばした、ブラウンの瞳の女の子。
 わたしは制服姿で、あちらは綺麗なドレスを着ていて、違うのは服装だけ……。体型も髪の毛の長さも声色までもがおんなじ人が、部屋に入って来た。

「異世界から誰かを召喚する時は、3分間その場所を――この場合はこの部屋に、人がいてはいけないんです。お出迎えなどをできず、こちらについても謝罪をさせていただきます」
「ぁ、えっと……。いま、異世界って、仰られましたよね……? ここはっ、さっきまでいた世界とは違う世界なんですか……?」

 ママの故郷フランスなどの、外国とも違う。創作物でよくある、あの異世界……?

「ええ、そうなんです。召喚は召喚術が自動で適切な人を選んでくれるので、貴方が元居た世界については分からないのですが……。そのお召し物は、わたくし達のソレより遥かに優れている。恐らく文化文明は、少し――いいえ、かなり遅れている世界のはずですわ」
「コンセントや電化製品がどこにもないから、そうなんだろうとは思ってました……。ど、どうしてわたしが、こんな場所にいるんですか……っ!?」

 多分、頭が状況に追いつけてなかったんだと思う。ようやく頭がパニックになり始めて、わたしそっくりな人に走り寄った。

「さっき召喚って言いましたよねっ? 適切な人って言ってましたよねっ? わっ、わたしは何のために召喚されたんですかっ?」
「……。まずは、単刀直入にお伝えさせていただきます」

 わたしにそっくりな、ステファニーさんと名乗った人。その人は申し訳なさそうな、そして――。必死な目をして、こんな言葉を口にしたのでした。

「わたくしは貴方の力をお借りたくて、ここにお喚びしたんです。……お願いします。どうかわたくしを助けてください」

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