姉のものを欲しがる性悪な妹に、墓穴を掘らせてみることにした

柚木ゆず

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第16話 真実 アメリ視点(1)

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「うご、かない? どっ、どうして!?」
「マエル様!? なぜなんですのっ!?」
「おっ、お話が違いますぞ!? なっ、何故そう仰るのですか!?」
「理由? それは、困っているのが貴方がただからだよ」

 間にあるテーブルに両手をついて、目を見開く。そうしていたら――なっ!? わたし達は、鼻で笑われた。

「僕の婚約者――最愛の人ロゼを見下し軽視し、好き放題する妹。それを咎めないどころか夫を味方につけて加勢し、嬉々として苦しめる継母。そんな腐りきった人間を助けるはずがないだろう?」
「な……っ。なぁ……っ」
「マエル様っ、きゅっ、急にっ、どうしたんですかっ!? 昨日はあんな風に仰ってくれていたのにっ! どうしてそんなことを言い出すんですか!?」
「急に、ではないよアメリ。僕の考えは、最初から一度も変わっていない。助けようと思ったことは、一瞬たりともないんだよ」

 鼻で笑っていたマエル様は小さく噴き出し、わたしとお母様を交互に見る……。

「君達は本性を、うまく隠していたつもりだっただろう? でもね、僕はとっくに気付いていたんだよ。婚約をする前から腐りきった性質を知っていて、けれどロゼの意を汲んで知らないフリをしていたのさ」
「「「………………」」」

 あれでも家族だから――。お姉様はそんな理由で、我慢をしていた……。

「だが――君達はあの日、一線を越えてしまった。姉の婚約者を奪おうとし始め、大事な形見を壊そうとした。……だから、ついにロゼが怒ったんだよ」
「「「………………」」」

 そっちも、知らなかった……。
 あの、お姉様が……。いつも黙って従っている、何もできないと思っていたお姉様が……。ひとりで反撃をして、解決しようとしていた……。

「とはいえあの日のロゼには、危うさがあった――いくつかの悲劇を招く危険性があった。そこでリスク0で解決できるように、僕が君達を懲らしめることにしたのさ」
「……そ、そんな……。ずっと、そんな風に思われてたなんて……。最初から、敵だったなんて――……。ぁ。だったら……」

 だったら……。もしかして……。
 もしか、しなくても――

「そう、アメリが今思っている通りだよ。昨日お伝えした作戦は、全て嘘。自分達がせっせと掘った墓穴に落ちてもらうための、ありもしない話なのさ」

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