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第4話 意見が通ったあとは ゴーチェ視点(2)
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「追放の際にジュリエットくんには生活が安定するまで護衛を1名つけ、現在所有している服および300万シテイラを渡そうと思っているのだよ」
何か言いたそうにしているので尋ねてみたら、父上はとんでもないことを言い出した。
安定するまで護衛!? 今所有している――ウチが買ってやった服を持たせる!? あげく300万も持たせるだって!?
「なっ、なにを仰っているのですか!? あんなことをした者にそこまでの施しをするなんて……! 俺の言い分を疑っていらっしゃるのですかっ!?」
「いいや、そうではない。お前が、ああも言ったのだ。最初は信用できなかったが、今では信用しておるよ」
「ではなぜなんです!? なぜ問題児にそこまでしようとするのですか!?」
「……ジュリエットくんは、ジルとアニェスの子。友の子ゆえに、完全に突き放したくはないのだよ」
あの女は、親友とその妻――大切な人達が可愛がってきた存在だった。二人のことを考えると、徹底的に無下にはできない。
と、父上はふざけたことを言いやがった!
「こんな形になってしまったが、最後に彼らへの感謝も込めて、そうしておきたいと思っておるのだ。……とはいえお前は、この件の一番の被害者。ゆえに最終的な判断はゴーチェに委ねようと思う」
「……………………」
「ジュリエットくんに最後の支援をしてもよいか、否か。お前の本心を知りたい。どちらであっても一切文句は言わんから、ありのままの気持ちを教えてくれ」
「……………………分かりました」
俺は直視に直視を返し、神妙に頷く。そうして静かに瞑目し、しばらくの間黙考をして――
「賛成致しかねます。あの者には護衛も衣類も金も必要はありません」
最初から決まっていた返事を行った。
最後の支援? 冗談じゃない! あんな生意気な女にこれ以上恵んでやるものか! むしろ俺はずっと我慢したのに無意味に終わったんだから、逆に精神的な慰謝料を請求したいくらいだ!
「……確かにおじさんとおばさんには、申し訳ないと思っています……。ですがウチは、一度手を差し出しているんです。ジュリエットが幸せに暮らせるチャンスは、ちゃんとあったんですよ! そうでしょう母上。そうだろう、ブレーズ」
「……そう、ね」「……そう、ですね」
「それをフイにしたのは、ジュリエット自身。ですのでそこまでする必要はない、したくないんです。……これが理由です」
あんなヤツに、施しなんていらない。路頭に迷って苦しんで、俺に楯突いたことを後悔しながら死ねばいいんだよ!
「…………そうか、分かった。では一切支援をせず、追放するとしよう」
「父上、ありがとうございます」
はっはっは。よし。今度こそ、ヤツのバッドエンドが確定になった。
だからあとは、その時を待つだけ――じゃない。
((せっかくだ。その間に一つ))
より絶望を与える、楽しい仕込み、を行っておこう。
そう決めた俺は――
何か言いたそうにしているので尋ねてみたら、父上はとんでもないことを言い出した。
安定するまで護衛!? 今所有している――ウチが買ってやった服を持たせる!? あげく300万も持たせるだって!?
「なっ、なにを仰っているのですか!? あんなことをした者にそこまでの施しをするなんて……! 俺の言い分を疑っていらっしゃるのですかっ!?」
「いいや、そうではない。お前が、ああも言ったのだ。最初は信用できなかったが、今では信用しておるよ」
「ではなぜなんです!? なぜ問題児にそこまでしようとするのですか!?」
「……ジュリエットくんは、ジルとアニェスの子。友の子ゆえに、完全に突き放したくはないのだよ」
あの女は、親友とその妻――大切な人達が可愛がってきた存在だった。二人のことを考えると、徹底的に無下にはできない。
と、父上はふざけたことを言いやがった!
「こんな形になってしまったが、最後に彼らへの感謝も込めて、そうしておきたいと思っておるのだ。……とはいえお前は、この件の一番の被害者。ゆえに最終的な判断はゴーチェに委ねようと思う」
「……………………」
「ジュリエットくんに最後の支援をしてもよいか、否か。お前の本心を知りたい。どちらであっても一切文句は言わんから、ありのままの気持ちを教えてくれ」
「……………………分かりました」
俺は直視に直視を返し、神妙に頷く。そうして静かに瞑目し、しばらくの間黙考をして――
「賛成致しかねます。あの者には護衛も衣類も金も必要はありません」
最初から決まっていた返事を行った。
最後の支援? 冗談じゃない! あんな生意気な女にこれ以上恵んでやるものか! むしろ俺はずっと我慢したのに無意味に終わったんだから、逆に精神的な慰謝料を請求したいくらいだ!
「……確かにおじさんとおばさんには、申し訳ないと思っています……。ですがウチは、一度手を差し出しているんです。ジュリエットが幸せに暮らせるチャンスは、ちゃんとあったんですよ! そうでしょう母上。そうだろう、ブレーズ」
「……そう、ね」「……そう、ですね」
「それをフイにしたのは、ジュリエット自身。ですのでそこまでする必要はない、したくないんです。……これが理由です」
あんなヤツに、施しなんていらない。路頭に迷って苦しんで、俺に楯突いたことを後悔しながら死ねばいいんだよ!
「…………そうか、分かった。では一切支援をせず、追放するとしよう」
「父上、ありがとうございます」
はっはっは。よし。今度こそ、ヤツのバッドエンドが確定になった。
だからあとは、その時を待つだけ――じゃない。
((せっかくだ。その間に一つ))
より絶望を与える、楽しい仕込み、を行っておこう。
そう決めた俺は――
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