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第9話 世界を超えた再会 ステラ視点(1)
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「すばるっ。すばるっ! すばる! すばるっ! すばるっ!!」
気がついたらわたしは、昴に抱き付いて胸に顔を埋めていた。
言いたいことは沢山あるのに、他の言葉が出てこない。大切な人の――もう二度と呼べないと思っていた人の名前を、繰り返し呼ぶ。
「すばるっ! すばる! すばるっ。すばるっ!」
「うん……。うん。うん。僕だよ、林檎」
そうしていると優しく抱き締めてくれて、昴の腕に包まれた。
身体はあの頃とは違っているけど、温もりはおんなじ。肌を通して懐かしい温もりが伝わって来て、だからなんだと思う。昔の思い出が、間欠泉のように溢れ出してきた。
『林檎さん、貴方のことが大好きです。よかったら付き合ってくれませんか?』
『はい、喜んで。わたしもずっと、貴方のことが大好きでした』
高校2年生の夏。体育館の裏で告白をされたこと。したこと。
『あ、あのさ。ええっと……。て、手を握っても、いいかな?』
『え!? どっ、どうぞっ! どうぞいくらでも握ってくださいっ!』
わたし達は恋やデートの経験がなくって。お互いにドギマギしながら初めて手を繋いだこと。
いくつもの掛け替えのないものが浮かび上がってきて、それらがますますわたしの語彙を貧困にさせてしまう。
「すばるっ。すばる! すばるっ。すばる! すばるっ!」
いくら呼んでも、もっともっと呼びたくなってしまう。
大好きな人に抱き付きながら感情の赴くままに声を出し、どのくらい経ったのか分からない――きっと、三十分以上は繰り返したんだと思う。そうしていたわたしはとある記憶を思い出し、それによって長時間続いた『すばる』は止まることになった――繰り返している余裕がなくなってしまったのだった。
『……林檎、これが僕の気持ちです。受け取っていただけますか?』
『………………はい。昴、ありがとう。わたしは今、幸せです』
忘れもしない、9月8日。わたしの誕生日。二人で食事をしたあと立ち寄った夜景が綺麗な丘で、昴から婚約リングをもらった。
((…………それは前世の出来事で、昴にはずっとあの頃の記憶がなかった……。マイクス公爵家の嫡男レオナードとして、18年生きてきている……))
わたしは鈴原林檎だと思い出していたし次女だったから、お父様とお母様が意を汲んでくれた。昴以外の人と婚約するなんて考えられなくて、我が儘を言ってそういった話は全部止めてもらっていた。
でも昴はそうじゃなくて、だとしたら。だとしたら…………。
昴には……。
婚約者が、いる……?
気がついたらわたしは、昴に抱き付いて胸に顔を埋めていた。
言いたいことは沢山あるのに、他の言葉が出てこない。大切な人の――もう二度と呼べないと思っていた人の名前を、繰り返し呼ぶ。
「すばるっ! すばる! すばるっ。すばるっ!」
「うん……。うん。うん。僕だよ、林檎」
そうしていると優しく抱き締めてくれて、昴の腕に包まれた。
身体はあの頃とは違っているけど、温もりはおんなじ。肌を通して懐かしい温もりが伝わって来て、だからなんだと思う。昔の思い出が、間欠泉のように溢れ出してきた。
『林檎さん、貴方のことが大好きです。よかったら付き合ってくれませんか?』
『はい、喜んで。わたしもずっと、貴方のことが大好きでした』
高校2年生の夏。体育館の裏で告白をされたこと。したこと。
『あ、あのさ。ええっと……。て、手を握っても、いいかな?』
『え!? どっ、どうぞっ! どうぞいくらでも握ってくださいっ!』
わたし達は恋やデートの経験がなくって。お互いにドギマギしながら初めて手を繋いだこと。
いくつもの掛け替えのないものが浮かび上がってきて、それらがますますわたしの語彙を貧困にさせてしまう。
「すばるっ。すばる! すばるっ。すばる! すばるっ!」
いくら呼んでも、もっともっと呼びたくなってしまう。
大好きな人に抱き付きながら感情の赴くままに声を出し、どのくらい経ったのか分からない――きっと、三十分以上は繰り返したんだと思う。そうしていたわたしはとある記憶を思い出し、それによって長時間続いた『すばる』は止まることになった――繰り返している余裕がなくなってしまったのだった。
『……林檎、これが僕の気持ちです。受け取っていただけますか?』
『………………はい。昴、ありがとう。わたしは今、幸せです』
忘れもしない、9月8日。わたしの誕生日。二人で食事をしたあと立ち寄った夜景が綺麗な丘で、昴から婚約リングをもらった。
((…………それは前世の出来事で、昴にはずっとあの頃の記憶がなかった……。マイクス公爵家の嫡男レオナードとして、18年生きてきている……))
わたしは鈴原林檎だと思い出していたし次女だったから、お父様とお母様が意を汲んでくれた。昴以外の人と婚約するなんて考えられなくて、我が儘を言ってそういった話は全部止めてもらっていた。
でも昴はそうじゃなくて、だとしたら。だとしたら…………。
昴には……。
婚約者が、いる……?
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