16 / 29
第7話 1つ目の聴取 クレア視点(2)
しおりを挟む
「とある出来事が邸内で発生し、そちらに関することでサネテリアス卿が1名を呼び、30分程度持ち場を離れていたらしい。……済まない、2名というのは言い間違いでね。否定をしようとしたら2名と断言されてしまったから、妙だと言っていたんだよ」
言わずもがな、そちらは嘘。マリアス様は誘導するために、故意に違う情報を仰られていた。
「ぇ…………そ、そんなはずはっ、そんなはずはございません! わたくしは確かに2人を目にしていてっ、サネテリアス卿は間違えて――」
「『家』の責任者である当主が、そんな間違いをするはずがない。それに門番殿は毎日行動を細かく記していて、ここにその紙がある。もちろんインクの――記入時間などに関する鑑定を行っていて、その時間帯は確かに1名だったんだよ」
その日その時間には、実際にイレギュラーが起きていた。
そんなタイミングを、わざわざ選んでしまうだなんて。おかげで早々に、『穴』が見つかった。
「クレアもサネテリアス卿も浮気を否定し、門番殿も『来ていない』と仰った。訪れたと主張する者は、事実とは異なる内容を仰った。……皆様。これは、非常に怪しいですね」
『ええ。そう感じております』
『先ほどは、即答、断言されておりました故。そうなってしまいますね』
「ちっ、違いますのっ! わたくしはっ、そうっ、間違えてしまいましたのっ! つい人数を間違ってしまいましたの!!」
マリアス様は治安局員の皆様にお話を振り、皆様の反応がダリアを余計に焦らせる。そのため彼女はうっかり、ますますおかしなことを口にしてしまった。
「人数を間違える? 君はさっき――こうして現場へと移動している最中に、門番殿とやり取りをしたと言った。言葉を交わしたのに間違う、そんなことがあるとは思えないのだけどね?」
「そ、それがっ、起きてしまったのですっ。きっと、あの時のショックが何かしらの影響を及ぼしたのだとっ、思いますっ。浮気されてしまったショックがっ、あり得ないことをっ、記憶の混乱誤認を引き起こしていたのだと思いますっ!」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
大きな焦りが更なる焦りを呼び、それが更なるおかしな発言を呼んで、治安局員の皆様の表情は更に厳しくなった。
なので、そこをしっかりと追及――したくなる気持ちを抑え、まだそうしない。
《クレア様》
《はい、マリアス様》
私達は密かにアイコンタクトを交わし、次のステップへと移ることにしたのでした。
「かなり気にはなるけれど、まあいいか。とりあえず1つ目の確認は終わりにして、2つ目に移ろうか。……ファビオ。次は君に、質問だ」
言わずもがな、そちらは嘘。マリアス様は誘導するために、故意に違う情報を仰られていた。
「ぇ…………そ、そんなはずはっ、そんなはずはございません! わたくしは確かに2人を目にしていてっ、サネテリアス卿は間違えて――」
「『家』の責任者である当主が、そんな間違いをするはずがない。それに門番殿は毎日行動を細かく記していて、ここにその紙がある。もちろんインクの――記入時間などに関する鑑定を行っていて、その時間帯は確かに1名だったんだよ」
その日その時間には、実際にイレギュラーが起きていた。
そんなタイミングを、わざわざ選んでしまうだなんて。おかげで早々に、『穴』が見つかった。
「クレアもサネテリアス卿も浮気を否定し、門番殿も『来ていない』と仰った。訪れたと主張する者は、事実とは異なる内容を仰った。……皆様。これは、非常に怪しいですね」
『ええ。そう感じております』
『先ほどは、即答、断言されておりました故。そうなってしまいますね』
「ちっ、違いますのっ! わたくしはっ、そうっ、間違えてしまいましたのっ! つい人数を間違ってしまいましたの!!」
マリアス様は治安局員の皆様にお話を振り、皆様の反応がダリアを余計に焦らせる。そのため彼女はうっかり、ますますおかしなことを口にしてしまった。
「人数を間違える? 君はさっき――こうして現場へと移動している最中に、門番殿とやり取りをしたと言った。言葉を交わしたのに間違う、そんなことがあるとは思えないのだけどね?」
「そ、それがっ、起きてしまったのですっ。きっと、あの時のショックが何かしらの影響を及ぼしたのだとっ、思いますっ。浮気されてしまったショックがっ、あり得ないことをっ、記憶の混乱誤認を引き起こしていたのだと思いますっ!」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
大きな焦りが更なる焦りを呼び、それが更なるおかしな発言を呼んで、治安局員の皆様の表情は更に厳しくなった。
なので、そこをしっかりと追及――したくなる気持ちを抑え、まだそうしない。
《クレア様》
《はい、マリアス様》
私達は密かにアイコンタクトを交わし、次のステップへと移ることにしたのでした。
「かなり気にはなるけれど、まあいいか。とりあえず1つ目の確認は終わりにして、2つ目に移ろうか。……ファビオ。次は君に、質問だ」
6
お気に入りに追加
1,745
あなたにおすすめの小説
言いたいことは、それだけかしら?
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【彼のもう一つの顔を知るのは、婚約者であるこの私だけ……】
ある日突然、幼馴染でもあり婚約者の彼が訪ねて来た。そして「すまない、婚約解消してもらえないか?」と告げてきた。理由を聞いて納得したものの、どうにも気持ちが収まらない。そこで、私はある行動に出ることにした。私だけが知っている、彼の本性を暴くため――
* 短編です。あっさり終わります
* 他サイトでも投稿中

記憶喪失を理由に婚約破棄を言い渡されるけど、何も問題ありませんでした
天宮有
恋愛
記憶喪失となった私は、伯爵令嬢のルクルらしい。
私は何も思い出せず、前とは違う言動をとっているようだ。
それを理由に婚約者と聞いているエドガーから、婚約破棄を言い渡されてしまう。
エドガーが不快だったから婚約破棄できてよかったと思っていたら、ユアンと名乗る美少年がやってくる。
ユアンは私の友人のようで、エドガーと婚約を破棄したのなら支えたいと提案してくれた。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

婚約破棄にはなりました。が、それはあなたの「ため」じゃなく、あなたの「せい」です。
百谷シカ
恋愛
「君がふしだらなせいだろう。当然、この婚約は破棄させてもらう」
私はシェルヴェン伯爵令嬢ルート・ユングクヴィスト。
この通りリンドホルム伯爵エドガー・メシュヴィツに婚約破棄された。
でも、決して私はふしだらなんかじゃない。
濡れ衣だ。
私はある人物につきまとわれている。
イスフェルト侯爵令息フィリップ・ビルト。
彼は私に一方的な好意を寄せ、この半年、あらゆる接触をしてきた。
「君と出会い、恋に落ちた。これは運命だ! 君もそう思うよね?」
「おやめください。私には婚約者がいます……!」
「関係ない! その男じゃなく、僕こそが君の愛すべき人だよ!」
愛していると、彼は言う。
これは運命なんだと、彼は言う。
そして運命は、私の未来を破壊した。
「さあ! 今こそ結婚しよう!!」
「いや……っ!!」
誰も助けてくれない。
父と兄はフィリップ卿から逃れるため、私を修道院に入れると決めた。
そんなある日。
思いがけない求婚が舞い込んでくる。
「便宜上の結婚だ。私の妻となれば、奴も手出しできないだろう」
ランデル公爵ゴトフリート閣下。
彼は愛情も跡継ぎも求めず、ただ人助けのために私を妻にした。
これは形だけの結婚に、ゆっくりと愛が育まれていく物語。

【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。
ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。
程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが…
思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。
喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___
※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)
異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》

【完結】いつも私をバカにしてくる彼女が恋をしたようです。〜お相手は私の旦那様のようですが間違いはございませんでしょうか?〜
珊瑚
恋愛
「ねぇセシル。私、好きな人が出来たの。」
「……え?」
幼い頃から何かにつけてセシリアを馬鹿にしていたモニカ。そんな彼女が一目惚れをしたようだ。
うっとりと相手について語るモニカ。
でもちょっと待って、それって私の旦那様じゃない……?
ざまぁというか、微ざまぁくらいかもしれないです

婚約破棄を謝っても、許す気はありません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私カルラは、ザノーク王子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
ザノークの親友ルドノが、成績が上の私を憎み仕組んだようだ。
私が不正をしたという嘘を信じて婚約を破棄した後、ザノークとルドノは私を虐げてくる。
それを耐えながら準備した私の反撃を受けて、ザノークは今までのことを謝ろうとしていた。
ヒロインは辞退したいと思います。
三谷朱花
恋愛
リヴィアはソニエール男爵の庶子だった。15歳からファルギエール学園に入学し、第二王子のマクシム様との交流が始まり、そして、マクシム様の婚約者であるアンリエット様からいじめを受けるようになった……。
「あれ?アンリエット様の言ってることってまともじゃない?あれ?……どうして私、『ファルギエール学園の恋と魔法の花』のヒロインに転生してるんだっけ?」
前世の記憶を取り戻したリヴィアが、脱ヒロインを目指して四苦八苦する物語。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる