私が幼馴染の婚約者と浮気をしていた? そんな事実はないのですが?

柚木ゆず

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第7話 1つ目の聴取 クレア視点(2)

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「とある出来事が邸内で発生し、そちらに関することでサネテリアス卿が1名を呼び、30分程度持ち場を離れていたらしい。……済まない、2名というのは言い間違いでね。否定をしようとしたら2名と断言されてしまったから、妙だと言っていたんだよ」

 言わずもがな、そちらは嘘。マリアス様は誘導するために、故意に違う情報を仰られていた。

「ぇ…………そ、そんなはずはっ、そんなはずはございません! わたくしは確かに2人を目にしていてっ、サネテリアス卿パブロおじ様は間違えて――」
「『家』の責任者である当主が、そんな間違いをするはずがない。それに門番殿は毎日行動を細かく記していて、ここにその紙がある。もちろんインクの――記入時間などに関する鑑定を行っていて、その時間帯は確かに1名だったんだよ」

 その日その時間には、実際にイレギュラーが起きていた。
 そんなタイミングを、わざわざ選んでしまうだなんて。おかげで早々に、『穴』が見つかった。

「クレアもサネテリアス卿も浮気を否定し、門番殿も『来ていない』と仰った。訪れたと主張する者は、事実とは異なる内容を仰った。……皆様。これは、非常に怪しいですね」

『ええ。そう感じております』
『先ほどは、即答、断言されておりました故。そうなってしまいますね』

「ちっ、違いますのっ! わたくしはっ、そうっ、間違えてしまいましたのっ! つい人数を間違ってしまいましたの!!」

 マリアス様は治安局員の皆様にお話を振り、皆様の反応がダリアを余計に焦らせる。そのため彼女はうっかり、ますますおかしなことを口にしてしまった。

「人数を間違える? 君はさっき――こうして現場へと移動している最中に、門番殿とやり取りをしたと言った。言葉を交わしたのに間違う、そんなことがあるとは思えないのだけどね?」
「そ、それがっ、起きてしまったのですっ。きっと、あの時のショックが何かしらの影響を及ぼしたのだとっ、思いますっ。浮気されてしまったショックがっ、あり得ないことをっ、記憶の混乱誤認を引き起こしていたのだと思いますっ!」

「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」

 大きな焦りが更なる焦りを呼び、それが更なるおかしな発言を呼んで、治安局員の皆様の表情は更に厳しくなった。
 なので、そこをしっかりと追及――したくなる気持ちを抑え、まだそうしない。

《クレア様》
《はい、マリアス様》

 私達は密かにアイコンタクトを交わし、次のステップへと移ることにしたのでした。

「かなり気にはなるけれど、まあいいか。とりあえず1つ目の確認は終わりにして、2つ目に移ろうか。……ファビオ。次は君に、質問だ」

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