私が幼馴染の婚約者と浮気をしていた? そんな事実はないのですが?

柚木ゆず

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第7話 1つ目の聴取 クレア視点(1)

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「ダリア。君は昨日の午前中……午前11時半ごろ、だったね。ここから中を――2人の姿を、見たんだね?」

 ついに聴取が始まり、私達が初めに訪れたのは門の外。ダリアが私とファビオ様の手繋ぎやキスを目撃したという地点で、マリアス様は敷地内をぐるっと見渡した。

「……はい。とある相談がありアポイントメントなしで訪ねたら、門番の方が慌て始めまして……。おかしいなと思って敷地内を覗いてみたら……。あのようなことが、起きていました……」
「なるほど、ね。そちらに関してなのだけれど、門番担当の2名は『来訪などない』と仰られているんだよ。それについては、どう思う?」
「……浮気の発覚は、お家の大問題ですから……。お二人は嘘を吐かれているのだと思います……。なぜならわたくしは、間違いなく訪れていたのですから……」

 ダリアは悲しげに目を伏せ、小さく息を吐く。それはまるで事実を語っているようで、真実を知らない人が見れば騙されてしまう程のもの。
 彼女にこんな特技が、こんなことを平然とできてしまえる心があっただなんて。改めて、見落としていた自分が情けなくなってしまう。

((だからこうして作戦を実行に移されて、危うく嵌まってしまうところだった。でも))

 マリアス様に助けていただいて、協力していただけてもいる。だからもう、これ以上は思い通りには動けない。

「そう、か。……う~ん。だとしたら、妙だな」
「みょ、妙? な、なにが、でしょうか……?」
「もう一度、確認しておくよ。君が訪れたのは午前11時半頃で、2人の門番が慌てていて不審に思い、覗いてみた。その結果、手を繋ぎキスをする姿を目撃したんだね?」
「はい。間違いございません」
「時間も、確かにそうなんだね?」
「同行していた者の懐中時計で、確認をしております。間違いございません」

 恐らく昨夜ダリア自身も『設定』を細かく練っていて、完璧に頭に入っているのだと思う。だから口は滑らかに動いて明言した、のだけれど――。
 残念だったわね、ダリア。

「そうなのか。……やはり、妙だな」
「え? え……? 何が、妙なのでしょうか?」
「昨夜サネテリアス卿にも事情を伺っていた際に、色々とデータをもらっていてね。その情報によると、その時間門の前には一人しかいなかったんだよ」

 そちらが色々と動いていたように、こちらも色々と動いていた。貴方達がどんな言い訳を行っても、すぐ反応して活かせるようにしているのよ。

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