私が幼馴染の婚約者と浮気をしていた? そんな事実はないのですが?

柚木ゆず

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第4話 理由 クレア視点(3)

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「愛する人の悪評を早く払拭したいし、あんなことを口にしてもらえたからね。ここからは今後に関する話をさせてもらうことにして、まずはこれからの行動を説明するよ」

 緩んでいたマリアス様の口元は元の位置へと戻り、お顔もあっという間に真面目なものに戻った。
 こんな風に動いてくださるから、また胸がとくんと鳴って。感謝を思わずにはいられない。

「このあと君を送り、サネテリアス卿に説明を行ったら――話を合わせていただく約束をしたら、一旦別れて夜が明けるのを待つ。そうして集合したのちダリアとファビオに聴取を行い、アレは捏造なのだから『隙』は必ずあるよね?」
「はい。ございます」

 私達はお父様同士が級友で、十二年来の仲。あのようなことを企むと予想できないほどに、良い関係を築いていた。つまりダリアは、本性を巧みに隠していた。
 でも実際に動き出しているのだから、必ず『隙』は潜んでいる。

「なのでそこを探して指摘を行い、それを利用して『捏造』『大嘘』だという証拠を見つけてゆく。……この手の行動は本来、どちらもそれなりの時間を要してしまうもの――だけど。今回はかなり楽に、しかもスピーディーに進めそうだ」
「……マリアス様は……。そちらを、見据えられていたのですね」


『そこでこれから、真偽をハッキリさせようと思う。公平な目線で、誰が嘘を吐き、誰が真実を口にしているのかを確かめることに決めた』

『君達3人に対して隅々まで聴取を行い、不審な点があればしかるべき機関に要請し、その者の周辺を徹底的に調べ上げる。……誰かを疑い調べるのは、気が引けるけれど……。解決のためだ、許して欲しい。調査に協力してもらいたい』

『なっ、なんでもございませんわ!! ええっ、ええっっ、喜んで!! 真実を証明するには必要不可欠な行為ですものっ! ご配慮痛み入りますわ!!』


 あれは、ここへの布石。あの言葉によって2人は捜査に協力せざるを得なくなって、その結果、情報を格段に集めやすくなった。

「相手が困っている、弱っている際の追撃は、基本だからね。しっかりと攻めさせてもらって――今頃2人は、相当焦っているだろうね」

 明日になればマリアス様が動き出し、優秀な方の入念な聴取が待っている。なのでダリアとファビオ様は今頃、こっそり落ち合って右往左往していると思う。

「残念ながら、彼女達の敗北は確定的。君にも同行してもらって色々と尋ねることになるけど、それもお芝居、勝敗は決まり切っている勝負だからね。クレア様は安心して見守っていて欲しい」
「はい、マリアス様。明日は――いえ。明日からも、よろしくお願い致します」

 穏やかな微笑みに頭を下げ、そのあともいくつか今後に関する情報を伺う。そうしているとお屋敷に着いて、

「なんと、そのようなことが……。痛み入ります……!!」

 お父様と共に改めて感謝をお伝えし、ユリ――ではなくコスモスのカップで紅茶をお出しして、その間はいくつか雑談を行う。
 そうして少しばかりリラックスした時間を過ごしたあとは一旦解散となって、およそ12時間後の午前11時。去られていたマリアス様がいっしゃり、程なくダリアとファビオ様も到着したのだった。

 これから始まるのはイレブンシズではなく、現地での聴取。ダリアとファビオ様の嘘が暴かれる時間が、始まる。

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