結婚式当日。婚約者様は、時間を巻き戻したいと仰りました

柚木ゆず

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第7話 幸せに満ちた日々は、突然姿を変える 俯瞰視点(2)

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「父上……? どうしたのですか……?」

 アナのことを考え、浮かんでいた笑みが消えた理由。それはエントランスに現れた父エドメの顔が、強張っていたからです。

「?? ???」
「…………バジルよ」
「は、はい」
「…………お前は去年、言ったよな? 五か月後には『ザンダテールズ焼き』の価値が跳ね上がると」
「え、ええ。言いました」

 それは、間違いなく口にしたもの。バジルは戸惑いながらも首肯しました。

「…………その際に、画家レナテイラが製造過程を題材とした絵を1月18日に発表する、と言ったよな?」
「え、ええ。言いました。それが、どうかしたのですか?」
「…………『売り』のタイミングを計るため、お前が発表されると言っていた場所にウチのものを派遣していたのだがな……」
「は、はい……?」
「…………そんな絵は、発表されなかったそうだ……」

 その時になっても何も起きず、念のため日が変わるまで待機をさせました。しかしながら結局その後も何も起きず、エドメのもとに発表の報告が届くことはありませんでした。

「な……!? 馬鹿な……!? なにかの間違いです……!!」
「間違いではない。ありえん話だが――。あの者達が揃って嘘を吐いていたとしても、公に発表されていたら騒ぎになっているだろう? それがどこにもないのだ」
「そ、そんな……。俺が間違っている……? ち、違うっ。それこそあり得ない!」

 バジルは実際に発表の噂を耳にしていますし、作品こそ直接見ていないものの、信じられない値が付いた『ザンダテールズ焼き』を実際にその目で見ています。
 そんな事実が不安心をすぐさま打ち消し、激しく頭を掻きむしりました。

「やっぱり確実に発表されています! そうじゃないと高値がつくはずがないしっ、そもそもですよ! 確証もない情報を渡したら商会がっ、ウチがっ、大変なことになるのは明白です! そんな自殺行為はしませんよ!!」
「…………それは、その通りだが……。では、この状況はなんなのだ……!?」
「わ、分かりません。…………で、ですが、確実に発表されているんです。絶対に、発表されるはずなんです。もう少し、様子を見ましょう」
「………………そう、だな。もう少し、様子を見てみよう」

 エドメはバジルから自分が知らない未来の話をいくつか聞いていて、今日までの間にすべて実際に起きていました。そのため静観することになったのですが――

 その翌日。

 バジルとエドメは、揃って絶叫することとなるのでした。


「なんだと!? 画家レナテイラが絵を発表しただと!?」
「ほらっ、言った通りじゃないですか! やっぱり何かしらの理由でズレていただけで――…………。え……?」

「「題材は、靴の工房!?」」


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