11 / 24
第7話 幸せに満ちた日々は、突然姿を変える 俯瞰視点(2)
しおりを挟む
「父上……? どうしたのですか……?」
アナのことを考え、浮かんでいた笑みが消えた理由。それはエントランスに現れた父エドメの顔が、強張っていたからです。
「?? ???」
「…………バジルよ」
「は、はい」
「…………お前は去年、言ったよな? 五か月後には『ザンダテールズ焼き』の価値が跳ね上がると」
「え、ええ。言いました」
それは、間違いなく口にしたもの。バジルは戸惑いながらも首肯しました。
「…………その際に、画家レナテイラが製造過程を題材とした絵を1月18日に発表する、と言ったよな?」
「え、ええ。言いました。それが、どうかしたのですか?」
「…………『売り』のタイミングを計るため、お前が発表されると言っていた場所にウチのものを派遣していたのだがな……」
「は、はい……?」
「…………そんな絵は、発表されなかったそうだ……」
その時になっても何も起きず、念のため日が変わるまで待機をさせました。しかしながら結局その後も何も起きず、エドメのもとに発表の報告が届くことはありませんでした。
「な……!? 馬鹿な……!? なにかの間違いです……!!」
「間違いではない。ありえん話だが――。あの者達が揃って嘘を吐いていたとしても、公に発表されていたら騒ぎになっているだろう? それがどこにもないのだ」
「そ、そんな……。俺が間違っている……? ち、違うっ。それこそあり得ない!」
バジルは実際に発表の噂を耳にしていますし、作品こそ直接見ていないものの、信じられない値が付いた『ザンダテールズ焼き』を実際にその目で見ています。
そんな事実が不安心をすぐさま打ち消し、激しく頭を掻きむしりました。
「やっぱり確実に発表されています! そうじゃないと高値がつくはずがないしっ、そもそもですよ! 確証もない情報を渡したら商会がっ、ウチがっ、大変なことになるのは明白です! そんな自殺行為はしませんよ!!」
「…………それは、その通りだが……。では、この状況はなんなのだ……!?」
「わ、分かりません。…………で、ですが、確実に発表されているんです。絶対に、発表されるはずなんです。もう少し、様子を見ましょう」
「………………そう、だな。もう少し、様子を見てみよう」
エドメはバジルから自分が知らない未来の話をいくつか聞いていて、今日までの間にすべて実際に起きていました。そのため静観することになったのですが――
その翌日。
バジルとエドメは、揃って絶叫することとなるのでした。
「なんだと!? 画家レナテイラが絵を発表しただと!?」
「ほらっ、言った通りじゃないですか! やっぱり何かしらの理由でズレていただけで――…………。え……?」
「「題材は、靴の工房!?」」
アナのことを考え、浮かんでいた笑みが消えた理由。それはエントランスに現れた父エドメの顔が、強張っていたからです。
「?? ???」
「…………バジルよ」
「は、はい」
「…………お前は去年、言ったよな? 五か月後には『ザンダテールズ焼き』の価値が跳ね上がると」
「え、ええ。言いました」
それは、間違いなく口にしたもの。バジルは戸惑いながらも首肯しました。
「…………その際に、画家レナテイラが製造過程を題材とした絵を1月18日に発表する、と言ったよな?」
「え、ええ。言いました。それが、どうかしたのですか?」
「…………『売り』のタイミングを計るため、お前が発表されると言っていた場所にウチのものを派遣していたのだがな……」
「は、はい……?」
「…………そんな絵は、発表されなかったそうだ……」
その時になっても何も起きず、念のため日が変わるまで待機をさせました。しかしながら結局その後も何も起きず、エドメのもとに発表の報告が届くことはありませんでした。
「な……!? 馬鹿な……!? なにかの間違いです……!!」
「間違いではない。ありえん話だが――。あの者達が揃って嘘を吐いていたとしても、公に発表されていたら騒ぎになっているだろう? それがどこにもないのだ」
「そ、そんな……。俺が間違っている……? ち、違うっ。それこそあり得ない!」
バジルは実際に発表の噂を耳にしていますし、作品こそ直接見ていないものの、信じられない値が付いた『ザンダテールズ焼き』を実際にその目で見ています。
そんな事実が不安心をすぐさま打ち消し、激しく頭を掻きむしりました。
「やっぱり確実に発表されています! そうじゃないと高値がつくはずがないしっ、そもそもですよ! 確証もない情報を渡したら商会がっ、ウチがっ、大変なことになるのは明白です! そんな自殺行為はしませんよ!!」
「…………それは、その通りだが……。では、この状況はなんなのだ……!?」
「わ、分かりません。…………で、ですが、確実に発表されているんです。絶対に、発表されるはずなんです。もう少し、様子を見ましょう」
「………………そう、だな。もう少し、様子を見てみよう」
エドメはバジルから自分が知らない未来の話をいくつか聞いていて、今日までの間にすべて実際に起きていました。そのため静観することになったのですが――
その翌日。
バジルとエドメは、揃って絶叫することとなるのでした。
「なんだと!? 画家レナテイラが絵を発表しただと!?」
「ほらっ、言った通りじゃないですか! やっぱり何かしらの理由でズレていただけで――…………。え……?」
「「題材は、靴の工房!?」」
753
あなたにおすすめの小説
【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた
せいめ
恋愛
伯爵令嬢のフローラは、夜会で婚約者のレイモンドと義妹のリリアンが抱き合う姿を見てしまった。
大好きだったレイモンドの裏切りを知りショックを受けるフローラ。
三ヶ月後には結婚式なのに、このままあの方と結婚していいの?
深く傷付いたフローラは散々悩んだ挙句、その場に偶然居合わせた公爵令息や親友の力を借り、ざまぁして逃げ出すことにしたのであった。
ご都合主義です。
誤字脱字、申し訳ありません。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる