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第6話 3週間後~偶然と必然から生まれた、悲劇(その1)~ 俯瞰視点(1)
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「…………参ったな……」
それは、フェローテから帰国した翌日のことでした。バジルは自室内をグルグルと歩き回りながら、渋面を作っていました。
「つい、使い過ぎてしまった……」
アナと結ばれてから一か月が経った記念として、以前隣国でデートをした際にアナが密かに欲しそうにしていたネックレスをサプライズでプレゼントした。
そこまではよかったのですが、興奮してしまいバジルセレクトのイヤリングとネックレスとリングも一緒に贈ってしまった。それによって合計510万ルーラル(1ルーラル=1円)が懐から消え、個人的な貯蓄がほぼなくなってしまったのです。
「せっかく奇跡的に結ばれたんだ。ソレを祝して、今後も毎月1回は何かしらを贈りたい。だがこれでは、良い物は買えないな……」
父エドメから毎月、お小遣いとして――当主や会頭に関する修行のご褒美も含め、70万ルーラルを貰っています。ただしその70万の半分近くは自身の趣味などで消えてしまい、使えるのは実質35万。
仮に自身の出費が0とした場合でも70万ではアナに相応しいレベルの物を買えないため、バジルの顔はますます曇りました。
「……お祝いとして父上に300万ルーラルもらったばかりで、さすがに強請(ねだ)っても追加でくれはしないだろうしな……。ここにあるコレクションを売って金にするか……? いや、そいつは無理だ」
それらは色々なコネクションを駆使し、苦労して手に入れたものばかり。一度手放すと再びの入手は非常に困難なため、迷ったものの却下となりました。
「……調子に乗ってしまった……。あげたものを一旦戻して欲しい、なんて言えないしな……。来月からどうする……? しばらくはプレゼントは止めるか……? いいや、それはあり得ない」
『まぁ……! わたくしに、ですか……!? こ、こんな素敵なものをいただいてしまっても、よ、よろしいのでしょうか……?』
『わたくし、一度も口にしたことはなかったのに……。やっぱりバジル様は、前世からの旦那様。わたくしのことは、なんでもお見通しなのですね』
『本当に、嬉しい……。一生の宝物です……!』
贈り物を渡した時アナは驚き、戸惑い、はにかみ、嬉しそうに涙を零しながらプレゼントを抱き締めました。
その姿が忘れられないバジルはすぐさまかぶりを振り、来月も贈り物ができるようになる方法を考え始めます。
「……小遣いでは足りないし、強請っても意味はない……。友人から借りるのも、無理だしな……。どうすれば、ある程度の金が手に入る……?」
椅子に座って足を組み、天井を仰ぐ。
最も頭が働く体勢で、沈思黙考を行い――
「………………………………………………………………………………これだ!」
――およそ2時間後。部屋に、明るい声が響き渡りました。
「そうだ、そうだ……! どうしてこれを思い付かなかったんだよ! こうすれば問題は解決するじゃないか!」
そんなバジルは自虐混じりで肩を竦め、部屋を飛び出します。
そうして彼は廊下を走り、階段を降りて――
それは、フェローテから帰国した翌日のことでした。バジルは自室内をグルグルと歩き回りながら、渋面を作っていました。
「つい、使い過ぎてしまった……」
アナと結ばれてから一か月が経った記念として、以前隣国でデートをした際にアナが密かに欲しそうにしていたネックレスをサプライズでプレゼントした。
そこまではよかったのですが、興奮してしまいバジルセレクトのイヤリングとネックレスとリングも一緒に贈ってしまった。それによって合計510万ルーラル(1ルーラル=1円)が懐から消え、個人的な貯蓄がほぼなくなってしまったのです。
「せっかく奇跡的に結ばれたんだ。ソレを祝して、今後も毎月1回は何かしらを贈りたい。だがこれでは、良い物は買えないな……」
父エドメから毎月、お小遣いとして――当主や会頭に関する修行のご褒美も含め、70万ルーラルを貰っています。ただしその70万の半分近くは自身の趣味などで消えてしまい、使えるのは実質35万。
仮に自身の出費が0とした場合でも70万ではアナに相応しいレベルの物を買えないため、バジルの顔はますます曇りました。
「……お祝いとして父上に300万ルーラルもらったばかりで、さすがに強請(ねだ)っても追加でくれはしないだろうしな……。ここにあるコレクションを売って金にするか……? いや、そいつは無理だ」
それらは色々なコネクションを駆使し、苦労して手に入れたものばかり。一度手放すと再びの入手は非常に困難なため、迷ったものの却下となりました。
「……調子に乗ってしまった……。あげたものを一旦戻して欲しい、なんて言えないしな……。来月からどうする……? しばらくはプレゼントは止めるか……? いいや、それはあり得ない」
『まぁ……! わたくしに、ですか……!? こ、こんな素敵なものをいただいてしまっても、よ、よろしいのでしょうか……?』
『わたくし、一度も口にしたことはなかったのに……。やっぱりバジル様は、前世からの旦那様。わたくしのことは、なんでもお見通しなのですね』
『本当に、嬉しい……。一生の宝物です……!』
贈り物を渡した時アナは驚き、戸惑い、はにかみ、嬉しそうに涙を零しながらプレゼントを抱き締めました。
その姿が忘れられないバジルはすぐさまかぶりを振り、来月も贈り物ができるようになる方法を考え始めます。
「……小遣いでは足りないし、強請っても意味はない……。友人から借りるのも、無理だしな……。どうすれば、ある程度の金が手に入る……?」
椅子に座って足を組み、天井を仰ぐ。
最も頭が働く体勢で、沈思黙考を行い――
「………………………………………………………………………………これだ!」
――およそ2時間後。部屋に、明るい声が響き渡りました。
「そうだ、そうだ……! どうしてこれを思い付かなかったんだよ! こうすれば問題は解決するじゃないか!」
そんなバジルは自虐混じりで肩を竦め、部屋を飛び出します。
そうして彼は廊下を走り、階段を降りて――
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