私を捨てた元婚約者は、新しい恋人に飽きられてきたらしい

柚木ゆず

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第7話 調子に乗り始める男の、余計な余計なお喋り 俯瞰視点(1)

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「なあ。君達は、『上』の景色を見たことがあるかい?」

 ロティナとデートの約束をした、次の日の夜。シモンは自邸に友人2人を――テリス子爵家のマクシム、オウテール子爵家のモリスを招いて定例行事食事会を行っており、不意ににやりとしました。

「マクシム、モリス。『上』の景色を、君たちは見たことがあるのかい?」
「…………シモン。急に、何を言い出すんだ?」
「上? 上って、何を指しているんです?」

 つい先ほどまで3人は、集まった時の定番の話題――『家』についての愚痴をこぼし合っていました。その直後にこんな台詞が出てきたため、2人はナイフとフォークを持ったままキョトンとしました。

「無論、地位的な意味での『上』さ。いや~、あの景色は絶景だ。同じ世界とは思えないものが、広がっていたよ」
「……ん? まるで、実際に体験したような口ぶりだな」
「ですよね、マクシム。貴方は、僕らと同じ立ち位置のはずですが……。もしかして、ワインで酔っていますか?」
「ふふっ、ふふふっ。酔ってなどいないさ。シラフでの発言さ」

 実際に、酔いが回ってはいません。そのため白ワインが入ったグラスを優雅に回しながら、再度にやりとします。

「諸事情で、詳しくは明かせないのだけれどね――。俺は、『上』の景色を眺めることができるのさ」
「それは、つまりあれか? どこかの有力者との繋がりが出来たってことか? だが……」
「ええ。上位中位の貴族は、我々クラスを避けます。それに…………すれ違いが、あったばかりですしね」

 そんなタイミングで声をかけてくる方も、いないだろう。マクシムとモリスはそう感じ、更に大きく首を傾げました。

「……ますます、分からなくなってきた。シモン、お前は何を言っているんだ?」
「シモン君、ここまで出されたら気になりますよ。もう少し教えてください」
「そうか、そうかっ。気になるんだねっ? マクシムもモリスも。『詳しくは言えない』と前置きをしているのに、欲しがるなぁっ」
「いや、別にそこまで――」「貴方がそう口にするから、気になっただけで――」
「いいよ、分かった! あとちょっとだけ、教えてあげようじゃないかっ!」

 上機嫌なシモンは2人の声を遮り、パチリとウィンク。大きく胸を張り、更なる情報を語り始めたのでした。
 友人達の顔に、不快感が表れ始めているとも知らずに――。

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