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第1話 告白の真意 ロティナ・メイダルン視点
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容姿も家柄も100点満点。学院でも社交界でも、常にトップクラスに君臨し続けるわたし。そんなわたしが唯一、勝てない女がいた。
その女の名前は、シルヴィー・アルゼル。
勉学では、常に学年1位を死守。ダンスを躍らせたら、周囲の視線を独り占め。生徒と教師の人気も非常に高く、下級貴族にもかかわらず2期連続で生徒会書記に任命された。そんな女。
――この国は他国以上に、上級中流貴族と下級貴族の差が大きい――。
そのため伯爵家や侯爵公爵家の人間から声がかかりはしなかったけれど、もし。子爵家ではなく伯爵家以上であったのなら、即大量の求愛の声が飛んでくるような女。
ずるい、女
だって! どんなに勉強してもわたしは2位にしかなれないし、いくら練習してもダンスだってシルヴィー以上に上達しない! 在学時は必死になって人助けをしていたのに、シルヴィー以上の支持信頼を得られなかったんだもの!
努力が才能に勝てる。そんなの出任せ!
わたしは絶対にあの女より勉強も練習もしているのにっ、積極的に助けていたのにっ、コレ。結局、1度も勝てなかった。わたし以下の努力しかしていない女に、負け続けてしまった。
((悔しい……! こんなの、認められない……っ!))
だから、お父様に頼んでアイツの人生を滅茶苦茶にしてやりたかった。卑怯をした女に、罰を与えやりたかった!
だけど……っ。この国ではその手の工作は『厳罰』に定められていて、大きなリスクがあるからできない。相手が卑怯なことをしていても、それ以外の方法で叩き潰すしかない。だから……っ。
((シルヴィー……っ! いつか、必ず勝ってやるんだから……!!))
そうして卒業後もチャンスを伺い続け、ある日――。シルヴィーが婚約したというニュースが、耳に入ってきた。
「なんですって!? わたしは別れたばかりだというのに、婚約……っ!? また、シルヴィーが……っ。ズルい、ズルい……っ。ムカつくムカつく……っっ!」
わたしの方が顔も体も『血』も優れているのに、こんなに差が付くなんて……! おかしいっ! 許せない……っ。
あの女に、勝ちたい……!!
「今から急いで新しい相手を見つけてっ、シルヴィーより先に幸せになってやるわ……! しかもっ。シモン・ハヌエなんかより身分の高い男を――……。シモン・ハヌエ…………」
かつて級友だった、あの男。シルヴィーの婚約者を頭に浮かべていたら、ふと、あることに気が付いた。
「…………あら? シモン・ハヌエって、こんなにも格好よかったかしら?」
サラサラのブラウンの髪の毛。細いフレームの眼鏡が良く似合う、爽やかな印象を受ける顔。乗馬を趣味としていることによる、引き締まった肉体。
それらが突然、魅力的に見えてきた。
「………………シモン・ハヌエ。いいっ、いいわ……っ。この人、理想的だわ……!」
なぜか全く気になっていなかったけど、今はとても気になるっ。今わたしが一番交際したい人だし、おまけにっ。シモンと付き合えば、シルヴィーは捨てられることになるんだものっ。初めて勝利できて、しかも女として勝ててしまうんだものっ。
こんなにも素晴らしいことはないわっ!
「お父様、お母様っ! わたしっ、ハヌエ子爵家のシモンに恋をしましたのっ! 交際、婚約と結婚をさせてくださいっ!」
相手は子爵家の人間だし現在婚約中だから猛反対されたけど、お父様の秘密――浮気の暴露をチラつかせたら、即オーケー。当主に許可をもらったわたしはその足でシモンに近づいて、わたしは何もかもが100点な淑女なんだもの。彼はあっさり心変わりをして、わたしはついに――
勝利、したのだった!
その女の名前は、シルヴィー・アルゼル。
勉学では、常に学年1位を死守。ダンスを躍らせたら、周囲の視線を独り占め。生徒と教師の人気も非常に高く、下級貴族にもかかわらず2期連続で生徒会書記に任命された。そんな女。
――この国は他国以上に、上級中流貴族と下級貴族の差が大きい――。
そのため伯爵家や侯爵公爵家の人間から声がかかりはしなかったけれど、もし。子爵家ではなく伯爵家以上であったのなら、即大量の求愛の声が飛んでくるような女。
ずるい、女
だって! どんなに勉強してもわたしは2位にしかなれないし、いくら練習してもダンスだってシルヴィー以上に上達しない! 在学時は必死になって人助けをしていたのに、シルヴィー以上の支持信頼を得られなかったんだもの!
努力が才能に勝てる。そんなの出任せ!
わたしは絶対にあの女より勉強も練習もしているのにっ、積極的に助けていたのにっ、コレ。結局、1度も勝てなかった。わたし以下の努力しかしていない女に、負け続けてしまった。
((悔しい……! こんなの、認められない……っ!))
だから、お父様に頼んでアイツの人生を滅茶苦茶にしてやりたかった。卑怯をした女に、罰を与えやりたかった!
だけど……っ。この国ではその手の工作は『厳罰』に定められていて、大きなリスクがあるからできない。相手が卑怯なことをしていても、それ以外の方法で叩き潰すしかない。だから……っ。
((シルヴィー……っ! いつか、必ず勝ってやるんだから……!!))
そうして卒業後もチャンスを伺い続け、ある日――。シルヴィーが婚約したというニュースが、耳に入ってきた。
「なんですって!? わたしは別れたばかりだというのに、婚約……っ!? また、シルヴィーが……っ。ズルい、ズルい……っ。ムカつくムカつく……っっ!」
わたしの方が顔も体も『血』も優れているのに、こんなに差が付くなんて……! おかしいっ! 許せない……っ。
あの女に、勝ちたい……!!
「今から急いで新しい相手を見つけてっ、シルヴィーより先に幸せになってやるわ……! しかもっ。シモン・ハヌエなんかより身分の高い男を――……。シモン・ハヌエ…………」
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勝利、したのだった!
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