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第3話 ウィリアム編2日目 日常と、非日常? 俯瞰視点(4)
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「ぃぎやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――え……? と、とうさん……? かあさん……?」
「ああそうだっ! お父さんだっ! ウィリアムっ! ウィリアムっっ! ウィリアムっっ!!」」「ええそうよっ! お母さんよっ! ウィリアムっ! ウィリアムっっ! ウィリアムっっ!!」
大量の絶望と恐怖によって、泡を吹いて失神してしまったウィリアム。気が付くと彼は自室のベッドで仰向けになっており、傍ではクラウとミシャが血相を変えて覗き込んでいたのでした。
「ぇ……? え……? 俺は外で走り回り、叫んでいたはずだ……。どうして、家に、いるんだ……? 俺はいつ、戻ってきたんだ……?」
「ウィリアム、何を言っているんだい。お前はずっと、そこに居た。眠っていたんだよ」
「ず、ずっと……? 眠って、いた……? 俺が……?」
「ええ、そうよ。午前9時を過ぎても合図がなくて、ロイが様子を確認しに行ったの。そしたら貴男は眠っていて、何度呼びかけても揺すっても、起きなかったのよ」
そう。ウィリアムが経験したものは、夢。彼は悪夢の中で動き回り、絶叫を繰り返していたのです。
「医者を呼んで診せても、どこにも異常はなし。普通に眠っているだけ、と言われてな……。お父さんもお母さんも、ここでずっと呼びかけていたんだよ」
「絶対に、戻って来てくれると信じていたわ……っ。おかえりなさい、愛しのウィリアム……!」
「………………そ、そうか、そうだったのか。全部、夢。あれは、現実ではなかったのか……」
クラウとミシャに抱き付かれた彼は、大きく息を吐き、そのまま四肢は脱力。大きな大きな絶望と安堵が混ざり合って力が抜け、おもわず失禁をしてしまいました。
「ウィリアムは、怖い夢を見ていたのね……! もう大丈夫よ」
「お父さん達がついている。安心しなさい……!」
ビショビショに濡れたシーツ達を見て目を細める2人と、まだあの恐怖が抜けきっていないため、小さな子どものように頷くウィリアム。
そんな姿を遠巻きに見ていた、使用人の1人――いつも理不尽を振るわれ内心ではウィリアムをよく思っていなかった使用人は、失笑。その噂はあっという間に邸内に広がり、この日『暴君おもらし王子』の異名が誕生したのでした。
なお、これは余談ですが――。
ウィリアムが目覚めた時間は、午後の9時。起きる予定だった時刻の、12時間後。
その余計に眠ってしまった時間は、ユーゴが昏睡状態となっていた時間と秒数まで全く同じだったのでした。
「ああそうだっ! お父さんだっ! ウィリアムっ! ウィリアムっっ! ウィリアムっっ!!」」「ええそうよっ! お母さんよっ! ウィリアムっ! ウィリアムっっ! ウィリアムっっ!!」
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「ぇ……? え……? 俺は外で走り回り、叫んでいたはずだ……。どうして、家に、いるんだ……? 俺はいつ、戻ってきたんだ……?」
「ウィリアム、何を言っているんだい。お前はずっと、そこに居た。眠っていたんだよ」
「ず、ずっと……? 眠って、いた……? 俺が……?」
「ええ、そうよ。午前9時を過ぎても合図がなくて、ロイが様子を確認しに行ったの。そしたら貴男は眠っていて、何度呼びかけても揺すっても、起きなかったのよ」
そう。ウィリアムが経験したものは、夢。彼は悪夢の中で動き回り、絶叫を繰り返していたのです。
「医者を呼んで診せても、どこにも異常はなし。普通に眠っているだけ、と言われてな……。お父さんもお母さんも、ここでずっと呼びかけていたんだよ」
「絶対に、戻って来てくれると信じていたわ……っ。おかえりなさい、愛しのウィリアム……!」
「………………そ、そうか、そうだったのか。全部、夢。あれは、現実ではなかったのか……」
クラウとミシャに抱き付かれた彼は、大きく息を吐き、そのまま四肢は脱力。大きな大きな絶望と安堵が混ざり合って力が抜け、おもわず失禁をしてしまいました。
「ウィリアムは、怖い夢を見ていたのね……! もう大丈夫よ」
「お父さん達がついている。安心しなさい……!」
ビショビショに濡れたシーツ達を見て目を細める2人と、まだあの恐怖が抜けきっていないため、小さな子どものように頷くウィリアム。
そんな姿を遠巻きに見ていた、使用人の1人――いつも理不尽を振るわれ内心ではウィリアムをよく思っていなかった使用人は、失笑。その噂はあっという間に邸内に広がり、この日『暴君おもらし王子』の異名が誕生したのでした。
なお、これは余談ですが――。
ウィリアムが目覚めた時間は、午後の9時。起きる予定だった時刻の、12時間後。
その余計に眠ってしまった時間は、ユーゴが昏睡状態となっていた時間と秒数まで全く同じだったのでした。
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