婚約破棄をされてお屋敷を追い出されてしまった私を救ってくれた人は、幼い頃に助けた小さなドラゴンでした

柚木ゆず

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第12話 粛清その2 下

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「見た目が悪くなったらポイで、エミ・ナーズと結ばれるために捏造して婚約破棄。最低だよね」
「ホントホント。おまけに一家ぐるみだなんて、どうしようもないわよね」

 ここはとある街。お洒落なオープンカフェでくつろいでいた3人の女性は、今世間で大注目となっている問題で話の花を咲かせていました。

「それに被害者の、アリシア・ロッザさん。あの人の家族も、クズだよね~」
「両親は熱があるのに追い出して、兄も大バカ。友達に、『アイツのせいで王太子妃の兄という肩書がなくなった!』とか言ってたらしいよ」

 悪事千里を走る。全員の悪評はすでに全土に広まっており、ロッザ一家にも連日非難と批判の声が集中しました。

『アリシアに謝罪しろだの、貴族籍を手放せだの……。うるさい奴らだな……っ』
『人の家の事に、一々口を出してきて……っ。鬱陶しいわね』
『お前達、あんな連中は放っておけ。持たぬ者が嫉妬しているだけだ』

 一切反省をしておらず、暴言に暴言を吐き返していた3人。しかしその態度が更に反感を買ってしまい、

『…………。こんなせいかつ、もう、いやだ……』
『……ええ……。もう、たくさんだわ……』
『つかれた……。しずかに、くらしたい……』

 飛んでくる声によってじわじわと、確実に精神が削られていき、やがてはポキンと心が折れてしまう。すっかり精神的に衰弱してしまった3人は貴族籍を手放し、ひっそりと山奥に移り住むことになったのでした。

「あの3人って、人じゃないよね。あのままだったらロッザさんは凍え死んでたから、助かってよかったよ」
「だよね~。それにしても、助けた人って誰なんだろ? その人の話、全然聞かないよね」
「そうそう。事件が発覚した経緯も非公開だし、謎が多いよね~」

 竜人の国ドラクの存在を知得させないよう、アルクベールは箝口令を敷いていました。
 そのため城で起きたあの騒動も、トップシークレット。関係者以外は、一切知らない情報となっているのです。

「ロッザさんって確か、実家にもお城にも居ないんだよね? もしかして、その人と一緒に暮らしてるのかな?」
「命の恩人だもんっ。絶対に好きになってて、同棲してるよっ!」
「どっちにも居ないし、誰も姿を見ないってことは…………多分、そうだと思う。あんなに苦労したんだから、幸せになって欲しいよね」
「「ねーっ」」

 3人は顔を見合わせて同調し、話題は再びフィリップ達に移ります。

 あの事件の裁判って、始まってたんだっけ?
 うん。始まってるはずだよ。
 判決が出るのは、正午だったよね。だからもうすぐ、号外が出ると思うよ。

 その予想通り、彼女達がコーヒーを飲み干した頃に号外が登場。3人は道で配っている男性に声をかけて、


《速報 元国王ダイスル、元王妃ミラン、元王太子フィリップ、元第2王子サラス。
    全員、エミ・ナーズと同じく『強制労働を伴う終身刑』が確定            》


 このような文字が一面を飾る新聞を、受け取ったのでした。
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