上 下
25 / 35

第9話 フィリップ・ライナス視点(5)

しおりを挟む
「王ダイスルと王妃ミラン、第1王子フィリップと第2王子サラス、そしてエミ・ナーズ。この5人は、今すぐ王の間に来い」

 化け物の目的は、俺達だった。
 ど、どういうことだ……!? なぜ俺達を、しかもエミまで求める……!?

「詳細は、来れば分かる。ただちに来い」
「……で、殿下……っ。ど、どうすれば……」
「だっ、大丈夫だよっ。こっちには地下通路があるんだっ! 急いで逃げれば、アイツには気付かれずに――」
「言っておくが、地下通路を使う暇は与えない」

 っっ!

「この姿の時は、人の気配がハッキリ分かるんだ。王太子フィリップとエミ・ナーズは、そこの窓の傍に居る。こんな風にな」

 っっっ!

「少しでも逃げる素振りを見せたら、その瞬間に城ごとお前達を殺す。……大人しく来る気になったかな?」

 ………………。
 アイツの言葉は、ハッタリじゃない。俺達の位置を、明確に把握している……。
 だったら……。だったら……っ。断れる、はずがない……っっ。

「で、殿下……」
「き、キミは、俺が守るから……。い、行こう……」

 愛する人に、格好悪い姿は見せられない。冷たくなった左手を強く握り、俺達は指示に従い王の間に移動した。

「「フィリップ……」」
「兄さん……」

 辿り着くと青褪めた顔が3つあって、3人の向こうには夜空が見える。
 見知っている光景のはずなのに、今あるのは異常ばかり。現実逃避したくなる状況が広がっていた。

「1、2、3、4、5。全員、揃ったみたいだね。それじゃあ始めようか」
「「「「「ひぃっ!!」」」」」

 竜は、崩れ落ちた部分に顔を突っ込み――こちらに大きな顔が迫ってきて、化け物の全身が真っ黒に輝く。そうすればヤツの身体が徐々に縮んでいって…………ぇ?
 竜の代わりに現れたのは、タキシード姿の男。そして、もう一つ。
 そこにいたのは、見覚えのある女。タキシードの男が大切に抱きかかえていた女は、


 アリシア・ロッザだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄されたから、とりあえず逃げた!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:1,122

氷の女と婚約したけど心の声が平和すぎた件。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:15

だからあの時、忠告をしましたよね?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,547pt お気に入り:418

愛していたのは私だけ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49,494pt お気に入り:364

最愛の人の子を姉が妊娠しました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:575pt お気に入り:809

伯爵様、わたくし2番目で結構です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,989pt お気に入り:2,772

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,040pt お気に入り:3,843

処理中です...