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第8話(2)
しおりを挟む「宝石がある場所さえ分かれば、数は関係ない。10でも100でも、1000であっても。犯人に壊される前に壊せるんだよ」
「1000!? ええっ!?」
おもわず、素っ頓狂な声が出てしまう。
聞き間違いじゃ、ないですよね。それじゃあ本当に、そんなにもまとめて壊せるんだ……。
「アルクベールの竜術は、そういうことにも相性ピッタリなんだ。何が起こるかは、その時のお楽しみに」
「ユーラス、それだと仲間外れみたいになってしまうよ。この場でちゃんと――」
「はぁ、分かってないなぁキミは。『何があるのかな?』って考えて、ドキドキしながらその時を迎える。そういうものは、内緒の方が面白いんだよ。これから何が起こるか分かってるんだから、一つくらい謎があった方がいいんだよ」
「…………そ、そうなのかい?」
「そうなんだよ。ね? ロッザさん」《ほら頷いてっ!》
「あ、はい、うん。そうですね」
ソラ君の死角で口パクを送ってきたので、指示された通りにしておきました。
この人は、恩人さんですからね。ソラ君の迷惑にはならないみたいですし、従っておきました。
「ほらね、本人もこう言ってるんだ。内緒に決まり」
「あ、ああ、分かったよ。そうしておこう」
「よしよし、オッケーオッケー。それじゃあ」
満足げに手を叩いていたビエワさんは椅子から立ち上がり、窓の外を眺めました。
「オレの仕事は終了で、そろそろ次のステップに移る時間だね。アルクベールとしてはまた飛んで帰りたいだろうけど、その後を考えると得策じゃない。そこで特別に、ウチの馬車を貸してあげようじゃないか」
「いいのかい、ユーラス。しばらくの間、遠出ができなくなるよ?」
「オレはこれから当分、制作に没頭する。2週間以内に戻ってくればそれでいいさ」
ビエワさんはわたしをチラッと見て、コッソリ指と指でファインダーを作った。
……。あのお話……。冗談じゃ、なかったんですね……。
「ユーラス? 一体何をしてるんだい? アリシアちゃんも、どうして照れてるのかな?」
「こっちの話さ。心配しなくても、幼馴染のお姫様にちょっかいを出しはしないよ」
不思議そうにしているソラ君の肩をポンポンと叩きにきて、彼はそのままアトリエスペースに入っていきます。
「久し振りに、創作意欲が湧いてるんだ。スペアキーを使って玄関の鍵を閉めて、勝手に馬車に乗っていってくれ」
「分かったよ。ありがとう、ユーラス」
「貴方のおかげで、この身体にかかっている呪いを解明できました。ビエワさん、本当にありがとうございました」
「こっちこそ、いいものを見れてよかったよ。じゃあいってらっしゃい」
「ああ」「はいっ」
後ろ手に手を振るビエワさんに揃ってお辞儀をして、わたし達は出発します。
お借りした馬車は以前の報酬だという、2頭編成の豪華なもの。ソラ君が御してくれる車で休憩を挟みつつ進んで、4時間半ほどでお城に到着。着くと陛下と妃殿下にご報告をして、それから陛下の私室に――エオマズへの『穴』がある場所に2人で向かい、わたしはソラ君に手を引かれてソコへと飛び込んだのでした。
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