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第7話(3)

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「順を追って確認していこうか。アルクベール、君はロッザさんを、異性として好きなのかな?」
「はい、好きです。あの時からずっと、好きです」

 敬語で淡々と、力なく。ボーっとしつつ答えた。
 待機中に説明されたのだけど、この状態になるとこんな風になるみたい。キャンドルの火が消えるまではこの調子は続いて、長時間維持しても心身に悪影響はないそうです。

「流石にこれは、本心だよねえ。それじゃあ次、質問2の確認だ。そのロッザさんの、どんな部分に惹かれたんだい?」
「誰に対しても平等に優しいところと、損得関係なく心から笑ってくれるところです。近くで過ごせば過ごすほど魅力が増えていって、だから、あの日の初恋が今も続いています」

 言葉遣いが違う以外は、おんなじ。
 これも。ソラ君が、心から思ってくれていること。

「あらら、その通りだったか。ではお待ちかねの、質問その3だ。……アルクベール。この状況を、チャンスだと思っているかい?」

 ビエワさんの様子と行動も、さっきとおんなじ。楽しそうに口笛を鳴らして、わたしの髪、顔を順番に眺める。

「再会したら、愛しのお姫様は呪いに蝕まれていた。そんなところを颯爽と助けたら、最高に格好いい。おまけにアルクベールも命の恩人になって、それはもう感謝をされるに違いない」
「………………」
「そんな状況で告白すれば、必ず受け入れられるはず。『このタイミングで出会ってよかったなあ』とか、『呪いよありがとう』とか。思ってはいないかい?」

 返事を、待ち遠しそうにして。無邪気な悪意を――探求心を前面に出して、ソラ君の顔を覗き込む。

「それは、今でなくてもいい。呪いだと確信してから今までに、一瞬だけでも、極僅かでも。そんな考えが、あたまを過ったことはないのかい?」

 更に細かい注文が加わり、彼の視線の先にある口がゆっくりと開き始める。
 そして、ソラ君は……。今まで通り淡々とした声調で、


「そんな感情は微塵もありません。あるのはただ、仕掛けた者への怒りだけです」


 引き続き、一緒の言葉を紡いでくれました。
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