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第5話(2)

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「お待たせしました――おや? 誰かと思えばアルクベールじゃないか。こんなところまでわざわざ――しかもこのタイミングは、アレだね。陛下の竜術を駆使してまで急いで会いに来るだなんて、本当に珍しいことが起きた」
「君にしか頼めないお願いがあってね。力を借りるために尋ねたんだよ」

 ニコニコとしていて気さくな雰囲気を持つ、『面倒見のいいお兄さん』。扉の向こうから現れた男性は、そのように感じる方でした。
 でも……。

((……なんなのでしょうか……。この感覚は……?))

 目の前にいらっしゃるのは、『面倒見のいいお兄さん』。なのに、なんだか落ち着かない。
 そうなってしまう要素は、どこにも見当たらないはずなのに……。この方の笑顔を見ていると、心の奥がソワソワしてきます。

「ふーん。オレにしか頼めないお願い、ね。それは、そちらにいる女の子が関係しているのかい?」
「ああ、そうなんだよ。紹介するね」

 とりあえず作り笑いを浮かべていると、ソラ君の微笑みがわたしに向きました。

「こちらは、アリシア・ロッザさん。あの事件でとても親切にしてくれた、あちらの世界の件の命の恩人だよ」
「あ~、へぇ。この子が8年前の、丁寧に治療をしてくれた優しい女の子なんだ。どうもこんにちは、ロッザさん」
「こ、こんにちは。ソラ君、こちらの方は……」
「彼は、ユーラス・ビエワ。父さんの旧友の息子であり、僕の幼馴染であり、新進気鋭の画家であり、『分析(ぶんせき)』の竜術を持つ竜人なんだよ」

 旧友の子供で、幼馴染。だからこの方は、ソラ君に敬語も敬称を使っていないんですね。

 ……ソラ君の幼馴染なら……。悪い人ではないと思う。
 妙なソワソワは、気のせいなのかもしれませんね。

 わたしは密かに安心して挨拶を行い、そして――。そのあとすぐに、『ソワソワ』は気のせいではないと思い知るのでした。

『うむ、そこは僥倖だな。ただ……。うーん。あの者はのう』

 陛下の渋面の訳を……思い知ることに、なるのでした。




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