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第5話(1)

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 高い城壁がある街が3つと、紫色と青色の木が生い茂る山を2つ。わたしがいた国エオマズにもあるものとないものの上を計5回越えたり、雑談――互いの趣味や好物などを話したりして。ソラ君の懐中時計によると、出発から1時間41分で目的地に着きました。

「長旅お疲れ様。疲れていないかな?」
「景色とお喋りが楽しくって、全然大丈夫だよ。ソラ君は平気?」
「問題はないよ。このくらいの飛行は、時々行うから――おっと。危ない危ない」

 広々としていて草花がセンス良く並ぶ、綺麗に手入れされた貸別荘の敷地。芝生の上を歩こうとしていたら、ソラ君が不意によろけました。

「大丈夫っ!?」
「うん大丈夫だよ。足を降ろそうとしたところに、虫がいたんだ。うっかり踏み潰すところだったよ」

 そう笑う彼の首筋には汗が浮かんでいて、わたしはようやくあの本の内容を思い出しました。


『変身しての飛行が選択肢にあるものの、体力の消耗が激しいため基本的には馬車か徒歩』。


 ソラ君は急ぐために飛んでくれて、しかもその時間は1時間半以上。見せないようにしてるけど、相当疲れているんですね……。

「ソラ君……。わたしのために、ごめんなさ――」
「やっぱり、歩くより飛んで行く方が楽だね。アリシアちゃん、さあこっちだよ」

 わたしの声は優しく遮られ、そのまま促されて一緒に歩き始めます。
 ……ソラ君は、心配をかけないようにしてくれている。お礼とお詫びを伝えたかったけれど、ここでそうするのは逆に失礼ですよね。
 この気持ちは別の形でお返しすると決めて、やがてわたし達は豪華な玄関ドアの前に辿り着いたのでした。

ドランこの世界では玄関にハンドベルが置かれていて、これを4回鳴らして呼ぶのがマナーなんだよ。折角だしアリシアちゃん、やってみない?」
「うん、やってみる。お呼びしてみるね」

 15センチくらいあるベルを右手で持って、シャカシャシャカシャカ。ゆっくりと4回鳴らして、そうすれば澄んだ高音が綺麗に響く。
 そんな優雅な音色が消えて、1分くらいした頃でしょうか。がちゃりと鍵が開く音がして、ワイシャツに青のズボンを合わせた男の人が顔を覗かせました。

 移動中にソラ君が、訪ねる方は常に単独行動をしていると言っていました。
 ですので、間違いありません。目の前にいらっしゃる男性が、目的の方です。


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