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第4話(1)
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「アリシア殿、お初にお目にかかります。わたしがこの子の父でありこの国の王を務める、ジルスと申します」
「アリシアさん、初めまして。わたくしがこの子の母親、王妃のルニアですわ」
ひげを蓄え頭に王冠を載せた、凛とした男性。
ストレートの銀色の髪の毛を腰まで伸ばした、お淑やかで気品のある女性。
王の間に入ると最奥にそんな方々がいらっしゃって、この国のトップであるお二人がわざわざ迎えにきてくださりました。
「わ、わたしはアリシア・ロッザと申します。このような体勢で申し訳ございません」
「ふふ。貴方は、息子の恩人です。どのような姿勢でも構いませんぞ」
「アリシアさんがいなければ、アルクベールは殺されてしまっていたんですもの。例え寝転んでお菓子を摘みながらでも、非礼にはなりませんわよ」
ジルス様は間髪入れず首を左右に振り、ルニア様はクスリと微笑んでくださった。
ころ、される……。そんな言葉があっさりと、わたしから緊張を奪い去りました。
「うちの花壇に来る前には……。大変な――あまりにも大きなことが、起きていたのですね……」
「うん。あの日僕はとある行事に参加するために、リッカ――この国でもっとも大きな学舎へと単身で出かけていてね、その帰路で『刺客』に襲われたんだ」
襲撃……。
やはり、大きな――恐ろしいものが、発生していました。
「突然、大勢の竜が――武装した竜人が襲ってきて、選りすぐりの護衛たちはあっという間に全滅してしまう。……彼らは命を賭して護ってくれていたのだけれど、その際に僕も大怪我を負ってしまってね。応援――助けを呼べる状況ではなくなって、保険を使って隣り合う世界に逃げたんだよ」
「ドランには王夫婦と王太子にのみに伝えられる、隣り合う世界への出入り口――アリシア殿の居る世界への出入り口があり、その『穴』の一つを使って難を逃れたのです」
「早く城に戻って治療をしないと死んでしまう。だけど、今ドランに戻るのはあまりにも危険。あちらの世界で自然に治すしかなくなって、力を振り絞って近くに隠れたんだよ」
そっか。だから周りに野良犬や野良猫などがいない、人目にも付かないあそこにいたんですね。
「アリシアさん、初めまして。わたくしがこの子の母親、王妃のルニアですわ」
ひげを蓄え頭に王冠を載せた、凛とした男性。
ストレートの銀色の髪の毛を腰まで伸ばした、お淑やかで気品のある女性。
王の間に入ると最奥にそんな方々がいらっしゃって、この国のトップであるお二人がわざわざ迎えにきてくださりました。
「わ、わたしはアリシア・ロッザと申します。このような体勢で申し訳ございません」
「ふふ。貴方は、息子の恩人です。どのような姿勢でも構いませんぞ」
「アリシアさんがいなければ、アルクベールは殺されてしまっていたんですもの。例え寝転んでお菓子を摘みながらでも、非礼にはなりませんわよ」
ジルス様は間髪入れず首を左右に振り、ルニア様はクスリと微笑んでくださった。
ころ、される……。そんな言葉があっさりと、わたしから緊張を奪い去りました。
「うちの花壇に来る前には……。大変な――あまりにも大きなことが、起きていたのですね……」
「うん。あの日僕はとある行事に参加するために、リッカ――この国でもっとも大きな学舎へと単身で出かけていてね、その帰路で『刺客』に襲われたんだ」
襲撃……。
やはり、大きな――恐ろしいものが、発生していました。
「突然、大勢の竜が――武装した竜人が襲ってきて、選りすぐりの護衛たちはあっという間に全滅してしまう。……彼らは命を賭して護ってくれていたのだけれど、その際に僕も大怪我を負ってしまってね。応援――助けを呼べる状況ではなくなって、保険を使って隣り合う世界に逃げたんだよ」
「ドランには王夫婦と王太子にのみに伝えられる、隣り合う世界への出入り口――アリシア殿の居る世界への出入り口があり、その『穴』の一つを使って難を逃れたのです」
「早く城に戻って治療をしないと死んでしまう。だけど、今ドランに戻るのはあまりにも危険。あちらの世界で自然に治すしかなくなって、力を振り絞って近くに隠れたんだよ」
そっか。だから周りに野良犬や野良猫などがいない、人目にも付かないあそこにいたんですね。
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