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第3話(2)

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「こちらの世界では最近まで色々・・とあって、恩返しをしたかったけど会いに行けなかった。でも昨日どうにか片が付いたからそちらの世界に向かって、見つけた時は酷く衰弱してたからウチに運んだんだ。汚れていた服や身体は使用人――もちろん同性の者に綺麗にしてもらって、アリシアちゃんはそのまま朝まで眠っていたんだよ」
「そう、なんだ……。ソラ君、ありがとうね――ぁっ、ごめんなさい。この口調は失礼ですよね」
「ううん、むしろその方が嬉しいな。僕には『アルクベール・ディー』という名前があるけれど、『ソラ君』がとても気にいっているんだ。引き続きソラ君呼びで、あの頃のように気さくに接してもらいたいな」
「わ、分かりまし――分かったよ、ソラ君。助けてくれて、ありがとう」

 ベッドの上で姿勢を正して、深く頭を下げる。
 こういう行為は、気さくとかは関係ありません。今はソラ君が命の恩人ですから、丁寧に感謝の気持ちを伝えさせてもらいました。

「貴方のおかげでわたしは今もこうしていられて、しかもね、ソラ君に会えて元気にもなれたんだよ。最近ずっと調子が悪かったんだけど、今は楽になってるの」
「…………そっか。やっぱり、そうなんだね」
「??? ソラ君、難しい顔をしてどうしたの……?」
「だとしたら尚更、父さんに会ってもらわないといけないね。アリシアちゃん、失礼するよ」

 首を傾けていたら、ふぇっ!? 脇の下と両膝の裏に手を差し込まれ、ふわりとお姫様抱っこをされました!?

「父と母も前々からお礼をしたいと言っていたし、アリシアちゃんに聞いて欲しい話もあるんだ。2人のもとに案内させてもらうね」
「は、はぃ……。お願い、します、です……」

 こんな体勢は初めてなので、顔が真っ赤になってます。言葉も少し変になってしまいます。
 抱っこされたわたしはあたふたしたたま部屋から出て、部屋と同じくらい豪華で綺麗で広い廊下を進む。そして幅がウチの2倍はある廊下を2分くらい進むと、帯剣した2人(人型で屈強な男性)が護る扉の前に辿り着きました。

「あ、あの……。ここ、は……? この方々は……?」
「ビックリさせてごめんね。彼らは衛兵で、ここは王の間なんだよ」
「あっ、そうなんだ。だから建物は豪華で――…………。おうのま?」

 おのうまって、王の間ですよね? 王の間って、王様がいる間ですよね?
 じゃ、じゃあ……。

「そこにいるのが、お父様とお母様ってことは……。ソラ君は、もしかしなくても……」
「うん。僕はこの国の、第一王子。王太子なんだよ」


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