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第8話 7日後 ~初めての買い出しと、恐怖をもたらすガエルの新商品~ アンジェリク視点(2)
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「お待たせ。これが、例の試作品だ」
買い出しが終わって、1時間と少しが経った頃。誰も居なくなった店内に小麦の良い香りが漂い、私の前に2つのパンが置かれた。
「わぁ、美味しそう。不思議な形をしてますね」
丸いパンの表面には1、2、3、4、5……5つの模様があって、薔薇のような形をしている。こんなパンを見るのは初めて。
「こいつは専用の押し型を使って、こんな風に焼き上がるようにしてるんだ。で、右のあるのはラード入りで、左にあるのがラードなしだ」
「ラードは…………脂、でしたよね? どのような違いがあるのですか?」
「それは、食べてみてのお楽しみってね。どうぞ召し上がれ」
「は、はい。いただきます」
そうしてまずは、右――ラード入りの方のパンを、食べてみる。
……中は空洞で、でもふわっとしていてしっとり感があって……。素材の味が優しく口の中に広がる。
「次は、ラードなしをいただきますね。………………」
こちらは、クラストと呼ばる『皮』の部分がぱりぱり。味は同じなものの食感が大きく違うので、別のパンだと感じる。いつまでも噛み締めていたい、そんな風に思えるパンだった。
「アンジェリク、どうだった? 忌憚なき意見をお願いします」
「どちらも素材が活きていて、とても美味しいと感じています。もし自分がお客様なら、次も手に取ります」
ガエルさんや皆さんの夢は――今の私の夢も、『パネッタを国一のベーカリーにする』。そのためお世辞は僅かもなく、本心で感想をお伝えした。
「良い意味で素朴で、そのまま――単体でも美味しいですが、お野菜やチーズ、ベーコンなどを挟んでも美味しいかもしれません」
「実はこのパンは、そういう風にもして食べられてるんだよ。ちなみに俺は、チーズとトマトのトッピングがおすすめだ」
そうしてガエルさんはそれらをトッピングしたものを用意してくださり、やっぱりそうだった。お互いがお互いを引き立て合っていて、私は夢中で完食した。
「ガエルさん、こちらも非常に美味しかったです。人気の新作になると思いますよ」
「…………ふ~、そっか。そう言ってもらえて一安心だ。配合とミルクを変えて、正解だったみたいだな」
これは曰くパン職人あるあるだそうなのだけど、試作品を食べてもらう時が一番緊張するみたい。そのためガエルさんは安堵の息をたっぷりと吐いて、「じゃあ早速、明日から売り出すか!」と眩しい笑顔を作られたのだった。
「こいつは新商品だから、目立つ場所に置いて……POPも作っとくか。アンジェリク、悪いがこれから頼めるか?」
「はいっ。喜んで!」
6日前なんとなくPOPをデザインしたら、お客様から高評価をいただいた。それによって今では私がPOP担当になっていて、こんな形でも貢献できることが嬉しい。
「見た目と名前でデザインを決めるので、そちらを教えてください。こちらは、なんというパンなのですか?」
「アンジェリクにとっては嫌な響きかもしれないが、違う国の言葉が由来なんで許して欲しい。こいつは、『ロゼッタ』っていうんだよ」
買い出しが終わって、1時間と少しが経った頃。誰も居なくなった店内に小麦の良い香りが漂い、私の前に2つのパンが置かれた。
「わぁ、美味しそう。不思議な形をしてますね」
丸いパンの表面には1、2、3、4、5……5つの模様があって、薔薇のような形をしている。こんなパンを見るのは初めて。
「こいつは専用の押し型を使って、こんな風に焼き上がるようにしてるんだ。で、右のあるのはラード入りで、左にあるのがラードなしだ」
「ラードは…………脂、でしたよね? どのような違いがあるのですか?」
「それは、食べてみてのお楽しみってね。どうぞ召し上がれ」
「は、はい。いただきます」
そうしてまずは、右――ラード入りの方のパンを、食べてみる。
……中は空洞で、でもふわっとしていてしっとり感があって……。素材の味が優しく口の中に広がる。
「次は、ラードなしをいただきますね。………………」
こちらは、クラストと呼ばる『皮』の部分がぱりぱり。味は同じなものの食感が大きく違うので、別のパンだと感じる。いつまでも噛み締めていたい、そんな風に思えるパンだった。
「アンジェリク、どうだった? 忌憚なき意見をお願いします」
「どちらも素材が活きていて、とても美味しいと感じています。もし自分がお客様なら、次も手に取ります」
ガエルさんや皆さんの夢は――今の私の夢も、『パネッタを国一のベーカリーにする』。そのためお世辞は僅かもなく、本心で感想をお伝えした。
「良い意味で素朴で、そのまま――単体でも美味しいですが、お野菜やチーズ、ベーコンなどを挟んでも美味しいかもしれません」
「実はこのパンは、そういう風にもして食べられてるんだよ。ちなみに俺は、チーズとトマトのトッピングがおすすめだ」
そうしてガエルさんはそれらをトッピングしたものを用意してくださり、やっぱりそうだった。お互いがお互いを引き立て合っていて、私は夢中で完食した。
「ガエルさん、こちらも非常に美味しかったです。人気の新作になると思いますよ」
「…………ふ~、そっか。そう言ってもらえて一安心だ。配合とミルクを変えて、正解だったみたいだな」
これは曰くパン職人あるあるだそうなのだけど、試作品を食べてもらう時が一番緊張するみたい。そのためガエルさんは安堵の息をたっぷりと吐いて、「じゃあ早速、明日から売り出すか!」と眩しい笑顔を作られたのだった。
「こいつは新商品だから、目立つ場所に置いて……POPも作っとくか。アンジェリク、悪いがこれから頼めるか?」
「はいっ。喜んで!」
6日前なんとなくPOPをデザインしたら、お客様から高評価をいただいた。それによって今では私がPOP担当になっていて、こんな形でも貢献できることが嬉しい。
「見た目と名前でデザインを決めるので、そちらを教えてください。こちらは、なんというパンなのですか?」
「アンジェリクにとっては嫌な響きかもしれないが、違う国の言葉が由来なんで許して欲しい。こいつは、『ロゼッタ』っていうんだよ」
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