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第3話 戻ってきたラウル オラース視点(2)

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「…………………………べーかりー? ぱっ、パン屋だと!?」

 臣下の一人、ドニウス――ラウルの代わりにアイツを監視していた、3人の中の1人。コイツが持ってきた情報を聞いた俺は、間抜けに声を上げていた。
 自ら学院を退学して貴族籍の返上を宣言し、卿達を煽って余裕たっぷりで去ったノエル。ヤツが向かった先は、街にあるパン屋……!?

「みっ、見間違いじゃないんだろうな!? 本当にアイツはパン屋に入ったんだな⁉ 隣の建物か何かと見間違えたんじゃないのかっ!?」
「見間違いなどではなく、確実にベーカリー・『パネッタ』に入りました。この目で、3人共に目視しております故、誤りなき情報でございます」
「そ、そうか……。ち、ちなみにその…………パネッタ、だったか。それはどのような店なんだ?」

 あんな態度を取っていたノエルが、普通のパン屋に入るとは思えない。そこは、何かしら特別なパン屋なのか……?

「常時30種類ほどのパンが並んでおり、焼き立てのパンとコーヒーを楽しめるイートインスペースカフェスペースが併設されております。地元では人気のある店だそうでして、目撃当時もなかなかの賑わいを見せておりました」
「ほ、ほう、そうか。け、経営者は、どんなヤツだ……?」
「レオニー・ザッテという、39歳の女性が経営しているようです。彼女は5年前に夫と死別しており、現在はパン職人1人とレオニーを含めた2人のホールスタッフで切り盛りしております」
「…………っ! 俺の感が、レオニー・ザッテが怪しいと訴えている! ソイツは何者なんだっ!? レオニーに関する詳細な情報はないのか!?」
「そちらは現在調査中でして、分かり次第情報をお届けする運びとなっております。ただ聞いたところによると、9年前のオープン当初は閑古鳥が鳴いており、地道な努力で成長したとのことですので。レオニー・ザッテおよび店の関係者に、特別な力はないと――」
「強い奴ほど爪を隠すのが上手いんだ!! 絶対にソイツに何かがあるっ!!」

 俺自身がそうだから・・・・・・・・・、よく分かるんだ。真に強い者ほど実態を見せない。周りを欺いて生きているんだ!!

「ノエルの余裕から推測するに、レオニーは高位貴族と何かしらの繋がりがあるはず。……そのコネクションを使って、俺の捏造を暴く気か……!?」
「お、オラース様。そちらは、考えすぎなのでは――」
「考えすぎなものか!! ドニウスっ、お前は新たに5人――いや7人を連れて大至急持ち場に戻れ!! ラウルっ、俺達は父上と共に対策を練るぞ!!」

 俺は間抜けな臣下を一喝し、大急ぎで執務室へと駆け込む。そうしてあらゆる未来を想定し、必死になって対抗策の用意を始めたのだった――。


 アイツらの収集能力があれば、半日もあれば何かしらを掴める。
 ……レオニー……。ヤツは、何者なんだ……!?








 ※明日の投稿分より、再びノエル視点となります。
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