わたしがお屋敷を去った結果

柚木ゆず

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第3話 お屋敷を去った結果~父と母の場合~ 俯瞰視点(2)

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「おほほほほほほほっ! 見てみなさいカプシーヌ!!」
「これが我々の実力だ!!」

 あれから一か月後。ロドレル子爵邸内には、エメリックとエリサの笑い声が響き渡っていました。

 投資が大成功し、金はおよそ2倍にまで増えた。

 あっという間に特大の成果が出たため、ふたりは歓喜の渦に包まれていたのでした。

「『そのようなやり方は破滅を招きます。お止めください』? 『楽をして稼げるほど世の中は甘くありません』? 確かにそうだな。やっている者が、凡人なら、な」
「わたくし達は貴族に生まれ貴族として育ったエリートの中のエリート。教養がある上に、磨かれた頭脳を使って熱心に勉強をしているんだもの。当てはまるはずがないわ」
「賛同したロバート実弟達も、ほんに阿呆だったな。そんなことにも気付かぬなんてな」

 改めて、カプシーヌがいなくなってよかった――。あのままだったらこんな最高の機会を逃すところだった――。全員猛省しろ――。
 などなど、たっぷりと反対派の人間を罵倒。酒が入っていることもあって聞くに堪えない暴言をいくつも吐いたふたりは、早速『次の勝負』の相談を始めました。

「わたしは候補A――といきたいところだが、候補CとDを買うべきだと思っている。お前はどう思う?」
「あら、わたくしも同意見よ。Aは最近低調気味で、今手を出すのは危険。CとDはかなり下がっているし、今が最高のタイミングだと思っていたわ」
「ふ、では決まりだな!」
「ええ。新たな勝負の始まりよ!」

 意見が一致したため相談はあっという間に終わり、次の日早速該当する株をありったけ購入。初回と同じように、嬉々としながら売る機会を待ち――

「……………………」
「……………………」

 ――二週間後。ふたりは冴えない顔で、お酒を飲んでいました。
 先々週とは真逆になってしまっている理由は、損をしてしまったから。くだんの株は購入後さらにドンドン下がっていってしまい、このままだと取り返しがつかないと感じたため、しぶしぶ所謂『損切』を行ったのでした。

「くそっ、くそっ! なんなんだあの株は!! 役立たずめ!!」
「……あの株の……値下がりに関わった人間は……全員死になさい!! 苦しんで苦しんで死ね!!」

 負けたのは自分達のせいではない。自分達の予想を裏切ったあちらが悪い。
 ふたりは醜い責任転嫁をして暴言を吐き、不必要に使用人を叱責したり食器を割ったり周りに当たり散らし、ようやく落ち着きを取り戻しました。

「まあいい。起きたことはもう戻らん」
「そうね。切り替えてきましょう」
「今度は今まで以上に、先を見越して勝負をする。我々はもう負けんぞ!」

 一度負けたから止めるという選択肢は、はありません。ふたりはリベンジを誓って慎重に選んだ株を買い――
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