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第12話 駆け落ちした者の末路~ ナルシスの場合~ 俯瞰視点(2)
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「園長様! 副園長様! この通りです!! お金を貸してください!!」
どうにかして期日までに支払わないと、大変なことになってしまう。恐ろしい事態を回避するべく向かったのは、果樹園。
2人が待つ事務所に入るや、ナルシスは床に額を擦りつけました。
「とりあえず1000万リーバルあればっ、凌げるんです! 時間を稼いでっ、どうにかできるんです! きっと! だから支援をお願いします!」
「申し訳ないが、ウチにそんな余裕はないよ。他を当たっておくれ」
「そこをなんとか!! このご恩は倍にっ、3倍にしてお返ししますから! どうか1000万リーバルを……! お貸し、ください……!!」
「いくら頼まれても、無理なものは無理だよ。貸すことはできない」
助けてあげたい気持ちはありましたが、願いを叶えると今度は自分達の生活が危うくなりかねません。園長夫妻の首が縦に振られることはなく、
「! もういい!! 時間の無駄だった!! お前達はきっと最悪の死に方をするだろうなぁ!!」
支援を受けられないと悟ったナルシスは恩人たちに暴言を吐き、事務所を出る。そうして理不尽に、足早に去ろうとしていた時のことでした。
「メレーヌ!! メレーヌなのかい!?」
偶然であり必然のタイミングでメレーヌと出会い、その瞬間ナルシスの中に『名案』が閃きます。
((そうだ!! コイツも巻き込んでやろう!))
借金を返せないとなると、法外な利子を上乗せされた分を『肉体労働』で支払わないといけなくなります。
2人なら稼ぎは倍になり、半分の期間で済むようになる。
ナルシスは自分の負担を減らすために、メレーヌに近づいたのです。
『あの件は100パーセントこっちが悪い。ソレと謝罪を伝え、できるなら……復縁をお願いしたいと思っていたんだ……。でも…………あんなことをした自分には、追いかける資格なんてない……。だから諦めて……。ずっと、ずっと……。後悔の日々を過ごしていたんだ……』
『……虫のいい話だと思っている。でも、こうして偶然出会えたから……。謝らせてもらって……。これから、お願い、をさせてもらいたいです』
『メレーヌ。どうか……どうかもう一度だけチャンスをください。俺とやり直して、ください。お願いします……!!』
その目的を果たすべくナルシスは心にもない言葉を繰り返し、
『お願いします……! 俺に、チャンスをください……!!』
『…………………………そう、なんですのね。分かりましたわ。そういうことなら、応じさせていただきますわ』
メレーヌは寄生して搾り取ろうとしていため、誘いに乗って再び関係を結んでしまいます。
『そうだ。昨日は食材がなくて大したご飯を出せなかったら、そのお詫びに外食をしよう。とある取引相手に教えてもらった、お気に入りのレストランがあるんだ』
『今日は一日オフだから、どこか出かけようか。実はね、メレーヌに見せたい景色があるんだ』
あの提案はすべて、ナルシスの『思い出作り』。全てを失う前に人生を精一杯楽しんでやるという思いが詰まった自分のため、であり『メレーヌを引き留めておく』ためのものでした。
そうとは知らないメレーヌはまんまと引っかかり、ついに返済期間を迎えてしまう。そのため借金取りが押しかけてきて、ようやく、メレーヌは隠されていた真実を知ることになるのでした。
どうにかして期日までに支払わないと、大変なことになってしまう。恐ろしい事態を回避するべく向かったのは、果樹園。
2人が待つ事務所に入るや、ナルシスは床に額を擦りつけました。
「とりあえず1000万リーバルあればっ、凌げるんです! 時間を稼いでっ、どうにかできるんです! きっと! だから支援をお願いします!」
「申し訳ないが、ウチにそんな余裕はないよ。他を当たっておくれ」
「そこをなんとか!! このご恩は倍にっ、3倍にしてお返ししますから! どうか1000万リーバルを……! お貸し、ください……!!」
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助けてあげたい気持ちはありましたが、願いを叶えると今度は自分達の生活が危うくなりかねません。園長夫妻の首が縦に振られることはなく、
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支援を受けられないと悟ったナルシスは恩人たちに暴言を吐き、事務所を出る。そうして理不尽に、足早に去ろうとしていた時のことでした。
「メレーヌ!! メレーヌなのかい!?」
偶然であり必然のタイミングでメレーヌと出会い、その瞬間ナルシスの中に『名案』が閃きます。
((そうだ!! コイツも巻き込んでやろう!))
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『……虫のいい話だと思っている。でも、こうして偶然出会えたから……。謝らせてもらって……。これから、お願い、をさせてもらいたいです』
『メレーヌ。どうか……どうかもう一度だけチャンスをください。俺とやり直して、ください。お願いします……!!』
その目的を果たすべくナルシスは心にもない言葉を繰り返し、
『お願いします……! 俺に、チャンスをください……!!』
『…………………………そう、なんですのね。分かりましたわ。そういうことなら、応じさせていただきますわ』
メレーヌは寄生して搾り取ろうとしていため、誘いに乗って再び関係を結んでしまいます。
『そうだ。昨日は食材がなくて大したご飯を出せなかったら、そのお詫びに外食をしよう。とある取引相手に教えてもらった、お気に入りのレストランがあるんだ』
『今日は一日オフだから、どこか出かけようか。実はね、メレーヌに見せたい景色があるんだ』
あの提案はすべて、ナルシスの『思い出作り』。全てを失う前に人生を精一杯楽しんでやるという思いが詰まった自分のため、であり『メレーヌを引き留めておく』ためのものでした。
そうとは知らないメレーヌはまんまと引っかかり、ついに返済期間を迎えてしまう。そのため借金取りが押しかけてきて、ようやく、メレーヌは隠されていた真実を知ることになるのでした。
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