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第7話 ??? 俯瞰視点
しおりを挟む「アンリ様! アンリ様っ! アンリ様っっ!」
「…………………………………………」
ヴァロトールスの湖でエリーズと別れてから、数時間後。ダツレットス家所有の馬車の中では、アンリの従者兼護衛を務めるエリックが繰り返し主の名を呼んでいました。
「アンリ様っ! アンリ様っ!! アンリ様っ!! アンリ様っ!!」
「…………………………………………」
馬車内の背もたれに全体重を預けて、眠ったまま。エリックは耳元で何度も何度も大声を出しているのに、アンリはピクリとも反応しません。
「アンリ様!! アンリ様っ!! アンリ様っっ!! アンリ様!!」
「…………………………………………」
耳元での大声に加えて、肩を激しく揺する。身体全体がぐらぐらと動くほど激しく揺さぶられても、アンリが目覚める気配はありません。
「エリック殿……。まさか、アンリ坊ちゃんは……」
「そっ、そんなことはありません! 絶対にお目覚めになりますよ! アンリ様! アンリ様!! アンリ様!! アンリ様!!」
「アンリ坊ちゃん!! アンリ坊ちゃん!! アンリ坊ちゃんっ!!」
エリックに続き御者のピエールも一緒になって必死に呼びかけ、今度はふたりで一緒になって肩を揺すり――
「アンリ様!! アンリ様!! アンリ様!! アンリ様起きてください!!」
「アンリ坊ちゃん!! 坊ちゃん!! 坊ちゃんっ!! 起きてください!! 起きてくださいよ!!」
「…………………………………………ぅ。エリックに、ピエール……? ふたりとも、どうして泣きそうな顔をしているんだい……? なにかあった……………………ああ、そういうことか。そうだったな。そうだった」
ついに目を覚ましたアンリはしばらくぼんやりと二人を眺め続け、1分以上が経った頃でした。ようやく経緯を思い出し、両手を膝に置いて深々と頭を下げました。
「エリック、ピエール、心配をかけてすまなかった。また、迷惑をかけてしまったね」
「いえ!! 滅相もございません!! 安心、致しました……!!」
「坊ちゃんが無事に目を覚ましてくださった、それだけで充分でございますよ。ささっ、いつまでも謝ってないでお屋敷に戻りましょう!」
「…………ありがとう。そうだね。お言葉に甘えて、そうさせてもらうよ――がはっ!?」
微苦笑を浮かべながら差し出された手を握り、馬車を降りていた時でした。歩き出そうとしたアンリは、吐き出してしましました。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「アンリ様……」「坊ちゃん……」
「だ、大丈夫。アレの影響だろう……。問題ない……。あ、ああ、片づけは俺がするよ。自分がやったことはちゃんと自分でけじめをつけないといけないからな」
――何事も――。
心の中でアンリはそう呟き、掃除道具を取るためふらふらと、お屋敷へと入っていったのでした。
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