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第4話 アンリ様と、二人きり~2回目~ エリーズ視点(1)
しおりを挟む「ごきげんよう、エリーズ様。一週間ぶりですね」
「ごきげんよう、アンリ様。そうですね、一週間ぶりですね」
11月27日の、正午に少し前。快晴の空の下で、わたし達は再会をしました。
「あのあと、お身体、お心の具合はいかがでしたか? どこかに不調はございませんでしたか?」
「配慮をいただいたおかげでございます。今日までそういったものは、一切出ておりません」
急な脈の加速や身体の発熱などの影響はなく、普段通りの生活を送ることができていました。
あのあと記憶に関する――脳に関する専門家の方に伺ったのですが、そういったものは脳への負荷が想像以上に大きそうです。少しの違和感もなく過ごせているのは、あの時止めてくださったからなのですよね。
「それはよかったです。では早速ではありますが――失礼しました。少々お待ちください」
「???」
「二人きりで過ごすこと、お許しください」
両目を静かに瞑り、右手を胸に手を当て、アンリ様は謝罪の言葉を口にされました。
これは…………。恐らくは機会をくださった、ディミトリ様へ向けたお言葉なのでしょう。
「………………お待たせいたしました」
「いえ、待ってはおりませんよ。まずは湖を一周するのでしたよね?」
「はい。そうなっております」
当時デートしていた時と同じ行動を取っていけば、前世の記憶が覚醒しやすくなるかもしれない――。そんな理由があって、本日はデートの際のロジェさんとリリアンの行動をできる限り再現することになっているのです。
「その際にロジェとリリアンさんは、必ず手を繋いでいました。お手を、よろしいでしょうか?」
「もちろんです。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。失礼致します」
手を差し出して、そっと握っていただいて。初めて感じたアンリ様の手は、温かくて、柔らかな優しさを感じました。
「当時の僕達はお喋りをしながら30分ほど湖畔を歩いて、それから船――ボートに乗っていたんです。お喋りの内容は決まって、前回会った時から今日までに起きた出来事、でした」
「そうだったのですね。近況を報告する際には、順番などありましたか?」
「いつも、リリアンさんからのスタートでした。ひとつ相手に伝えたら相手にバトンを渡して――という風に進んでいっていましたね」
ですので『わたし』『アンリ様』『わたし』『アンリ様』という風に1週間の間に起きた出来事を報告し合うこととなり、
「この1週間で最も印象深いのは、一昨日の流れ星です。部屋の窓から夜空を30分ほど眺めていたのですが、その間に3回も流れ星が見えたんですよ」
「それはすごい……! 僕は滅多に見たことがなくて、最後に見たのは……10年以上前だと思います。普段からよく発見されるのですか?」
「いえ、わたしも最後に見たのは同じくらい前でした。普段はまったく見ることがなく、本当に驚きました」
「僕の直近で最も印象深い出来事は、3日前に起きた正夢ですね。右足を怪我をした猫が夜中に迷い込んでくるという異様に鮮明な夢を見て、気になってその場所で待っていたら実際に現れたのですよ」
「! 正夢の話はよく聞きますが、実際に起こった方というお話は初めて聞きます」
「僕自身も迷信の一種だと思っていて、ビックリしましたよ。縁を感じましたし放ってはおけませんからね、治療をして屋敷で飼うことになりました」
こういった話をして、盛り上がっている間に、あっという間に30分が経ちました。ですのでわたし達は、小さな船に乗るべく移動を始め――
その後。わたしは船の上で、とある体験をすることとなるのでした。
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