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第1話 夫婦? エリーズ視点(2)
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『なんだって……!?』
『婚約を解消、ですって……!?』
『バカな……!』
『そんなこと、できるはずがないですわ……!!』
ディミトリ様が想ってくださってることもあり、わたし達は非常によい関係を築けています。ですがこの婚約は恋愛感情が切っ掛けではなく、政略によって始まっています。
家と家の未来を考えてのことですから、個人的な感情が――しかもそのような理由で、変更できるはずがありません。
「自分が滅茶苦茶な発言をしていると、重々理解しております……。ですが……。それでも……。今度こそ、前世で出来なかったことを実現したいのです……」
「………………」「………………」
「ディミトリ様。エリーズ様。どうか、どうか――」
「アンリ殿。君とエリーズが前世で夫婦だったという話は、間違いないんだな?」
これまで言葉を発されていなかったディミトリ様が、アンリ様、わたしの順に、視線を動かしました。
「君の勘違い。もしくは――『エリーズの容姿に惚れた』や『ラックルート家が持っているものが目当て』などといった腹黒い醜悪な打算があって、嘘を吐いているのではないんだな? その言葉に嘘はないと、神に誓えるんだな?」
「はっ、はい! 勘違いではなく、他意もない。そう誓えます!!」
「……………………………………………………。その声音にも、その目にも。嘘はない、ように感じる」
アンリ様の言葉を目を瞑って聴き、じっとアンリ様の瞳を見つめたあと。ディミトリ様は静かに呟き、そのお顔は再びこちらへと向きました。
「エリーズ。エリーズには、特に変化はないんだね? この出来事を受けて記憶が蘇ったとか、違和感を覚えるとかは、ないんだね?」
「は、はい。ありません」
アンリ様が仰られていたような景色が頭の中に浮かんでくることはありませんし、アンリ様を見つめ続けても何一つ変化はありませんでした。
「だよね。………………………………とはいえだ。現時点で何もないのだから、と終わりにはできない問題だな」
わたしに対して頷かれたディミトリ様は、小さく嘆息。口から息を吐き出すと、今度はわたし、アンリ様の順番に視線を動かし、再び目線がわたしへと戻ってきました。
「もしエリーズの前世の記憶がのちのち蘇った場合、君は相当なショックを受けてしまうだろう。前世でそんな約束をしているのに、その相手が目の前にいるのに、叶わないんだからね」
「……そう、ですね」
「大切に想う人を離したくないという気持ちはあるが、大切な人が悲しみ嘆く姿は絶対に見たくない。だから…………。ふたりきりの時間を、設けようと思う」
ディミトリ様は手招きをし、アンリ様をステージ上に導きました。
「俺達の姿を見て記憶が蘇ったのなら、何かしらの切っ掛けでエリーズの記憶も蘇る可能性が充分にある。そこでアンリ殿から前世の話を聞いたりふたりで何かしらをしたり、色々な角度で刺激を与えてみるべきだと思うんだよ」
「サンフォエル、様……!」
「それで記憶が蘇ったら、こちらは身をひく。それで記憶が戻らなかったり何かしらの変化が起きなかったりしたら、あちらに諦めてもらう。そう考えているんだけど、エリーズ。どうかな?」
ディミトリ様の両目が、柔らかく細まりました。
「前者だった場合は、事情が事情だ。結婚せずにパイプだけ作れるようにすればいい。後者だった場合は、納得できるまで待っているから、それから結婚すればいい。……細かいことは考えなくていいよ。俺としてはそういた方がいいと思うんだけど、どうかな?」
「…………よろしい、のでしょうか……?」
「もちろん。むしろ遠慮されたら困ることだからね、ありのままの気持ちを教えて欲しい。エリーズ、どうかな?」
「……………………はい。そう、させていただきたいと思います」
もし前世の記憶があるのなら。ソレが蘇った時わたしは何を感じ、何を思うのか。
それを知りたくて、首を横ではなく縦に動かしました。
「オーケー。じゃあこの婚約は一旦、白紙――休止にしておこう。エリーズ、アンリ殿も。良い結果が出るといいね」
「痛み入ります……! サンフォエル様、痛み入ります……!」
「ご配慮、感謝いたします」
さすが次期商会頭――。ディミトリ様はお人が出来ている――。器が大きい――。
そんなお声と万雷の拍手の中わたしとアンリ様は一礼を行い、こうして突如、これまでとは違う日常が幕を開けることとなったのでした――。
『婚約を解消、ですって……!?』
『バカな……!』
『そんなこと、できるはずがないですわ……!!』
ディミトリ様が想ってくださってることもあり、わたし達は非常によい関係を築けています。ですがこの婚約は恋愛感情が切っ掛けではなく、政略によって始まっています。
家と家の未来を考えてのことですから、個人的な感情が――しかもそのような理由で、変更できるはずがありません。
「自分が滅茶苦茶な発言をしていると、重々理解しております……。ですが……。それでも……。今度こそ、前世で出来なかったことを実現したいのです……」
「………………」「………………」
「ディミトリ様。エリーズ様。どうか、どうか――」
「アンリ殿。君とエリーズが前世で夫婦だったという話は、間違いないんだな?」
これまで言葉を発されていなかったディミトリ様が、アンリ様、わたしの順に、視線を動かしました。
「君の勘違い。もしくは――『エリーズの容姿に惚れた』や『ラックルート家が持っているものが目当て』などといった腹黒い醜悪な打算があって、嘘を吐いているのではないんだな? その言葉に嘘はないと、神に誓えるんだな?」
「はっ、はい! 勘違いではなく、他意もない。そう誓えます!!」
「……………………………………………………。その声音にも、その目にも。嘘はない、ように感じる」
アンリ様の言葉を目を瞑って聴き、じっとアンリ様の瞳を見つめたあと。ディミトリ様は静かに呟き、そのお顔は再びこちらへと向きました。
「エリーズ。エリーズには、特に変化はないんだね? この出来事を受けて記憶が蘇ったとか、違和感を覚えるとかは、ないんだね?」
「は、はい。ありません」
アンリ様が仰られていたような景色が頭の中に浮かんでくることはありませんし、アンリ様を見つめ続けても何一つ変化はありませんでした。
「だよね。………………………………とはいえだ。現時点で何もないのだから、と終わりにはできない問題だな」
わたしに対して頷かれたディミトリ様は、小さく嘆息。口から息を吐き出すと、今度はわたし、アンリ様の順番に視線を動かし、再び目線がわたしへと戻ってきました。
「もしエリーズの前世の記憶がのちのち蘇った場合、君は相当なショックを受けてしまうだろう。前世でそんな約束をしているのに、その相手が目の前にいるのに、叶わないんだからね」
「……そう、ですね」
「大切に想う人を離したくないという気持ちはあるが、大切な人が悲しみ嘆く姿は絶対に見たくない。だから…………。ふたりきりの時間を、設けようと思う」
ディミトリ様は手招きをし、アンリ様をステージ上に導きました。
「俺達の姿を見て記憶が蘇ったのなら、何かしらの切っ掛けでエリーズの記憶も蘇る可能性が充分にある。そこでアンリ殿から前世の話を聞いたりふたりで何かしらをしたり、色々な角度で刺激を与えてみるべきだと思うんだよ」
「サンフォエル、様……!」
「それで記憶が蘇ったら、こちらは身をひく。それで記憶が戻らなかったり何かしらの変化が起きなかったりしたら、あちらに諦めてもらう。そう考えているんだけど、エリーズ。どうかな?」
ディミトリ様の両目が、柔らかく細まりました。
「前者だった場合は、事情が事情だ。結婚せずにパイプだけ作れるようにすればいい。後者だった場合は、納得できるまで待っているから、それから結婚すればいい。……細かいことは考えなくていいよ。俺としてはそういた方がいいと思うんだけど、どうかな?」
「…………よろしい、のでしょうか……?」
「もちろん。むしろ遠慮されたら困ることだからね、ありのままの気持ちを教えて欲しい。エリーズ、どうかな?」
「……………………はい。そう、させていただきたいと思います」
もし前世の記憶があるのなら。ソレが蘇った時わたしは何を感じ、何を思うのか。
それを知りたくて、首を横ではなく縦に動かしました。
「オーケー。じゃあこの婚約は一旦、白紙――休止にしておこう。エリーズ、アンリ殿も。良い結果が出るといいね」
「痛み入ります……! サンフォエル様、痛み入ります……!」
「ご配慮、感謝いたします」
さすが次期商会頭――。ディミトリ様はお人が出来ている――。器が大きい――。
そんなお声と万雷の拍手の中わたしとアンリ様は一礼を行い、こうして突如、これまでとは違う日常が幕を開けることとなったのでした――。
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