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第8話 エドゥアルとカーラを襲い始める、チクチク攻撃 エドゥアル視点(2)
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今回のメニューは、豚肉とピスタチオのテリーヌ、季節の野菜3種とブラックオリーブのサラダ、オニオングラタンスープ、バゲット。俺の好物が揃っている。
今日はそれをカーラと共に嘲笑いつつ味わい、至福のひと時を過ごす予定だった。けれど――
「エドゥアルさん……っ。こちらのテリーヌも野菜のサラダも、美味しいですね……っ」
――隣にいるのは、ソフィー。今はもう、金しか魅力がなくなった女。
それは、地獄と言っても過言じゃない。前日から心待ちにしていた時間は、最低なものに変貌してしまった。
((くそ……っ。くそ……っっ。折角カーラがいるのに、なにが面白くてこんな奴と並ばないといけないんだよ……!!))
そのせいで、ほら見ろ! カーラだってイラついているじゃないかっ!
ソフィーっっ! お前は気付いていないだろうがな! お前が笑うたびに、カーラの口元がヒクヒクくしているんだよ!
おまけに……っ。
「うんうんっ! やっぱ、エドゥアルとソフィーちゃんが並ぶと映えるよな~。よくよく考えてみたらさ、そこは固定でいいんじゃないか?」
「そうですね。お二人は婚約者なんですし、今後はそうしましょう」
「……俺も異議はない。カーラ・オグタルさんは、どう思う?」
「わっ、わたくしですかっ!? え、あっ。そっ、そうですねっ! ええっ、ええっっ! 皆様のご意見に、激しく同意ですわっっ‼」
ヤツらは余計な気を遣いやがって、更に状況を悪化させやがる! そのせいでカーラのストレスはガンガン溜まっているし、
「い、いやっ、気持ちは有難いけど遠慮するっ。ここにいるメンバーは全員大事な存在で、全員と隣で食べたいと思っているからな!」
「「「でもよ~(ですが)(……しかしだな)」」」
「お前らも大切なんだよっ。いっ、いちいち言わせるなってっ! 恥ずかしいだろっ!」
俺はこんな風に、何度も何度も……。必死に言い訳を探さないといけなくて、終始落ち着かない。食べ物の味を、感じる余裕がない。
((…………こんなにも、淡白で……。疲れる食事は、生まれて初めてだ…………))
カーラがこの場にいなければ、まだマシだった。
愛している人の前でこうしなければならないことが、とにかくキツイ。ピキピキとなってゆく様子を見ていたら、罪悪感で胃が痛くなる。ズキズキと激しく痛んできて、その影響で吐きそうになってくる。
《か、カーラ。あと少しだけ、我慢してくれ。2日後にはデートが出来て、この分までたっぷり愛を注ぐから……!》
とりあえず目線で気持ちを伝え、俺はもう無心で食事をするようにした。
ソフィーに何を言われても、返事は『そうだな』や『ああ』。にこやかな表情を作り、条件反射のように返す。
地獄のような、この時間。ソレを極力ダメージを受けずに乗り越えられるよう、俺は淡々と相手をし続けて――
「エドゥアルさん、お願いがあります。あーん、をしても構いませんか?」
「ああ」
――やがて、ソレが……。
更なる地獄を、招いてしまったのだった…………。
今日はそれをカーラと共に嘲笑いつつ味わい、至福のひと時を過ごす予定だった。けれど――
「エドゥアルさん……っ。こちらのテリーヌも野菜のサラダも、美味しいですね……っ」
――隣にいるのは、ソフィー。今はもう、金しか魅力がなくなった女。
それは、地獄と言っても過言じゃない。前日から心待ちにしていた時間は、最低なものに変貌してしまった。
((くそ……っ。くそ……っっ。折角カーラがいるのに、なにが面白くてこんな奴と並ばないといけないんだよ……!!))
そのせいで、ほら見ろ! カーラだってイラついているじゃないかっ!
ソフィーっっ! お前は気付いていないだろうがな! お前が笑うたびに、カーラの口元がヒクヒクくしているんだよ!
おまけに……っ。
「うんうんっ! やっぱ、エドゥアルとソフィーちゃんが並ぶと映えるよな~。よくよく考えてみたらさ、そこは固定でいいんじゃないか?」
「そうですね。お二人は婚約者なんですし、今後はそうしましょう」
「……俺も異議はない。カーラ・オグタルさんは、どう思う?」
「わっ、わたくしですかっ!? え、あっ。そっ、そうですねっ! ええっ、ええっっ! 皆様のご意見に、激しく同意ですわっっ‼」
ヤツらは余計な気を遣いやがって、更に状況を悪化させやがる! そのせいでカーラのストレスはガンガン溜まっているし、
「い、いやっ、気持ちは有難いけど遠慮するっ。ここにいるメンバーは全員大事な存在で、全員と隣で食べたいと思っているからな!」
「「「でもよ~(ですが)(……しかしだな)」」」
「お前らも大切なんだよっ。いっ、いちいち言わせるなってっ! 恥ずかしいだろっ!」
俺はこんな風に、何度も何度も……。必死に言い訳を探さないといけなくて、終始落ち着かない。食べ物の味を、感じる余裕がない。
((…………こんなにも、淡白で……。疲れる食事は、生まれて初めてだ…………))
カーラがこの場にいなければ、まだマシだった。
愛している人の前でこうしなければならないことが、とにかくキツイ。ピキピキとなってゆく様子を見ていたら、罪悪感で胃が痛くなる。ズキズキと激しく痛んできて、その影響で吐きそうになってくる。
《か、カーラ。あと少しだけ、我慢してくれ。2日後にはデートが出来て、この分までたっぷり愛を注ぐから……!》
とりあえず目線で気持ちを伝え、俺はもう無心で食事をするようにした。
ソフィーに何を言われても、返事は『そうだな』や『ああ』。にこやかな表情を作り、条件反射のように返す。
地獄のような、この時間。ソレを極力ダメージを受けずに乗り越えられるよう、俺は淡々と相手をし続けて――
「エドゥアルさん、お願いがあります。あーん、をしても構いませんか?」
「ああ」
――やがて、ソレが……。
更なる地獄を、招いてしまったのだった…………。
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