断罪寸前の悪役令嬢になってしまいました

柚木ゆず

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第15話 大事な話 ロズリーヌ視点

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「単刀直入に申し上げます。結婚を前提とした交際を、検討してはいただけないでしょうか?」

 応接室にて始まった、大事なお話。その内容は、信じられないものでした。
 交際……!? オディロン様が、わたしと……!?

「り、理由を……。お教えていただいても……」
「もちろんです。……俺は貴方の、人柄に惹かれたんです」

『タチアナさんに薬を盛られた方、ゼナイド様と仰っていましたよね? その方の容態は、いかがなのでしょうか?』

『ご自身のお考えもあって表舞台に出ることはなく知名度もありませんが、父が実力は確かだと言っていました。この件が落ち着いたら父に連絡を取ってもらいますね』

『本来は即座に動き出すべきなのですが、こちらにはタイムリミットがあります。ワフェルズ様、申し訳ありません。優先させていただきます』


 祖国へと向かう馬車の中での言及と、その後の発言。


『すみません! 少々お時間をいただきます!!』

『お役に立ててよかったです。先ほど申し上げたように、身体には一切異常はないのでご安心を。久し振りのお買い物、楽しんでくださいね』

 苦しんでいる人を見つけた際の行動と、その後の発言。


 そういったものを傍で見て、聞いているうちに……。特別な感情が、芽生えていた、そうです。

「あの状況下で、他者の心配をできるだなんて。自分がロズリーヌ様の立場なら、きっと、そう振る舞えてはいないでしょう。……『なんて素敵な方なんだ』、と感じていて。その想いはやがて、『こんな人と一緒に歩んでいけたら幸せだろうな』へと変化しました」
「………………」
「事件が解決してまもなく、二つ目の感情に気付きまして。気付いたら、時間に比例して更に大きくなっていきました。……『好き』という感情に時間は関係ないのだと、初めて気が付きましたよ」
「………………オディロン、さま……」
「ロズリーヌ様。貴方の夢であり御意思は、すべて尊重させていただきます。お約束します」

 きっと、以前わたしがお伝えしたことを思い返してくださっているのでしょう。両方の瞼が静かにおり、ゆっくりと上がりました。

「ですので、交際を検討してはいただけないでしょうか?」

 真摯な眼差しと、真摯なお声。
 清らかなものが、真っすぐわたしへとやって来て。

((…………))

 わたしは――

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