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第10話 真実はどっち? ロズリーヌ視点(3)

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「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 猫のニムール。その言葉を、口にした直後でした。
 鼓膜が破れんばかりの悲鳴があがり、タチアナさんの身体には――わたしの身体に、あっという間に鳥肌が立ちました。

「……オディロン様が教えてくださったのですが、タチアナさんはその名前にトラウマがあるそうですね? タチアナさんではないのにタチアナさんのトラウマに反応するのは、なぜなのでしょうか?」
「しまっ! ぁっ、ちがっ。な、なんのことですか……? トラウマがあるのは、わたしです」
「ロズリーヌに、トラウマがある? 先程仰っていた記憶以外は、忘れてしまっているのではなかったのですか?」
「きゅっ、急に思い出したんです! きっと、ワードが引き金になったんですっ! 幼い頃に読んで怖かった! あの時の恐怖がっ、蘇った! たった今、思い出したんで――ぁ……」
「盗み見た情報を、思い出してくれたみたいですね? そう。わたしは怖い話が大の苦手で、そういった本はまったく読まないんですよ」

 本人のはずなのに、記憶が蘇ったと言っているのに、有り得ない説明をした。加えて、その前後の『しまっ!』や『ぁ……』。
 本人ではない人の、言動ですね。

「ちなみに、『猫のニムール』――」
「きゃああああ!?」
「――この件に関しては出発前にオディロン様が詳細を記した紙をヴァレール様に渡していて、その紙は皆様の前にあります」

『これは正義のための行動、本来ならば当たり前のように行われなければならぬもの。こちらのことは気にせず行け』
『感謝します。ロズリーヌ様――少々お待ちを。…………お待たせいたしました、まいりましょう』

 あの時渡していたものが、そちら。
 オディロン様はあらゆる事態を想定し、こちらの武器となる可能性があるものを用意してくださっていました。

「オディロン様と自称ロズリーヌは一面識もなかった。それは自称ロズリーヌが断言したのに、その人のトラウマを知っていた。それはつまり、その身体の中身はタチアナさんだという証左となります」
「ち、ちが……。ちが……」
「加えてオディロン様によると、その件はタチアナさんの日記などを調べたら瞭然となるようです。……皆様。ご覧の通り明らかにおかしな点があるのですから、ルレーラ侯爵邸の強制捜査は可能ですよね?」

 そのお返事は、もちろんイエス。お屋敷が隅々まで調べられることとなりました。

「違う!! 違うっ!! ちがううううううううううううううううう!! わたくしはロズリーヌなのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
((……これによって、入れ替わりが証明されることとなるのでしょう。あとは……))

 わたしの身体が元になる方法が、見つかるかどうか。
 どう、なのでしょうか……?






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