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第10話 真実はどっち? ロズリーヌ視点(1)

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「……ロズリーヌ――ロズリーヌ・サンドローブを主張する、タチアナ・ルレーラの姿を持つ者よ。ロズリーヌの姿を持つ、ロズリーヌを主張し始める者よこれから我々の出す質問に、5秒以内に答え始めるように」
「5秒を越した場合は全て、答えることができない、とみなします」
「承知いたしました」「承知いたしました」

 牢屋がある場所に着いた、一日後。わたしとタチアナさんは裁判所にいて、3人の男性と2人の女性に――質疑応答を行う処刑関係者5名に、静かに頷きを返しました。
 あちらが否定し明確な証拠がない以上、質問とその回答で判断するしかない。
 そこで『わたし』『タチアナさん』『わたし』『タチアナさん』の順番で答え、見極めていくこととなりました。

「入れ替わりが発生するまで、家族と過ごしていたとのこと。その際の出来事を詳しく教えてください」
「畏まりました」

 この場で今、こうして発言できる喜び。オディロン様やヴァレール様やアンナさんなど関係者全員への感謝を胸に、わたしは一歩前に出ました。

「その日は、いつも通り朝6時に起きて――」

 起きたあと、何を食べたか? 誰とどこへ向かって何をしていたか? 帰って来たあとは何をして、その直前までどこで誰とどんなことを話していたのか?
 そちらを事細かにお伝えしました。

「……………………これは、ここ、ですね?」
「……そうですね。ここは、これ、と」
「…………………事前に家族から得た情報と、すべてが一致していますね。では、次はそちらに質問を行います」

 実際に行ったことですので、間違うはずがありません。5名の方々は目の前ある書類を確認し合い、今度は5人分の視線がタチアナさんに注がれました。

「貴方には、その前の話を伺いましょうか。前日の一日の行動を教えてください」
「………………申し訳ございません。わかり、ません」

 記憶の混乱がまだ続いているらしく、一向に思い出せない――。覚えているのは、一人称、家族の名前、医師免許の番号だけ――。
 一歩前に出たタチアナさんは、焦った様子を見せながら俯きました。

「……ただ……」
「ただ? なんですか?」
「時間の経過で、徐々に回復していっているのかも、しれません。ふと頭の中に……5年前の、記憶が蘇ってきました」

 5月7日。その日は医院にてお父様のお手伝いをしていて、その際に患者様のお子さんが転んでけがをしてしまった。その治療をして、男の子に『ありがとう!』と言われたことがとっても嬉しかった。
 という思い出を、戸惑う素振りを交えて口にしました。

((……オディロン様が、仰っていた通りになりましたね))

 記憶がないフリをし続け、小出しにして『日記帳』で得た知識を出していく。そうやって時間を稼ぎ、その間にどうにかして家族に窮地を報せ、何かしらをしてくれるのを待とうとするはず。
 移動中にそう予想されていて、その通りのことが起こりました。

((いくらわたしが正確に語っても、事が事だけに回復の兆しが感じられたらすぐには結論を出せなくなります。やられた……。とわたし達が思っていると、思われているのでしょうね))

 タチアナさん。思い通りには、なりませんよ?


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