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第8話 現場に着くと オディロン視点(1)

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「タチアナが居なくなった!? どうして……」
「円滑に突入できるようにするために、オーナーにだけはこの件を伝えていたんです。そうしたらそれを彼女達が聞いていて、自分達で捕らえて手柄にしようとしてみたいでして……。恐らくそのやり取りを偶然耳にして、逃走したものと思われます……」

 宿屋『ラックローズ』に着くと、建物の前で男性が――アンナ殿のご子息ニック殿が顔面蒼白で手を挙げていて、時折どもりながら事情を説明してくださった。
 ……なるほど。そういうことか。

「現在、総出で捜索を行う準備を整えております。是非ご協力させてください!」
「ありがとうございます、そちらはお気持ちだけいただいております。そ――」
「彼女達への罰の軽減目的などではございません! 他意はありませんのでどうか許可をください!!」
「いえ、思われているような理由があってのリアクションではありませんよ。総出をしていただく必要がないのですよ」

 万が一に備え、すでに『ラーガットル』の出入り口はすべて固めている。万全の包囲網が完成している。
 その広く敷いた『網』を狭めていけば、タチアナは引っかかってくれるのだ。

「もう一度確認します。タチアナ――逃走した女は、金品を持っていないのですよね?」
「は、はい。所持品と思われるものは全て、室内に置かれたままとなっていました」
「その情報があれば、充分です。ご協力感謝します。貴方様へのお礼は後日させていただきますね」

 万全の状態を作っているとはいえ、いつまでもここには居られない。会話を切り上げて控えている者達に指示を出し、乗って来た馬車を各所の連絡用に走らせ、追跡をするため4人を連れて走り出した。

「時間を鑑みると、そこまで遠くには行っていないはず。我々は裏道を中心に捜索する」
「「「「「御意!」」」」」

 ロズリーヌ様に伺った情報によると、あの身体は運動能力は高くない。むしろスタミナなどは平均以下で、必死になってもそこまで走れない。
 ならばルートは、入り組んだ裏道を使う。
 そう踏んで、怪しい場所を徹底的に調べ始め――

「「「「「っ!? オディロン様!!」」」」」
「あ、ああ。あの服と帽子、間違いない」

 ――僅か5分弱。意外な形で、タチアナを発見することができたのだった。

「ぁ、がぁぁ……!? ぁあああ……!? ぁあああああああああ……!!」
((もがき苦しみながら、道の端で倒れているだなんて……。逃走中に、何があったんだ……!?))


 
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