14 / 33
第5話 悪女の行方は ロズリーヌ視点(3)
しおりを挟む
「トマ先生のところの、ロズリーヌちゃん。ロズリーヌちゃん先生。背の高さも声も全然違うけれど、あたしにはそうとしか思えないんですよ」
万が一の事態を避けるべく、被り物や眼鏡で顔を隠しているわたし。顔が見えていない上に、あらゆる部分がタチアナさんなわたし。
アンナさんご自身も戸惑いながら、わたしの手を掴みました。
「苦しんでいる時の声のかけ方とか、雰囲気とか。あれはあたしがよく知っているソレだった。ロズリーヌちゃん先生がしてくれたものだった。そう、なのよね……? ロズリーヌちゃん先生、なんですよね……?」
「…………は、はい。そうです。ロズリーヌです」
「やっぱりそうだった! ど、どうなっているんです……? まるで別人みたいになってしまって……」
(そうなんです。この身体は、別の人の身体なんです)
今はわたし=ロズリーヌだと知ってくれている方が増えたら、もしもの時に良い影響をもたしてくれるかもしれない。
そんな思いで、かなりの早口で事情の説明をさせていただきました。
(急に小声になったのは、この身体が隣国の罪人のものだからだったのです。今はこの街のどこかにいる、この身体の持ち主を探しているんです)
(そ、そうだったんですね……。……そういうことなら……)
(? アンナさん?)(???)
(ふふ、ようやく恩返しができますよ)
傍にきてくてくださったオディロン様と共に首を傾げていると――息子様を呼んで耳打ちをして、そうすると息子様はオディロン様が持っていた自画像を貸してほしいと仰り、お渡しするや大急ぎでどこかへと走っていってしまわれました。
(?? どうされたのでしょうか……?)
(この絵にそっくりな姿をした人が居たと思ったら、すぐに報告して欲しい。この街にいる知り合い全員に、伝えにいってもらったんですよ)
昔からのご友人から最近のご友人まで、合わせて100名以上。そんなにも沢山の方々に、協力の要請を行ってくださっていました……!
(81年も生きていると、自然と顔が広くなっていくんですよ。いくら広いといえど、この数で動いたら手掛かりくらいは見つかりますよ)
(はいっ、はい……っ! ありがとうございます……!!)
(ロズリーヌちゃん先生が優しい人だから、そうしたくなるんですよ。そんなふざけた女の思い通りにはさせない。私も全力で援護射撃をしますよ!)
(感謝いたします!!)
(わたくしもロズリーヌ様をお救いしたいと、強く思っておりました。ご協力感謝いたします!)
こんなことって、あるんですね。
ひょんなことから味方が沢山増えることになり、わたし達は自然と笑みを浮かべながら、聞き込み調査を始めたのでした。
万が一の事態を避けるべく、被り物や眼鏡で顔を隠しているわたし。顔が見えていない上に、あらゆる部分がタチアナさんなわたし。
アンナさんご自身も戸惑いながら、わたしの手を掴みました。
「苦しんでいる時の声のかけ方とか、雰囲気とか。あれはあたしがよく知っているソレだった。ロズリーヌちゃん先生がしてくれたものだった。そう、なのよね……? ロズリーヌちゃん先生、なんですよね……?」
「…………は、はい。そうです。ロズリーヌです」
「やっぱりそうだった! ど、どうなっているんです……? まるで別人みたいになってしまって……」
(そうなんです。この身体は、別の人の身体なんです)
今はわたし=ロズリーヌだと知ってくれている方が増えたら、もしもの時に良い影響をもたしてくれるかもしれない。
そんな思いで、かなりの早口で事情の説明をさせていただきました。
(急に小声になったのは、この身体が隣国の罪人のものだからだったのです。今はこの街のどこかにいる、この身体の持ち主を探しているんです)
(そ、そうだったんですね……。……そういうことなら……)
(? アンナさん?)(???)
(ふふ、ようやく恩返しができますよ)
傍にきてくてくださったオディロン様と共に首を傾げていると――息子様を呼んで耳打ちをして、そうすると息子様はオディロン様が持っていた自画像を貸してほしいと仰り、お渡しするや大急ぎでどこかへと走っていってしまわれました。
(?? どうされたのでしょうか……?)
(この絵にそっくりな姿をした人が居たと思ったら、すぐに報告して欲しい。この街にいる知り合い全員に、伝えにいってもらったんですよ)
昔からのご友人から最近のご友人まで、合わせて100名以上。そんなにも沢山の方々に、協力の要請を行ってくださっていました……!
(81年も生きていると、自然と顔が広くなっていくんですよ。いくら広いといえど、この数で動いたら手掛かりくらいは見つかりますよ)
(はいっ、はい……っ! ありがとうございます……!!)
(ロズリーヌちゃん先生が優しい人だから、そうしたくなるんですよ。そんなふざけた女の思い通りにはさせない。私も全力で援護射撃をしますよ!)
(感謝いたします!!)
(わたくしもロズリーヌ様をお救いしたいと、強く思っておりました。ご協力感謝いたします!)
こんなことって、あるんですね。
ひょんなことから味方が沢山増えることになり、わたし達は自然と笑みを浮かべながら、聞き込み調査を始めたのでした。
38
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
【完結】没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら
Rohdea
恋愛
婚期を逃し、没落寸前の貧乏男爵令嬢のアリスは、
ある日、父親から結婚相手を紹介される。
そのお相手は、この国の王女殿下の護衛騎士だったギルバート。
彼は最近、とある事情で王女の護衛騎士を辞めて実家の爵位を継いでいた。
そんな彼が何故、借金の肩代わりをしてまで私と結婚を……?
と思ったら、
どうやら、彼は“お飾りの妻”を求めていたらしい。
(なるほど……そういう事だったのね)
彼の事情を理解した(つもり)のアリスは、その結婚を受け入れる事にした。
そうして始まった二人の“白い結婚”生活……これは思っていたよりうまくいっている?
と、思ったものの、
何故かギルバートの元、主人でもあり、
彼の想い人である(はずの)王女殿下が妙な動きをし始めて……
ざまぁを回避したい王子は婚約者を溺愛しています
宇水涼麻
恋愛
春の学生食堂で、可愛らしい女の子とその取り巻きたちは、一つのテーブルに向かった。
そこには、ファリアリス公爵令嬢がいた。
「ファリアリス様、ディック様との婚約を破棄してください!」
いきなりの横暴な要求に、ファリアリスは訝しみながらも、淑女として、可憐に凛々しく対応していく。
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
もふきゅな
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる