断罪寸前の悪役令嬢になってしまいました

柚木ゆず

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第2話 移動中に ロズリーヌ視点(1)

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「ロズリーヌ様、よろしければどうぞ」
「あ、ありがとうございます。いただきます」

 馬車が動き始めて、数分が経った頃でした。同行されている従者兼護衛の方にいくつかのご指示を出された後、ゼスルッズ様がお茶と小さな焼き菓子を用意してくださりました。

「移動中はなにもできません。焦っても仕方がないですしね、のんびりしましょう」

 ごくりとお茶を飲んで、笑顔でもぐもぐとマドレーヌを召し上がるゼスルッズ様。
 この方はこうやって、わたしの中にある緊張感や罪悪感を薄めようとしてくださっているんですよね。本当に、お優しい方です。

「俺は甘いものが大好きで、車内には色々なお菓子を置いてあるんです。どんどん召し上がってくださいね」
「はい。痛み入ります」
「ちなみにそちらも含め、お菓子はすべて自家製――ウチのシェフが腕によりをかけて作ったものなんですよ。彼はコンテストに出場していないだけで、実力は三ツ星クラス。頬っぺたが落ちますよ」
「そうなのですね。 ………………っ! 美味しい……!」

 マドレーヌはしっとりで、ほんのりオレンジの香りが鼻孔をくすぐる。上品さと素朴さがほどよく混ざり合っていて、まさに『癖になる』お味です。

「よかった。こちらが一番のオススメで、二番目はこちらなんです。是非どうぞ」
「いただだきます。…………わぁっ。サクサクです……!」

 次にいただいたのは、チョコレート味のシガーロール。食感はとても軽く爽やかで、チョコはしつこくないのにしっかりと存在感があります。
 こちらも同じく『いくらでも食べてしまえる』と思える逸品で、お言葉に甘えて3本もいただいてしまいました。

「ご満足いただけて、なによりです。お茶のお変わりはいかがですか?」
「いただきます。このお茶も、とても美味しいです。初めて飲んだのですが、喉を抜ける感覚が好きです」
「それはよかった。こちらはウチの領内で採れる茶葉を、少しだけ特殊な方法で発酵させたものなんです。栄養豊富でリラックスさせる効果があって、ゼスルッズ家ではみんなよく飲んでいるんですよ」
「そうだったのですね。知れてよかったです」

 美味しいお菓子。美味しいお茶。そしてなにより、優しい笑顔と穏やかな声。
 それらによってわたしの心はすっかりリラックスしていて、自然と笑顔が生まれていました。ですので時間に比例して会話も盛り上がっていき、3時間ほどお喋りした頃だったと思います。
 ゼスルッズ様が話題にあげたことで、あることを思い出して――


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