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第10話 なぜ……!? ロドルフ視点(6)

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「ふ、復讐を誓っている!? じょ、冗談を――ご冗談をっ! 猛省していますっ! すっかり生まれ変わってます!!」

 本心を悟られてしまったら、何もかも台無しになる。そこですぐさま、首を大きくはっきりと振って――

「言い訳は、何の意味も持ちませんよ。……かつてない程の怒りを、理不尽に覚えているからなのでしょうね? 感情が顔に出ていますよ」
「え……? なにを言って――ぁっ!!」

 言われて、自分で顔を触ってみて、ようやく気が付いた。俺は無意識的にアーロンを睨みつけ、口角を吊り上げていたことに。

「ち、ちが……っ。これは違う……っ! 違うんです……っ。謝罪のっ、そうっ! 謝罪の気持ちの表れなんです!!」
「殺意を漲らせて行う謝罪など、この国には――他国にも、ありませんよ。……これは、複数回の実行が必要のようですね」

 おまけに俺は、殺気まで漏らしてしまっていたらしく……。アーロンは大きくため息をつき、ぁぁあああああああああ!! またっ! 俺は後ろ手に拘束され、馬車に放り込まれてしまった!!

「兄上。貴方からそういった感情が完全に消えるまで、アレを繰り返します。頑張ってくださいね」
「むっ、無理だぁ!! これ以上は死ぬっ! しぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「死にませんよ。先ほど申し上げたように、対策を施した上で行っておりますのでね」
「それでもっ、そうでなくとも!! 痛いんだっ、苦しいんだ!! どっ、どうしてそんな思いをしなくちゃいけないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
「……もしマリー様に対応する手段がなければ、社交界で大変な目に遭う羽目になっていたから。もしマリー様に回避する能力がなければ、あのお顔を失う羽目になっていたから。一切の非がない、それどころか再三慮ってくださった人に、あのような真似をしたから。それが理由ですよ」

 これまでも散々鋭かったが、それ以上に鋭い目付きになって……。
 ぁ、ぁぁぁ……。
 俺は再びあの場所に戻されて、担ぎ上げられた……。

「や、やめてくれぇぇっ! やめてくれぇぇぇ!! おねがいだぁぁぁぁ!!」
「繰り返しますが、言葉では分からない人ですので不可能です。怨むのであれば、そのような性質を持つご自身を怨んでください」

 そうして俺は、また投げられて…………。大の字になって……。

 でも……。まだ終わらなくて……。

 3回目、4回目、5回目と続いて……。
 やがて…………。やがて俺は――

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