33 / 37
番外編その3 1年後~サミュエルからのサプライズ~ 俯瞰視点(2)
しおりを挟む
「ヴィクトリア、今夜はもう一つお願いがあるんだ。俺が合図を出すまで、これをつけておいて欲しいんだよ」
馬車の停止を合図にして、サミュエルが懐から取り出したもの――。それは、細めで長い黒の布。目隠し、でした。
「何度も我が儘を頼んで申し訳ない。お願いします」
「分かりました。サミュエル様、私はワクワクしていますよ? 楽しいことを企画してくださり、ありがとうございます」
お詫びに対してヴィクトリアははにかみを返し、目隠しを巻いて視覚を遮ります。そうするとすぐにサミュエルがお姫様抱っこにして、どこかへの移動が始まります。
((……ここ……。潮の香りと、波の音がする……))
海辺に建つホテルで感じたものと似た香りと、遠くで聞こえる穏やかな音。それらをヴィクトリアは、嗅覚と聴覚で感じ取りました。
((だとしたら、ここは海で……。キュキュッって、音がするようになって……。潮の香りと波の音が、濃く大きくなったから…………。砂浜に向かっているのかな……?))
その予想は、正解。2人が今いるのは、『ブリエの砂浜』と呼ばれる場所。サミュエルはキメの細かい砂の上をゆっくりと慎重に、ヴィクトリアが極力揺れないようにして進み――。そんな時間が5~6分ほど続いて、前進がストップ。
「お待たせしました。到着したよ」
そんな言葉と共にゆっくりとヴィクトリアを下ろし、
「ありがとうございます。サミュエル様。丁寧に運んでいただけて、幸せでした」
「そう言ってもらえると、嬉しいよ。実はね、ここにある景色を見てもらいたかったんだ。……失礼します」
サミュエルは、ヴィクトリアの視覚を遮っている目隠しを解き始めます。
しゅるしゅる、しゅる。ふわり。
そうして黒色の布が優しく解かれ、ヴィクトリアは静かに両方の瞼を上げます。すると――
「わぁ。綺麗……っ」
そこにあったのは、幻想的な世界。
空に浮かぶ、美しい満月。大きく真ん丸な月の光に照らされ、波打つたびにキラキラと輝く海。
そんな光景が、ヴィクトリアの目に前に広がっていたのです。
馬車の停止を合図にして、サミュエルが懐から取り出したもの――。それは、細めで長い黒の布。目隠し、でした。
「何度も我が儘を頼んで申し訳ない。お願いします」
「分かりました。サミュエル様、私はワクワクしていますよ? 楽しいことを企画してくださり、ありがとうございます」
お詫びに対してヴィクトリアははにかみを返し、目隠しを巻いて視覚を遮ります。そうするとすぐにサミュエルがお姫様抱っこにして、どこかへの移動が始まります。
((……ここ……。潮の香りと、波の音がする……))
海辺に建つホテルで感じたものと似た香りと、遠くで聞こえる穏やかな音。それらをヴィクトリアは、嗅覚と聴覚で感じ取りました。
((だとしたら、ここは海で……。キュキュッって、音がするようになって……。潮の香りと波の音が、濃く大きくなったから…………。砂浜に向かっているのかな……?))
その予想は、正解。2人が今いるのは、『ブリエの砂浜』と呼ばれる場所。サミュエルはキメの細かい砂の上をゆっくりと慎重に、ヴィクトリアが極力揺れないようにして進み――。そんな時間が5~6分ほど続いて、前進がストップ。
「お待たせしました。到着したよ」
そんな言葉と共にゆっくりとヴィクトリアを下ろし、
「ありがとうございます。サミュエル様。丁寧に運んでいただけて、幸せでした」
「そう言ってもらえると、嬉しいよ。実はね、ここにある景色を見てもらいたかったんだ。……失礼します」
サミュエルは、ヴィクトリアの視覚を遮っている目隠しを解き始めます。
しゅるしゅる、しゅる。ふわり。
そうして黒色の布が優しく解かれ、ヴィクトリアは静かに両方の瞼を上げます。すると――
「わぁ。綺麗……っ」
そこにあったのは、幻想的な世界。
空に浮かぶ、美しい満月。大きく真ん丸な月の光に照らされ、波打つたびにキラキラと輝く海。
そんな光景が、ヴィクトリアの目に前に広がっていたのです。
17
お気に入りに追加
2,956
あなたにおすすめの小説
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
妹しか興味がない両親と欲しがりな妹は、我が家が没落することを知らないようです
香木あかり
恋愛
伯爵令嬢のサラは、妹ティナにしか興味がない両親と欲しがりな妹に嫌気がさしていた。
ある日、ティナがサラの婚約者を奪おうとしていることを知り、我慢の限界に達する。
ようやくこの家を出られると思っていましたのに……。またティナに奪われるのかしら?
……なんてね、奪われるのも計画通りなんですけれど。
財産も婚約者も全てティナに差し上げます。
もうすぐこの家は没落するのだから。
※複数サイトで掲載中です
「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。
主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。
小説家になろう様でも投稿しています。
妹は私から奪った気でいますが、墓穴を掘っただけでした。私は溺愛されました。どっちがバカかなぁ~?
百谷シカ
恋愛
「お姉様はバカよ! 女なら愛される努力をしなくちゃ♪」
妹のアラベラが私を高らかに嘲笑った。
私はカーニー伯爵令嬢ヒラリー・コンシダイン。
「殿方に口答えするなんて言語道断! ただ可愛く笑っていればいいの!!」
ぶりっ子の妹は、実はこんな女。
私は口答えを理由に婚約を破棄されて、妹が私の元婚約者と結婚する。
「本当は悔しいくせに! 素直に泣いたらぁ~?」
「いえ。そんなくだらない理由で乗り換える殿方なんて願い下げよ」
「はあっ!? そういうところが淑女失格なのよ? バーカ」
淑女失格の烙印を捺された私は、寄宿学校へとぶち込まれた。
そこで出会った哲学の教授アルジャノン・クロフト氏。
彼は婚約者に裏切られ学問一筋の人生を選んだドウェイン伯爵その人だった。
「ヒラリー……君こそが人生の答えだ!!」
「えっ?」
で、惚れられてしまったのですが。
その頃、既に転落し始めていた妹の噂が届く。
あー、ほら。言わんこっちゃない。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
大公殿下と結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい
Ruhuna
恋愛
容姿端麗、才色兼備の姉が実は私を呪っていたらしい
そんなこととは知らずに大公殿下に愛される日々を穏やかに過ごす
3/22 完結予定
3/18 ランキング1位 ありがとうございます
私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪
百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。
でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。
誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。
両親はひたすらに妹をスルー。
「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」
「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」
無理よ。
だって私、大公様の妻になるんだもの。
大忙しよ。
お久しぶりですね、元婚約者様。わたしを捨てて幸せになれましたか?
柚木ゆず
恋愛
こんなことがあるなんて、予想外でした。
わたしが伯爵令嬢ミント・ロヴィックという名前と立場を失う原因となった、8年前の婚約破棄。当時わたしを裏切った人と、偶然出会いました。
元婚約者のレオナルド様。貴方様は『お前がいると不幸になる』と言い出し、理不尽な形でわたしとの関係を絶ちましたよね?
あのあと。貴方様はわたしを捨てて、幸せになれましたか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる