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第12話 6か月後の、悲劇 ジュリア視点(1)

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((や、やった……。やった……! わたしは、乗り越えたわ…………!))

 午後4時過ぎ。クールダウンのストレッチを済ませたわたしは、感動の涙を流して両手を突き上げていた。
 エマによるトレーニングは、あの子が式を挙げる前日まで――6か月間で、今日がちょうど6か月目。ついに、新たな地獄から解き放たれる日が来たの……!!

「お疲れ様です、お姉様っ。6か月間ついてきてくださり、ありがとうござ――」
「それはこちらの台詞よっ! ありがとうエマっ! 健康を考えてメニューを組んでくれてありがとうっ! 感謝しているわ!」

 ――どうして余計なことをするのよ!!
 ――もういいから放っておきなさいよ!!
 ――また邪魔をして……! そんなにもわたしを苦しめたいの!?
 ――許せない……! 許せない……!!

 トレーニングが始まってから、ううん。薬を持ってきた時から、いつもこの子を怨んでいた。
 でも。そんな怒りは、開放感が跡形もなく消し去った。
 今はとにかく、何もかもが愛おしい。『怒』も『哀』もなくて、あるのは『喜』と『楽』、そして『愛』だけなの!

「エマ。妹が貴方で本当によかった。貴方はわたしの、誇りよ」
「っっ。ジュリア、お姉様……っ」
「今までありがとう。……明日は結婚式があって、だから、新しい生活が始まる。あちらでも、お幸せにね」

 小さな体をギュッと抱き締め、柔らかな頬に何度も頬ずりをする。
 今のわたしにとって、貴方とのサヨナラは寂しいわ。だけどそれが、貴方の望みなんですものね。笑顔で見送るわ。

「ウチとベクザー侯爵邸は離れているし、エマはいずれ侯爵夫人になる。それらの理由で滅多に会えなくなると思うけれど、心はいつも一緒よ。何かつらいことがあればわたしを思い出して、前を向いて頂戴ね。そして……。それでも耐えられない時は、いつでも戻ってきてね。全力で力になるから……っ」
「お姉様、ありがとうございますっ! ただ、その……。お伝えしにくいのですが……」
「ん? なあに?」
「今後も私は、定期的にお姉様を訪ねますよ? 最低でも一週間に一度は、このお屋敷に戻ります」
「ヴえ?」

 おもわず、変な声が出てしまった。
 ど、どういうこと……? どうしてそうなるの……?
 たまらずわたしはその思いを口にして、そうしたら…………。信じられない言葉が、返ってきたのだった……。

「使用しているラボが近くにありますし、それになにより――。お姉様の体調確認および最新のトレーニングカリキュラムの提示と、あのお団子をお届けする必要がありますので。比較的短いスパンで、ティアゴ様と共にこちらに戻ることになるのですよ」

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