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エピローグ サーラとノアのその後 サーラ視点
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「…………はふぅ。ノアのもふもふは、最高の癒しよねぇ」
婚約破棄やお父様達の透明人間化、殿下やアリス様達のアレコレ。激動の日から、一週間後。私は一週間前と同じように、ふかふかの体をぎゅっと抱き締めていた。
でもあの頃とは違う点があって、それは場所。あの時はレガイル山だったけど、今モフモフを満喫しているのはウチの執務室。私はデスクの隣でチョコンと座っているノア(省エネモードバージョン)を、ぎゅっとしていたのです。
「サーラ、お疲れ様。もう終わったの?」
「うん、どうにか終わったよ。これでしばらくは、職務から離れられるよ」
お父様があんな状態になったし、叔父や叔母はお父様そっくりな人間。そのため私が爵位を継承することになって、当主を務めているの。
カミーユ陛下達が全面的にバックアップしてくださるけど、移行作業など慣れないことだからやっぱり大変で。あの日からずっと書類達と睨めっこしていて、今日ようやく一区切りついたのでした。
「他貴族へのご挨拶とかは来週から始まる予定だから、4日くらいはのんびりできそう。だからこれから、私達がずっとやりたかったことをやろうと思うんだ」
「やりたかったこと? それって、もしかして」
「うん、それだよ。ノアと一緒に旅行する、を今から慣行します!」
お父様達の目が光っていって、いつもノアと居られなかった。会えるのはレガイル山でだけだった。
厳しい王太子妃教育を受けることになって、目をつけられてから遠出をする余裕なんて1度もなかった。
だから本や噂で知った観光地にノアと行くのが夢で、ノアも『いつか行きたいね』と言ってくれていた。私達が一番、やりたいことだった。
なので――どっちも実現できるようになったから、実は水面下で計画を練っていたのです。
「3泊4日の旅……全然気づかなかったよ。侯爵様は聡明だね」
「ぇへへ、恐縮です。あの日の感謝を込めて、サプライズを用意させていただきました」
ノアがいてくれなかったら、今頃私は別人になってヒッソリ暮らしていた。悔しい思いをして、暗い人生になっていた。
ノアは『恩返しだから』って即答してくれたけど、それでも『ありがとう』をしたかったから。こんな演出をさせていただきましたっ。
「サーラ……。すごく嬉しいよ。ありがと」
「どういたしまして。じゃあ出発しよっ!」
今は午前9時で時間はまだまだあるけれど、少しでも長く2人で旅をしたい。なので大急ぎで服を着替えて、やって来た大きな馬車に――陛下が用意してくださった馬車に、乗り込んだのでした。
「ノアと一緒にお出かけできるなんて、夢みたい。嬉しいよ」
「ボクもだよ。すごく嬉しい」
「…………ノア、ずっと一緒にいようね。これからも、よろしくお願いします」
「もちろんだよ、サーラ。これからもよろしくお願いします」
膝に載せているノアをぎゅっと抱き締めて、そうしたら可愛い顔が上を向いて、ペロッと私の顔を舐めてくれた。
だからもっと嬉しくなってもっとギュッとして、ノアももっと嬉しくなってくれて、もっとペロッとしてくれる。
私もノアも。たっくさんの幸せに包まれて。
そうして私達の旅は――楽しくて賑やかな毎日が、始まったのでした――。
婚約破棄やお父様達の透明人間化、殿下やアリス様達のアレコレ。激動の日から、一週間後。私は一週間前と同じように、ふかふかの体をぎゅっと抱き締めていた。
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「サーラ、お疲れ様。もう終わったの?」
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「やりたかったこと? それって、もしかして」
「うん、それだよ。ノアと一緒に旅行する、を今から慣行します!」
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「ぇへへ、恐縮です。あの日の感謝を込めて、サプライズを用意させていただきました」
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ノアは『恩返しだから』って即答してくれたけど、それでも『ありがとう』をしたかったから。こんな演出をさせていただきましたっ。
「サーラ……。すごく嬉しいよ。ありがと」
「どういたしまして。じゃあ出発しよっ!」
今は午前9時で時間はまだまだあるけれど、少しでも長く2人で旅をしたい。なので大急ぎで服を着替えて、やって来た大きな馬車に――陛下が用意してくださった馬車に、乗り込んだのでした。
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「…………ノア、ずっと一緒にいようね。これからも、よろしくお願いします」
「もちろんだよ、サーラ。これからもよろしくお願いします」
膝に載せているノアをぎゅっと抱き締めて、そうしたら可愛い顔が上を向いて、ペロッと私の顔を舐めてくれた。
だからもっと嬉しくなってもっとギュッとして、ノアももっと嬉しくなってくれて、もっとペロッとしてくれる。
私もノアも。たっくさんの幸せに包まれて。
そうして私達の旅は――楽しくて賑やかな毎日が、始まったのでした――。
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