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第12話 アリスの野望 俯瞰視点
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((わたしは、特別な人間よ。こんなところで終わっていい人間じゃないわ……!))
それが、幼い頃からのアリスの口癖でした。
((こんなにも綺麗で賢い、美少女。長所の宝箱のような女の子が、平民のまま終わるなんて……。あり得ない!))
容姿も能力も優れている自分が、こんな普通の服を着て普通の家で暮らし、普通の相手と結婚して死ぬなんて、あっていいことじゃない。
アリスは自己評価が異常に高く、日々分不相応と思い続けてきました。一切の努力をせず、日々不満だけを零していました。
((あ~あ。貴族令嬢か聖女が死なないかしら。そうすれば絶対わたしに目が留まって養子の誘いが来たり、聖女に覚醒するのに))
そうして7年前――11の頃からは他者の死を望むようになり、毎日毎日誰かの不幸を願い続けて生きていきました。
死ね。死ね。
私は今いる全貴族令嬢より優れていて、現聖女よりも澄んだ心を持ってるんだから。さっさと死ね。
わたしのために死ね。誰でもいいから早く死ね。
私のために席を開けろ。
そんな呪詛を熱心に吐き続けて、5年が経過した頃でした。
《貴女を聖女に任命いたします》
突如そんな声が頭の中に響き、覚醒。アリスは聖女となり、彼女の日常は一変することとなりました。
((あははっ、あはははっ。広い部屋っ、豪華な食事っ、みんながペコペコするっ! 最高だわっ!))
結界の設置や祈り、公務などがあるものの、それ以外は自由。特にこの国は周辺国よりも聖女への畏敬の念は多く、どんな我が儘も許されます。
ですので、アリスにとって最高の日々が幕を開けるのですが――。アリス・リノエルドという少女は、欲望の底なし沼です。
((もうワンランク1の環境が欲しいわね))
僅か2年で聖女の日常に物足りなさを感じるようになり、そうしてアリスは王太子オーギュスタンに注目しました。
((あの男と結婚したら、王妃になれる。聖女で王妃、いいじゃないっ。王よりも偉い、この国のトップ。いいじゃないっ!))
こんな思考によってアリスは接触を始め、自慢のボディーや顔、巧みな話術を使ってあっという間にオーギュスタンを篭絡。計画通り、『隣』を奪い取ることに成功していたのでした。
((ふふふっ、ふふふっ。聖女アリス様は、もう一つ上の段へと登るわ!!))
なにもかもが上手くいった! 最高っ!
そう思っていましたが、
《今から3か月前のことです……。俺は公務の都合で聖女アリスと半日行動を共にすることになりまして……。その際に聖女アリスから積極的なアプローチを受けていて……。アリスに心変わりをし、婚約および結婚をしたいと考えるようになりました……》
その出来事によって、一変します。
あまりの予想外に狼狽え慌てて馬車に乗り込み、着いた先で――。彼女を更なる、予想外が待っているのでした――。
それが、幼い頃からのアリスの口癖でした。
((こんなにも綺麗で賢い、美少女。長所の宝箱のような女の子が、平民のまま終わるなんて……。あり得ない!))
容姿も能力も優れている自分が、こんな普通の服を着て普通の家で暮らし、普通の相手と結婚して死ぬなんて、あっていいことじゃない。
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死ね。死ね。
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私のために席を開けろ。
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ですので、アリスにとって最高の日々が幕を開けるのですが――。アリス・リノエルドという少女は、欲望の底なし沼です。
((もうワンランク1の環境が欲しいわね))
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((あの男と結婚したら、王妃になれる。聖女で王妃、いいじゃないっ。王よりも偉い、この国のトップ。いいじゃないっ!))
こんな思考によってアリスは接触を始め、自慢のボディーや顔、巧みな話術を使ってあっという間にオーギュスタンを篭絡。計画通り、『隣』を奪い取ることに成功していたのでした。
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なにもかもが上手くいった! 最高っ!
そう思っていましたが、
《今から3か月前のことです……。俺は公務の都合で聖女アリスと半日行動を共にすることになりまして……。その際に聖女アリスから積極的なアプローチを受けていて……。アリスに心変わりをし、婚約および結婚をしたいと考えるようになりました……》
その出来事によって、一変します。
あまりの予想外に狼狽え慌てて馬車に乗り込み、着いた先で――。彼女を更なる、予想外が待っているのでした――。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
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