仲良しのもふもふに理不尽な婚約破棄を愚痴ったら、国が崩壊することになりました

柚木ゆず

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第8話 その頃、サンルーフ城内では 俯瞰視点(2)

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「結界が消滅しただと!? そんなバカな!! なにかの間違いだ!!」

 この国全体に聖女の加護がかかっていますが、加えて王城にはさらに、強固なものが施されています。574年とされている歴史の中で一度も破壊されたことがないとされるもの、それが幾重にも施されているのです。
 そんな事実によってオーギュスタンは目を剥きますが、再度否定は否定をされてしまいました。

「……残念ながら、間違いではございません……。目撃者の報告によりますと……。突如として上空に――展開されている結界に亀裂が走り、瞬く間に砕け散ってしまったようです……」
「な……っ!? どうなっている!? なぜそんなことになったんだ!? アリスが――いやアリスが消すはずはなくそもそもアリスが消したのなら結界も鏡も壊れはしない!! 消失するはずだ!! どっ、どうなってるんだ!? おっ、おいっ!! 他にはっ、何か目撃していないのか!? 不審なことはなかったのか!? あっただろう!?」
「そ、それが……。なにも、なかったようなのです……。周囲にもまったくおかしな点はなく、ただただ結界が崩壊したみたいなのですよ……」

 ノアは、移動中の目撃――大騒ぎを防ぐべく、『認識阻害』――自分とサーラの存在を感知させなくする神術を使用していました。それによって誰も結界の破壊を目視できず、兵達には自然と崩壊したと映っていたのです。

「りっ、理由もなしに聖女の結界が壊れるはずないだろう!! 調査をしろ!! 大急ぎで調べ上げろ!!」
「陛下の命によりすでに行動は始まっておりますっ!! 殿下っ! 国自体の結界は健在のようですので杞憂ではありますが! 念のため、安全地帯へと避難を――」
「訂正っ! 訂正っ!! 大至急避難をしてください!! こたびの異変の原因はっ、化け物が原因だったもようっ!! 化け物が王城前に出現いたしました!!」

 すでに国王夫妻が避難している場所へと、移動を促そうとしていた時でした。新たな兵がやって来て、上空からノアが舞い降りたことを知らせました。

「体長5メートルほどのっ、真白の翼を持つライオン! のような生き物が!! 降り立ち城内を目指して接近を始めました!! 化け物は『王太子と国王夫妻に話がある』と人語を操り、接近を始めました!!」

 神術『認識阻害』は移動中のトラブルを防ぐためのものですし、阻害したままでは誰にも認識されません。そのためノアは神術を解き、それによって全員が目視および認識をできるようになっていたのです。

「俺や父上にだと!? なぜだ!? なぜ俺達に――そっ、そんなことを言っている場合じゃない!! そんな物騒なヤツと対話などできるか!! 迎え撃てっ!! 総力をあげて討てっ、殺せっ!!」
「すでに全体の9割を使い、7つの部隊編成で討伐に向かっております! 化け物の力は未知数ですが、選りすぐりの精鋭100超が名工の武器や爆発物を持って挑みます故!! 必ずやよいご報告をあげら」

 新たな報告者は、オーギュスタンを安心させることはできませんでした。なぜならそう口を動かしている最中に――

「「「「「ぐああああああああああああああああああ!?」」」」」

 各地から集められた猛者によって構成される、選りすぐりの精鋭。そんな者達の悲鳴とあり得ないボリュームの爆発音が、城内に激しく響き渡ったからです。





 ※明日の投稿分より、再びサーラ視点となります。

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