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第3話 ノアという生物 ノア視点
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ノア。この名は助けてもらった時に、サーラがつけてくれた名前。とても大切で、今はもうそれが自分の本名だと思っているんだけど――。かつてボクには、別の名前があった。
神獣・レオ
それが以前の名前で、正体。ボクは7年前に神界で起きた『戦争』が原因で、この世界に流れ着いた別次元の生き物なんだ。
『人間にこれ以上加護を与えるべきではない!! 人間界に施す神力は自らの幸せのために使うべきであり、そもそも全ての人間界を支配下に置くべきだ!!』
『我々の100000倍以上もの数が存在するのだ!! せっかくの駒、すぐにでも手足とするべきだ!!』
『なりません!! 貴方がたは「命」を軽視している!!』
『それに彼らは問題もあるが、素晴らしい意思を持った集団です。「成長を見守り、そっと支えてゆく」。原初の教えを破ってはなりません』
自分達がより幸せに、楽になりたい神々。人の幸せを心から願う神々。2つの勢力が衝突し、大きな戦争が勃発した。
幸いにもソレは、ボクたち後者――所謂現状維持派の勝利で終わり、人間界の平穏は護られることとなった。けれどその際に、ボクは――最前線で戦っていたボクは重傷を負ってしまっていて、帰投中に意識を失い落下。そのまま人間界へと落ちてしまって、
「大変っ。子猫が怪我をしてるっ!」
省エネモードの姿をラグドールの赤ちゃんだと勘違いされ、心優しい女の子に救われる。
「ごめんね、猫ちゃん。お父様とお母様、それに妹は動物が大嫌いで、暖炉の前とかには連れていってあげられないの。でもその代わりに、私が絶対に元気にするからね。安心してね」
彼女以外の家族には歓迎されず、「早く死ねばいいのに」とまで言われた。けれど唯一の味方は、とてもとても優しかった。
「私が温かくするからね」
柔らかい布でボクを包み、優しく抱き締め続けてくれたり。
「元気が出る食べ物を買って来たよ。とっても美味しいから、よかったら食べてみてくれるかな?」
お小遣いを全部使って、傷つき弱った身体に良いものを購入してくれたり。
偶然見つけたボクを家族のように大事にしてくれて、その結果ボクは一命を取り留めた。だからサーラは命の恩人で、一番の大切な人。だから――
「わぁ、よかった。もう安心だね――」
「ならば早く、拾って来た場所に戻しなさい。約束しただろう?」
「山に居させてあげるだけ感謝しなさいよ」
「普通なら、適当な場所に捨てられるところですわよ。感謝して欲しいものですわ」
「……ごめんね、ノア……。美味しいものを持ってくるし……。いっぱい会いに来るから、許してね……」
「ううん、助けてくれてありがとうサーラ。ここは住みやすいから、大丈夫。この山でのんびり、君を待ってるよ」
――治っても神界に戻らず、人間界に居続けた。喋れる不思議な猫を演じて関係を深め、必要な時が訪れたらこの力を使い護ると決めた。
そして――
今日が、その時。
なのでボクは封じ込めていた力を、7年ぶりに解放したのだった。
神獣・レオ
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――治っても神界に戻らず、人間界に居続けた。喋れる不思議な猫を演じて関係を深め、必要な時が訪れたらこの力を使い護ると決めた。
そして――
今日が、その時。
なのでボクは封じ込めていた力を、7年ぶりに解放したのだった。
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