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第2話 ボクは本気だよ? サーラ視点
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「権力を使って嫌々従わせて、あげくこんな形で婚約者を捨ててしまう。子どもの人生が崩壊してしまうのに、抗議をしないどころか大喜びをする。どっちも許されないことだから、サーラの希望をボクが叶えるよ」
ノアは私の膝から降りて、北と東――ウチのお屋敷と王城がある方向を、順番に一瞥した。
この子はとっても賢くて、とっても優しい子。だから、居ても経っても居られなくなってくれたみたい。
「ノア、ありがとう。私の味方は貴方だけだよ」
大親友の優しさが、嬉しくないわけがない。そこで私は彼の前で両膝をついて、正面からギュッと抱き締めた。
「ノアのおかげで、心がスゥっとしたよ。……私のために、怒ってくれてありがとうね。お気持ちだけもらっておくよ――」
「サーラ、ボクは本気だよ?」
嬉し涙を浮かべて感謝のすりすりを行っていたら、真面目な声で遮られてしまった。
え……? ほんき……?
「ねえ、サーラ。ボクもずっと、オーギュスタン達や両親には怒ってたよね?」
「そ、そうだね。ずっと、怒ってくれてたね」
地位を悪用するだなんて、最低だ――。そんな婚約を喜ぶなんて最低だ――。自分達の面影がないからってサーラを嫌い、面影があるからメリッサを可愛がるなんておかしい――。
この子はいつも、そんな風に思ってくれていた。
「今まではサーラが『仕方がないことだから』って我慢していたから、ボクも我慢していた。でももっと酷いことになったし、なによりサーラが許せないと思うようになった。だから、我慢をするのはおしまい。これまでのことも含めて、怒りをぶつけると決めたんだ」
「ちょっ、ちょっと待ってノアっ。そう言ってもらえるのは嬉しいけどねっ、相手が大きすぎるのっ。ノアでも――私でも、無理なんだよっ」
敵は殿下達と両親達、つまり王族と侯爵家。仮に侯爵家だけが相手だったとしても、一蹴されてしまう。
「ううん、そんなことはないよ。ボクなら可能。本当の姿のボクなら、それを出来るんだよ」
「ほ、本当の姿……? ノア……? 何を、言っているの……?」
「あのね、サーラ。君に怖がられるのが――嫌われてしまうのが怖くて、言えなかったことがあってね。…………これが、この姿が、本当のボクなんだ」
っっ!? 言下ノアの身体が真っ白に輝き始め、眩しい光が収まると――…………。
体長5メートル以上もある、背中に純白の翼が生えた真っ白のライオン。
ノアがいた場所には、そんな生き物がいたのでした。
ノアは私の膝から降りて、北と東――ウチのお屋敷と王城がある方向を、順番に一瞥した。
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「サーラ、ボクは本気だよ?」
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え……? ほんき……?
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「ちょっ、ちょっと待ってノアっ。そう言ってもらえるのは嬉しいけどねっ、相手が大きすぎるのっ。ノアでも――私でも、無理なんだよっ」
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「あのね、サーラ。君に怖がられるのが――嫌われてしまうのが怖くて、言えなかったことがあってね。…………これが、この姿が、本当のボクなんだ」
っっ!? 言下ノアの身体が真っ白に輝き始め、眩しい光が収まると――…………。
体長5メートル以上もある、背中に純白の翼が生えた真っ白のライオン。
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