仲良しのもふもふに理不尽な婚約破棄を愚痴ったら、国が崩壊することになりました

柚木ゆず

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第1話 起きていたこと~連続する予想外~ サーラ視点(2)

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「聖女アリスに多大な害を与えたお前は近々、その罰として国外追放処分を受けることになる。だがそうなってしまったあとも、自由を維持できるよう2つの選択肢を用意してやっているんだよ。こちらが用意した新しい身分を名乗り、まったくの別人――平民となって、『国内で新たな人生を歩む』『国外で新たな人生を歩む』。これらから好きな方を選ぶといい」

 殿下が提示したのは、なんの対策にもならないもの。『最低限暮らしていけるお金をもらえる』しか褒められる点がない、思った通り理不尽で滅茶苦茶な内容だった。

「……オーギュスタン様、そちらも承服いたしかねます。私だけではなく父と母も、こちらを耳にしたら――」
「サーラ、そこは問題ない。現在父上が卿達に説明を行っていて、どうやら丁度話がまとまったらしいからな」

 ぎぃ、と。そのタイミングで背後にある扉が開き、そうしてホクホク顔の2人がやって来た。

「お父様、お母様……。どうして、そんなにも喜んでいるのですか……?」
「ソレを呑めば様々な恩恵を与える、そう仰っていただけたのでな。二つ返事で受け入れさせていただいたのだよ」

 両親――当主夫妻に非はなく責めるつもりはないと、言い広めてもらえること。むしろ娘の対処も含め文句の付け所がなく更に気に入ったとして、2人が可愛がっている妹のメリッサが第2王子殿下に嫁げるようになること。税金などの部分でこっそり便宜を図ってもらえること。
 それらの『お詫び』に目が眩んで、2人は私を売っていたのだった。

「お前は殿下との婚約を嫌がっていて、願いが叶った上に平凡とはいえ一生暮らしていける金が手に入るんだ。最高の条件じゃないか。よかったな」
「わたくし達も貴方も、みんなが幸せになれる。陛下や殿下には感謝しないといけないわね」

 陛下も王妃殿下も殿下も、両親も、滅茶苦茶。理不尽極まりないけれど、四面楚歌だから反論しても意味がない。
 なので――

「サーラ、3日の猶予をやる。婚約破棄を公表するまでに、自身の進路を決めておくように」
「……承知いたしました、オーギュスタン様」

 私は膝をついて、こうべを垂れるしかできなかった。そうして両親と私は正反対の表情でお屋敷に戻り、

「お姉さまぁ。お姉様が無様に捨てられたおかげで、わたしの人生が輝き始めましたわ。うふふふふっ。どうもありがとうございます」

 戻ったら今度は、両親そっくりな――要するに性格に難のあるメリッサが付き纏ってくるようになって、いつも以上にノアのもふもふが恋しくなった。
 だから私はああしてレガイル山を訪れ、

「みんなやりたい放題で振り回されて、最終的に私だけが迷惑をかけられて酷い目に遭う。なんなんだろうね、これ。あ~あ、全員に罰が当たらないかなぁ」

 ノアに甘えて説明を行い、こうして愚痴った。そうしたら――

「ふ~ん、そんなことがあったんだ。じゃあボクが、関係者全員に罰を与えるよ」

 ――え? あ、あれ?
 聞き終えたノアの毛が激しく逆立ち、キュートな口元がニヤリと吊り上がったのでした。

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