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第百三十四話 ゴブリン、オーガとの戦闘後

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「麟瞳ぉぉぉー!」
「龍泉、大丈夫か!」
 
 ゴブリン、オーガとの戦闘を終えて龍泉さんの元へと四人は集まった。周りに魔物は見当たらないが、声をかけてもピクリとも動かない龍泉さんを見て世那と加納さんがアタフタしている。榊さんが冷静に龍泉さんの様子を探り、気を失っているが呼吸は安定していることを確認した。もしかしたらダメかも知れないと四人とも思っていたと思う。それ程余裕のない戦いだった。よくぞ生き残ってくれた。持っている高級ポーションを私が飲ませた。

「ヨクイキノコッタ」

 本当に突然現れた。龍泉さんが言っていた青いオーガだとすぐに分かった。龍泉さんにかけた言葉だろうが、意外にも私が思っていた事と同じ言葉を呟く。オーガは龍泉さんには生きていて欲しかったようだ。

 頭よりも身体が先に反応する世那と加納さんが青いオーガに攻撃をしかけた。一瞬だった。世那の槍は左手で掴まれ、加納さんの剣は刀で弾き返された。いとも簡単にやってのけた。疲れているとはいっても日本最高峰と言われる二人の攻撃だぞ、それを余裕を持って対処された。これは想像以上に危険な相手だ。私も短剣へと手を移動させるが、勝ち筋が全く見えない。

「ニイ、サンイ、ナナイ、キュウイノオマエタチガタバニナッテキテモオレニハカテナイ。ソイツヲキタエテオオサカダンジョンニコイ。マダタリナイ、ソイツガツヨクナラナイトハナシニナラナイ」

 訳の分からないことを言って、突然消えていった。

「今のは何や?夢でも見とったんか?」
「いや、現実だ。龍泉が強いとは言っていたが、想像のはるか上だ。俺は全力で剣を振り下ろしたんだぞ。それをいとも簡単に弾き返された。全く勝てるイメージが湧かない。マジで強いぞ」
「創一、今はオーガより他の事を考えないといけない。龍泉君も病院で診てもらわないといけないし、取りあえずダンジョンを出よう」

 ダンジョンを出るためにまずはドロップアイテムの回収をしたが、何だこの量は、拾えど拾えど全く減らない。魔石だけでなく、武具が大量にドロップしている。これが龍泉さんの【豪運】スキルの効果なのか?

「ちょっと凄いで、虹色の宝箱や。ウチ初めて見たわ」
「オーイ、こっちにも虹色の宝箱があるぞ!」

 これも麟瞳さんのスキルのお陰なのか?虹色なんて長年探索者をしてきたが、今まで見たこともなかったのに、いきなり二つも現れるなんて信じられない。中身はどちらも機械に見える物だった。

 戦利品を回収して、龍泉さんを榊さんがおぶってダンジョンの外へと転移した。

「よう見たら、麟瞳ボロボロやん。美紅どうしたらええんや」
「ヤバいな、俺達と同じように考えていたよ。あのゴブリンとオーガの相手をしたんだ、普通の探索者ならヤバいよな。どうしよう、龍泉は行きたくなさそうだったよな」

 呼吸が安定しているから油断していたが、ジャケットもバトルスーツも背中側がズタボロになっていた。かなり攻撃を受けたようだ。ダンジョンを出てすぐに救急車で病院に運ばれていった。

「極度の疲労で意識を失ったようです。身体に傷がある訳でもないですし、安静にしていれば問題ないでしょう」

 《Black-Red ワルキューレ》がいつもお世話になっている病院へと運び込まれたが、見た目程ダメージはなかったようだ。世那と加納さんが椅子の上でだらしなく脱力している。

 クランハウスに戻ってからは大忙しだった。合格者を決めるように指示をして病院に行った。その報告を聞き承認したのが午前二時、最終的には面接をしてから合否が決まるが、龍泉さんが紹介した二人もギリギリで合格しているようだ。

「世那、龍泉さん紹介の二人は一応合格していた。その二人を含めて合格者は三人だ」
「分かったわ。それでええやろ。まあ面接はしっかりとせえへんとな。加納んところはどうやったんや」
「うちは合格者が二人だけだな。その内の一人はちょっと怪しいが、まあ龍泉が実力はあると言っているからおまけ合格だな。見習いからするならという条件付きだ」

 龍泉さんが言っていた三人は無事に合格のようだ。龍泉さんの希望通りになりこちらも一安心だな。

「青いオーガが言ってたよな。龍泉君を強くして大阪ダンジョンに来いって」
「確かに言うとったな。その前に二位、三位、七位、九位が束になっても敵わんとも言うとったで。二位のウチも含めて全員がレベルアップせなあかんやろ」
「ちょっと待てい!どう考えても二位は俺だろう。まあ二位の俺もそう思う。あのオーガは洒落になってないぞ。龍泉には悪いが所詮オーガと侮っていたよ。まさかあそこまで強いとはなあ。俺も強くならないとな」
「まあ誰が何位でも良いんだが、どうやって龍泉君を強くしていくかが大事だ。あの戦闘で生き残ったんだからかなりの実力はあると思うが、実際にどれ程の力があるのかは分かっているのか?因みに二位は俺かもしれないぞ」
「まあ二位が誰かは置いておいて、龍泉さんは一対一でゴブリンキングを倒すことはできるようだ。去年の七月までは荷物持ちだったらしいから、信じられない成長力だと思う。今はCランクダンジョンを探索しているようだし、もっと強い魔物を相手にしないとダメだと思うが………」
「えっ、荷物持ちをしていたって本当なの?ほぼ一年前だよね。で、一年でゴブリンキングが倒せるの?信じられないな~、俺のクランの中でゴブリンキングを一対一で倒せる奴って何人いるんだろう?一対一だとそんなにいないぞ」
「ウチんとこも一緒や、ほんま信じられへんわ。麟瞳は真顔で言うからほんまやろうけど………もっと自信を持ってもらわんとあかんわ。今回を生きのこるんや、かなり強いと思うで」
「Cランクダンジョンの探索ではダメだ。せめてBランクダンジョンの深層か、低層でもいいからAランクダンジョンじゃないとな」
「でも、龍泉さんはパーティメンバーと一緒に強くなっていきたいようなんだ。どうしたらいいんだろうか?」
「ウチがAランクダンジョンに誘うわ。美紅とウチと一緒にAランクダンジョンを攻略させよ。タップリ戦闘経験を積んでもらうわ」
「それがいいかもしれないな。まだ本格的なダンジョン攻略はたった一年なんだから、戦闘経験が全然足りていない。その案に賛成するよ。それよりオーガは龍泉君と一緒に大阪ダンジョンに来いと言っていたと思うんだが、最終的には俺達がパーティを組んでSランクダンジョンを探索しないといけないんだろうか?」
「そうなるのかもしれないな。成長した龍泉さんを中心としたパーティを組まないとSランクダンジョンの攻略は無理だと、そうオーガは思っているんだろうな」
「Aランクダンジョンは何階層まであるんだろうか?もう少しでゴールと思いたいが、まだまだ先のような気もするな~。伊織、何階層まであると思う?」
「そんなに遠くはないと思うが、百ぐらい………」
「確かに百階層が妥当な気がするが、これから後の攻略は大変だ。どれだけかかるか想像できないな。今のままでは私達のパーティでの完全攻略は厳しい。それこそ私を含めパーティメンバーの成長がないとダメだろうな」
「その上でSランクダンジョンやで、それぞれのクランだけではあかんかもな~。ウチのパーティであのオーガに勝てる気がせんわ」

 ダンジョンの先のことはあくまでも私達の想像でしかない。結局Aランクダンジョンの低層は世那と私の二人で付き添い、中層からは加納さんと榊さんも一緒に探索をしながら全員が力をつけるようにしようと決めた。

 龍泉さんは私達をあっという間に追い越して行くかもしれない。皆の前では言えないが、そんな予感もしている。あの自信のなさそうな態度の裏にある確かな実力は本物だ。探知や罠解除などの斥候職の能力では既に私を超えている。どんな探索者になっていくのだろうか?成長が楽しみである。

 話し合いが終わる頃には、もう外は明るくなりかけていた。部屋へ戻って少しでも休むとしよう。
 
 

 
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