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第百七話 パーティメンバーを求めて

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 京都のAランクダンジョンの探索者センターから求人票を出した。一カ月間の募集期間中に応募してくれた人とは随時面談をおこなうようにさせてもらった。出来るだけ早くAランクダンジョンの探索を始めたかった為だ。
 
 すぐに俺達の求める条件に合うAランク探索者が一人現れたと探索者センターから連絡があり面談をおこなった。

 ポジションは心春の希望したタンク、年齢は俺達より一回り上の三十五歳で二人の子供のいる既婚者だった。元々所属していたパーティの解散により今後の身の振り方を考えていた時に丁度求人票が出ていたので応募したとのことだった。既婚者であることや年齢の違いは気になったが、一度Aランクダンジョンでお試し探索をすることにした。

「ただ弓術士を守っていれば良いなんて、タンク職を馬鹿にしているのか」

 ダンジョンに入る前のミーティングで、戦術を聞かれたときに心春が私を常に守るようにしておいてと言ったら、ガチギレされた。

「何の戦術もない力任せの攻略はすぐに限界が来るぞ。折角それぞれが良いものを持っているんだ。協力していけばもっと楽に進めるだろう」

 取りあえず心春のガードを任せて、一度だけの探索をお願いした。今まで何度もAランクダンジョンを探索してきた経験からアドバイスをしてくれたが、パーティを組むことは出来ないと向こうから断られた。

 このアドバイスは前に麟瞳が言っていたことと同じだと後から気付いた。

 期間中にもう一人応募者が来てくれた。今度は悠希希望の斥候職で、やはり三十六歳と俺達とは年齢が離れている子持ちの既婚者だった。

「年齢はしょうがないと思います。《百花繚乱》様のような若いAランカーは珍しいですし、才能のあるAランカーの方々は大手のクランの入団テストを受けますから」

 俺達の求人票の担当をしてくれている人が教えてくれた。若いメンバーを望むなら、もっとランクの低い探索者を募集した方が良いのかもしれないとアドバイスをしてくれた。

「それだとただの道案内だよな。斥候職を馬鹿にしているのか」 

 斥候職の方ともお試し探索をおこなったが、やはり向こうから断られた。どうも俺達はそれぞれの職業のことを全然理解していないようだ。怒らせる気がなくても、いつも怒らせてしまう。

 高校入学からずっと同じメンバーだけで探索してきた。それで上手くいっていると思っていた。挫折をしたのは、Aランクダンジョンの十五階層のボス部屋だけだといっていい。俺達は他のパーティがどのように探索しているのか知らない。俺達が求めていることは、普通のパーティでは非常識のようだ。パーティを組むというのは難しいものだ。

 メンバーの募集も暗礁に乗り上げた。新しくメンバーが入らないとBランクダンジョンの探索になる。

「もう三年以上もBランクダンジョンばかり探索しているよね。しかも麟瞳が居なくなってドロップアイテムも減って儲けれないし、ああテンション下がるわ」

 心春は儲け話が大好きなだけあって、今の収入に不満を持っているようだ。でも、俺達が全員で麟瞳を追い出したんだ。今更な意見を言われても同意は出来ない。

「なあ、Bランカーを募集してみないか?もっと俺達と年齢の近い探索者と一緒にパーティを組んで、Bランクダンジョンを探索しながら育てていけば良いと思わないか?」

 前に求人票の担当者になってくれた人の意見を参考にして、三人に聞いてみた。

「そうですよね。正輝さんが言うように、Aランカーだと上から目線のおじさんしか集まりませんものね」
「和泉、あれは上から目線ではなくちゃんとしたアドバイスだったと思うぞ。Aランクダンジョンを探索するには連携が必要になるんだと思う。連携もBランクダンジョンで練習しながらBランカーと一緒に成長すれば戦力アップになると思うんだ」
「連携ってどないするんや?ワイは今までのようにしかできへんで」
「それは皆で意見を出し合いながら、探索して良い点や悪い点を確認して、少しずつ進めていくしかないだろう。そんなにすぐには無理なんじゃないか」
「そんなことしてたら、いつまでたってもBランクダンジョンの探索しか出来ないよ。収入も今より悪くなるんじゃないの」 
「目先の収入より、将来のAランクダンジョンの探索を考えた方が現実的だろ」

 不満はあるようだが、渋々納得させて京都のBランクダンジョンに求人票を出した。前の求人票とは一点だけ募集対象のランクだけを変えた。AまたはBランクの探索者というように。

 ここでも二人応募してくれた人がいて、面談をしてからお試し探索へという流れでテストさせてもらった。一人は技量が余りにも未熟なタンクだったためお断りしたが、もう一人は俺達と同じ年齢の男性アタッカーだった。火力に少し物足りなさは感じたが、そこは少し目をつぶってパーティを組むことにした。

「すみません、自信がなくなりました。正輝さんは凄いですね」

 一カ月と経たず辞めてしまった。

 パーティメンバーを探すのがこんなに難しいとは思わなかった。麟瞳はすぐに優秀な弓術士が見つかったと電話で言っていたが、中々上手くはいかない。募集範囲を広げて大阪と神戸にも求人票を出した。

 ずっと求人票を出し続け待っているが、俺達の気にいるような人は現れない。そして神戸の探索者センターから一人応募者が現れたと連絡があった。今回こそ上手くいってほしいと願っている。

「じゃあ来週の月曜日の十時から神戸ダンジョンでお試し探索をするから、前日の夜には神戸のホテルに泊まるんだぞ。頼んだぞ」

 久しぶりの神戸ダンジョンだ。下見をしておきたくて、俺だけ土曜日の朝に神戸ダンジョンの探索者センターに向かった。そして、探索者センターの中で居るはずのない奴を見つけた。

「麟瞳、なんでここにいるんだよ!」

 岡山にいる筈の麟瞳が、探索者センターに入って来た。


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